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出戻り魔術師のセカンドライフ  作者: 無口な社畜
第三章 開拓村の異変

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51 私に魔術障壁は意味が無い

「氷結の理、我が手に集え」

「紅蓮の牙、敵を喰らえ」


 一度大空を旋回し、すぐさまこちらに向けて滑空してくる黒い塊に向かって二人が詠唱を開始する。宣言通り初撃はグリフォンにぶつけるつもりなのだろう。

 だが、発動までの間に近づかれても面白くないので、俺も即座に風と水と土の属性を盛り込んだ魔術を対象に向かって発動した。

 一瞬のフラッシュの後に飛び出した白い稲妻を追うように、直ぐに二人の術も完成する。


「氷槍連弾!」

「炎獄砲!」


 コリーナから氷、クランチさんから爆炎の魔術が発動し、俺の簡易魔術が直撃した直ぐのタイミングで対極した二つの魔術が魔獣を襲う。

 冷気と熱とで爆炎と水蒸気が立ち上るが、その中からまったく速度を緩めず黒き魔獣がこちらに向かって飛び出してきた。


「無傷!?」

「チィッ!!」

「二人とも! 前方だ!!」


 即座に簡易魔術を魔獣に叩きつけながら前方を指さす俺に、二人は申し合わせたように左右に散って走り出す。

 少しでも群れを分散させるつもりなのだろう。あの辺は大規模戦闘になれた二人ならでは判断だ。

 が、此方はそうもいかなかった。


「全く通じないか。予想以上の障壁強度だ」


 属性を変えた三連打さえも自身の障壁のみで凌いだ怪鳥は、一度だけ降下のそぶりを見せたものの、直ぐに上空に戻って旋回する。


「……こちらが魔術師のみ。それも自分の障壁を破る事も出来ない雑魚だと判断したな」


 魔獣に感情があるかどうかは分からないから、実際にそう判断したのかそういう行動をするよう刷り込まれているのかは分からないが、このままでは時間だけが過ぎる。

 前方では既に戦闘が始まったらしく、魔術の炸裂音が響いてきていた。


「いかに二人とはいえあの数ではそう長い時間は持たない。ならば、どうにかして奴を大地に落とす必要がある」


 魔術の効果が薄いなら、魔術で撃退する事は諦めるほかない。

 ならば、接近する必要があるのだが……。

 剣の柄を握る。しかし、目標ははるか上空だ。


 ……今、ライトニング・メテオを使うか?


 しかし、あれは威力があると言っても結局広範囲魔術である為一体に対する威力はそこまである訳ではない。

 通常の相手に対してであれば十分高威力ではあるが、魔術障壁持ちに対してどこまで効果があるか。

 ダメージは通るだろうが、落とす迄はいかないだろう。

 そうこうしている内に二人が魔獣の波に飲まれて終わる。


「……多少はダメージが通る目算で数打つつもりだったが……」


 全く通らないとなると作戦を練り直す必要がある。

 どうする? そもそもあいつの魔術障壁は本当に破る事が出来るのか? もしかしたら完全防御なのでは無いか?

 もしもそうなら──。


『魔術障壁の破壊の仕方? 知らね。そもそも、本気でやったら破れるのが普通じゃね? 理論上魔術を完全に防ぐ障壁なんて存在しないよ』


 …………。


「言ってくれる」


 俺に魔術を教えてくれた師匠は、これまで魔術障壁を苦にした事が無いと言った。

 実に不思議そうな表情をしていたから、本当に不思議だったんだろう。

 魔術障壁を施した高強度の的を壊せなかった俺の投げかけた質問が。


「恐らく、師匠の人間性の差なんだろうな」


 上空を優雅に飛んでいるあいつの()は、恐ろしく自己評価が高いのだろう。

 それが、子であるあいつは受け継いでいる。

 こちらが魔術師であるかぎり、絶対に自分は負けないと思っている。魔術が通らず、魔術師である以上は接近戦でも勝てるはずが無いと。


「傲慢だな」


 傲慢で、矮小。世間を知らなすぎだ。

 右手を上げる。

 これは奴にぶつけるのは、俺が初めて成功した純粋詠唱魔術。


「あんたの言葉。本当かどうか確かめさせてもらうぞ」


 自分が出来る事は誰でも出来ると思い込み、『魔術の資質』のハードルが異常に高い。

 ()()()()()()()王国最強の術者の力を見せてもらう。

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