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出戻り魔術師のセカンドライフ  作者: 無口な社畜
第三章 開拓村の異変

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46 開拓村の夜

「到着だ」


 町を出てから殆ど休憩も取らずに歩き続けて到着した開拓村は、お世辞にも防衛設備が整っているとは言えない質素なものだった。

 既に陽は落ちて暗くなってしまっているから全貌を確認する事は出来ないが、境界線として辛うじて体裁を保っている程度の木製の柵に、一つだけある見張り台がギリギリ防衛の為の施設と言っていいだろう。


「開拓村と言う話だったから最初から期待していなかったけれど、襲撃されたらひとたまりもないわね」

「既に住民はいないのだから問題は無いだろう。守る人間はいない」


 そう考えると、全住民を避難させたハイヤーとガルムの判断は間違っていなかったという事だ。


「住居や設備に関しては?」

「気にするな。元々そういう事態も理解した上で参加した開拓民達だ」

「なら、何も気にせず戦えるわね」

「ああ。幸い、この場所には自分の身を守れる人間しかいないからな」


 頷き、村に足を踏み入れたクランチさんの後を俺とコリーナが続く。


「10軒ほどの小屋に見張り台。中央の大きな家は代表者の家かしら?」

「ああ。開拓団の団長一家の家だな。便宜上村長と呼んでいるが、開拓が成功してここが正式に村になればそのまま村長になるから村長でいいだろう」

「ふむ」


 村の中央付近で足を止めた俺達だったが、周りを見渡して確認をしたコリーナは少しだけ考えるそぶりを見せた。


「であれば、今夜は私達はそれぞれ離れた家屋で休息する事にしましょう」

「何?」


 コリーナの意見にクランチさんは意外そうな声を上げた。


「見張りはいいのか? 夜襲の可能性も十分考えられるだろう?」

「そこはアレクがいるからね」


 コリーナの言葉にクランチさんがこちらを向く。

 

「アレクセイがいると何故見張りの必要が無いんだ?」

「あれ? 聞いてない? それとも、もしかして隠してた?」


 最初にクランチさんへ、次に俺の方を見てそう言ったコリーナに向かって首を振る。


「俺が入隊したのはつい先日だ。詳しい能力は説明する前だ」

「ああそう。でも、普通は入隊時に説明すべき事柄だと思うけどね。どうする? 私が説明する? それとも、自分の口から話す?」

「折角そこまで話したんだ。お前から話せばいい」

「そう。じゃあ遠慮なく」


 本来らであれば俺から説明すべきなのだろうが、ここで俺が説明しなかったのは理由がある。

 それは、過去を振り返ってみてもコリーナに()()()()()()()()()()()事だ。

 恐らく、ミレーヌさんからある程度聞いてはいたのだろうが、その()()()()()()()()なのか分からないからだ。

 別に知られてどうこうという事も無いが、彼女の知らない部分があった場合、何か面倒な事になる気がしたのだ。

 ならば、コリーナから説明させて、どこまで知っているのかを把握した方がいい。


「単調直入に説明すると、アレクは魔力を目視する事が出来る」

「魔力を? ……待て。どこかで聞いた事がある…………【赤き魔女】と同じ能力か」

「正解。知ってたのなら話は早いわね」


 ヴァルメリアの【赤き魔女】サリィ・デモンズ。後の名をサリィ・マスト。

 ……()()()()俺の母の名だ。

 それを知り、こちらを見ていたクランチさんの目の色が変わる。


「魔力が見える。成程な。今思えばお前は会った時から俺達の戦力を凡そ把握しているようだったが、それが理由か」

「正確にわかる訳ではありません。熟練の魔術師は魔力を隠蔽しますし」

「逆に魔力を隠蔽するような魔術師は熟練者だと把握するわけだ。理解した」


 理解が早いのは何よりである。

 しかし、どうやらコリーナは魔力の色から対象者の感情を多少読み取れる事までは知らないらしい。

 ミレーヌさんもそこまでは説明しなかったようだから、そこに乗っかっていく事にする。


「なら、襲撃時はアレクセイが察知できるという事か。となるとこいつの休息場所はあの小屋だな」


 クランチさんが指さしたのは最も森に近い小屋だった。

 まあ、その方が察知しやすいので都合がいい。


「そうね」

「察知した後はどうする? 魔術を空に放つか?」

「それでもいいけど、確実を考えるならこの小屋を炎の魔術で破壊しましょう」


 コリーナが指さしたのは村長の家だった。


「いいのか? 故意に破壊しても」

「かまわんだろう。確かにそれならば確実にそれぞれに伝わるし、篝火がわりになる」


 夜だからな。

 そういう事なら遠慮なくそうするか。


「了解しました」

「ふむ。なら一旦ここで解散してそれぞれ休息をとるぞ。明日の朝に万全の状態にしなければならんからな」


 言い残し、クランチさんはこの場を後にする。

 特にどこの小屋で休息するか言わなかったのは、俺に探知能力があるとわかったからだろう。

 二人になると、コリーナが俺の傍に寄ってくる。


「色々簡潔な人ね。所でアレク。現状はどうなってるの? 当然、既に魔力の検索はしてるのでしょう?」


 コリーナの言葉に俺は頷くと、森に目を向ける。


「森の中に一際大きな魔力がある。間違いなく強力な個体がここに居るな」

「襲撃はありそう?」

「無いだろうな。多分、こっちから何かをしない限り動かないだろう」

「ふーん。……何でわかるの?」


 探ってきたな。

 理由としてはあいつの魔力が無色であり敵意もなにも無いからなのだが、そこまで話す必要は無い。


「俺達がこの村に来たことには気が付いているはずなのに、魔力が全く動いていないからだ。多分、あいつは何らかのトリガーが無い限り行動しない」

「行動の条件として確実なのは縄張りに異物が足を踏み入れた時よね。これまでの状況を考えれば。でも、それだけじゃあないんでしょう?」


 勿論、そうだ。


「それに関しては明日だな。それよりも、あいつの近くに大量の魔獣の魔力が固まってる方が気になる」


 俺の言葉にコリーナは大きなため息を吐いた。


「貴方の予想が当たりそうね。その魔獣達の魔力も動いていないのでしょう?」

「不自然な程に……な。明日は激戦になるだろうから十分な休息を取った方がいい。森の中で戦いたくは無いだろう?」

「そうね。見張り役は貴方に任せて私達は休むとしましょう」


 疲れたようにそう言うと、コリーナは手をヒラヒラと振りながらこの場を去っていった。


「【赤き魔女】と【黒い破壊神】……そして──」


 森に向かって手を伸ばす。

 今は敵意を向けていない魔力の一つ一つをこの目に焼き付け、紐づける。


「──【白い惨劇】……か」


 本当に。

 二つ名持ちには碌な奴がいない。



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