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出戻り魔術師のセカンドライフ  作者: 無口な社畜
最終章 魔女達の想い切り裂く魔剣

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55 俺が魔術師である為に

「三つ目……か」


 一気に大量の魔力を消費してしまった為に、膝を落とした俺の目の前にあるのは魔獣らしき物を模したモニュメント。

 ミレーヌさんの手作りのそれは、言われなければペットの犬のフィギアか何かと勘違いしてしまいそうだが、何故か顔が猛禽類なので勘違いしたくても出来ない代物ではある。何だよこのキメラは。


「これで、認めてくれるんだよな?」


 魔術剣を放り投げ、結果を待つ受験生のようにミレーヌさんを見上げる。

 明らかに嫌そうな表情を見せたミレーヌさんだったが、諦めたように腰に手を当てて溜息を吐いた。


「仕方ないな。こいつが切れるって事は間違いなく魔術だからな。それにしても──」


 ミレーヌさんは魔術剣を拾って刃を確認した後、キメラの切断面に指を触れる。


「──ただ切っているだけじゃない。この効果は狙ったものか? それとも、偶然か?」

「純粋詠唱魔術なんだから偶然でしょ。そもそも、それって何か効果があるのか?」


 個人的には切れ味増加と軽量化を狙った。


「お前さぁ……どうして魔術に関してはそう雑なんだよ」

「師匠に似たんだろ」

「似てるか! 繊細なんだぞ。私の魔術は」


 何処が。

 何でも貫通する魔術と何でも破壊する魔術じゃねーか。


「それよりも、これでお前も個人魔法3つ持ち。誰が何と言おうと一流魔術師だ」

「2つ……な。1つはミレーヌさんの模倣だろ」


 はたしてあれを個人魔法と呼んでいいか怪しいものだ。威力だってオリジナルよりも大分弱い。


「別もんだろ。私の術はあんなに貧弱じゃない」

「言いやがったこいつ……。ああそうだな。じゃあ名前も変えるか」

「何故変える。お前のあれは私の魔術と同じだろうが!」

「どっちだよ」


 情緒不安定か。


「ともかく、約束だからな。その術を使う限りは剣術を使う事は認めてやる」

「魔力が切れて使えない場合は?」

「ダメに決まってんだろ。お前は魔術師だぞ!」


 こだわるな。

 でも、今ならその気持ちもわかるよ。


「はいはい」

「話を戻すが、コレで世間はお前が魔術師である事に異論を唱える奴はいなくなる」

「だろうね」


 個人魔法を1つ習得すれば一流魔術師と言われる世界だ。

 3つも習得している人間に文句を言うやつは大分おかしい。


「もうすぐ卒業だ。色々あったが引き出しも増えたろう。お前が剣術もちょっとだけ使えるらしいという予想外の展開があったものの、自衛の手段が増えたのは喜ばしい事だ」

「何気に事実を曲げてる気もするけどそうだね」


 魔術科を平均的な成績で卒業した後に、ミレーヌさんが剣術科に再入学させた理由がそれだが、本当は時間稼ぎの為に入れた事も今では気が付いている。

 そういう意味では、2年で卒業してしまったのはミレーヌさんにとっては計算外だっただろう。


「ついては、お前の卒業後の進路は決めておいた」

「いや、そっちはもう決まってるけど」

「何だと!?」


 ミレーヌさんは驚いたように振り向くと、俺に向かって剣先を突き付けた。


「あぶねーな! 魔術剣とはいえ切れるからな!?」

「知っとるわ! 今何と言った!? 進路は決めた!?」

「ああ。この間模擬戦したアズル隊長。青龍隊の。あの人にスカウトされたんだよ」

「【青龍剣】アズル・グランヘルトか! あの野郎アレクに負けたくせに何考えてるんだ!?」


 いや、だからこそのスカウトだろう。


「模擬戦だぞ。向こうは手を抜いてるに決まってるだろ」

「あのへっぽこが手を抜くわけがないだろ! お前の実力だ!!」

「……ちょっとだけ剣が使える程度の奴なのに……?」


 もはや支離滅裂だがこれはあの頃よく見た光景だった。


「とにかく駄目だ。お前は私の傍にいればいい」

「何でだよ。少しでも自分の才能を生かそうって考えるのが悪い事なのか?」


 ムッとしたように答えた俺にミレーヌさんの顔が真っ赤に染まる。


「お前は魔術師だ。魔術以外の才能があるからってそれ以外の道は認めない。お前は王国最強の魔術師の息子なんだぞ!」

「……またそれかよ」


 既に何度も聞かされた事で、いつもだったら流していた言葉だった。

 けど、この時の俺は疲れや、才能を否定された事で反抗心が強く出てしまっていた。


「俺はミレーヌさんの息子じゃない。本当の母親は故郷にいる」

「!!」


 一瞬でミレーヌさんの右手と背後に魔力の流れが発生する。

 恐ろしく速い発動速度だ。こっちが同じように魔術で対抗すれば確実に負けるだろう。

 だが、此方は剣術。()()()魔術に付き合うつもりは無い。

 踏み込み、即座にミレーヌさんから魔術剣を奪い返すと、魔力を通して振りぬく。


 だが、それでも紙一重。


 俺の前髪が数本舞い上がり、左手の服の一部が焼けこげるが、その前にミレーヌさんの魔力が霧散した。


「……その効果。やはりか」

「何の事だ?」


 切っ先を向け、答えた俺にミレーヌさんはため息を吐く。


「お前は魔術師だ」

「……わかってるよ」

「わかってるなら私のいう事を聞け」

「ソレとコレとは話が別だ」


 俺の返答にミレーヌさんは「フン」と鼻を鳴らすと、魔力をひっこめた。


「じゃあいい。こっちはそうなるようにするだけだ」

「何するつもりだ?」

「別に大したことじゃない。それよりも、折角個人魔法を覚えたんだから名前を付けてやるよ」

「いらん」

「何でだよ。毎回恒例だろ!」


 ぷりぷり怒って近づいてきたミレーヌさんに毒を抜かれて、剣を鞘に戻す。


「ミレーヌさんネーミングセンスねーんだもん」

「人の事言えるか? お前の方が酷いだろ。そうだな、その魔術の効果も踏まえて、そいつの名は──」



~~~~~~




「来たか」


 魔力の検知に目的の魔力がかかった事で目を開ける。

 辺りは既に暗い。

 どうやら少し眠っていたようで、懐かしい夢を見ていたようだ。

 とても幸せで、もう戻ってこない頃の夢を。


 立ち上がり、暗闇に目を向けると、俺の目には極限まで抑えられた魔力が見えた。

 それだけで誰が来たのか直ぐにわかる。

 予想通りであり……意外でもある。


「こいつはお前たちの計画で失う訳にはいかないから、直ぐに回収に来るとは思っていたよ。予想外なのはお前1人だって事だが、もう1人は離れた所で隠れてるのか?」


 返事はない。

 だが、確かにこちらに向けられる敵意はこの暗闇でも感じられた。

 そう、敵意。それだけで俺がこいつを殺す理由になる。


「なあ……スキン」


 月明かりが雲の間から僅かに顔を出し、目の前の剣士を照らす。

 そこにいたのは、俺の幼馴染であり、ラーグラント騎士団の1人。

 “ヒョロガリ”スキンだった。



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