1:帰りたい
冒険者ギルドで開催される婚活イベントに向けて――自室の鏡を前に。
着慣れないワンピース姿の自分を確認した。
「さすがにボディラインが分かり過ぎるか……」
ウエストのリボンを少しだけ緩める。
だとしても……吊り上がった胸の膨らみが、男性陣の目を奪うことぐらいは安易に想像がつく。
去年と一昨年がそうだったからだ。
また、男どもは長い髪を束ねた――うなじがチラりと見える後ろ姿に惹かれるようで、先日――逆手を取って肩に触れない程に切ってやった。
「雑魚は要らんのだよ、雑魚は」
祖母から貰った翼竜の涙の朱いイヤリングを付け、机の上の『強制参加状』を手に――部屋を出た。
*
協定を結んだ三カ国で同時開催される婚活イベント。
私の住むベルズ王国の適齢期男性らは他国に出向き、交際相手を探す。
その理由はいたってシンプル――自国で見つからないなら、他国で見つければいいというもの。
また、それを国が冒険者ギルドとタッグを組んで推進しているのだから求婚者にとっては願ったり叶ったりではないだろうか。
もちろん――祝言となれば片方がどちらかの国に引越すことになるが、選択は双方の合意が最優先される。
しかしながら、これには裏がある。
祝言により人手を失った国は国力が下がってしまう。
つまり、人材を補てんしなければ過疎化する一方だ。
そこで決まったのが、『出国した親から生まれた子は――成人したらその国に移り住まないといけない』というルール。
何とも変わったルールだが、実家から一日でも早く出たかった私にとっては――十六歳で堆肥臭い国から出られてラッキーだった。
ベルズ王国にひとり移り住んで十年ちょい。
石畳の行き届いた街は気弱な私を大人にさせた……だが。
「参加状の確認をしますので――――」
そう言ってきた受付の男性に、震える参加状を無言で渡した。
ベルズ王国と私の故郷の違いは、平均年齢と都会田舎格差による隣人との距離感だ。
この国には、畑で採れたトウモロコシをお裾分けで持ってくるようなおっちゃんは居ない。
私には……男性みんなが『見えない仮面』を被っているように見えてならない。
(この人も私の身体ばかり見ている…………帰りたい)
そんなことを思ったのち、整列された椅子に着いた。




