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出戻り魔術師のセカンドライフ  作者: 無口な社畜
第二章 故郷の小さな魔術師隊

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28 歓迎会

 予め告げられていた時間に出勤すると、待っていた職員が寮の部屋まで案内してくれたので大人しくついていく。

 昨日来た時はレイズが案内してくれたから気が付かなかったが、一応、男女一名ずつ職員がいるらしい。

 部屋にたどり着くと、リコーと名乗った男性職員にお礼を言って別れる。

 そのまま部屋に入ると、1部屋しかないものの結構広いいい部屋だった。

 シャワールームは無いが、簡易的なキッチンとトイレはある。見た目はアパートと言うよりも独身用の社宅やビジネスホテルと言った佇まいだが、寮としては上質だった。まあ、独身用の社宅を見た事は無いんだけど。


 とりあえずベッドの上に荷物を置くと、支給されたローブを羽織る。

 白の下地に紺色のラインが入ったローブで、ラーグラント魔術師隊に所属している隊員はみなこれを着ている。

 しかし……。


「死ぬほど似合ってないな」


 窓ガラスに映る自分の姿を見て思わず心の声が漏れてしまう。

 単に前職のローブ姿が目に焼き付いてしまっているからだと思うが、基本色が白で明るい色と言うのが決定的に合わないのだと思う。


「前のローブは赤黒かったからな」


 派手に評判の悪かったローブだが、個人的にはそれほど嫌いじゃなかった。部隊は嫌いだったけど。

 そんな事を考えていると背後のドアからノックの音が聞こえてくる。


「どうぞ。開いてますよ」


 振り向いて許可を出すと、勢いよくドアが開いて金髪の兄ちゃんが入ってきた。


「邪魔するぜ。おっ、制服も支給されたのか。似合ってるじゃねーか」

「……ありがとう」


 似合ってるか? まあ、人の価値観はそれぞれだからな。


「そんな事よりも何か用事があったんじゃないのか?」

「ああ、そうそう。入隊初日で忙しいとは思ったけど、早速歓迎会をって話になってな。迎えに来たんだよ」


 歓迎会。そう言えば、昨日もイリスがそんな話をしていた。


「昨日イリスさんが言っていたやつか」

「そうそう、それ。それよりあいつに“さん”なんていらねーよ。ガキなんだから」


 ガキか。

 確か、去年学園を卒業したって言っていたし、順当な流れで言えば14歳か。俺の感覚では確かに子供だが、この世界では立派な成人だ。


「14歳なら成人だろう。子供なんて言ったら怒られるんじゃないか?」


 昨日会った感じでは気難しい印象を受けた。


「世間では成人でも精神がガキなんだよ。まあ、これから一緒に仕事すりゃ嫌でも知るさ。じゃ、行こうぜ」

「ああ」


 二人並んで歩きだし、寮を出ると昨日も来た訓練場にやってきた。

 場所的に歓迎会に向いてないんじゃないか? とも思ったが、現在拠点に居るという隊員が全員揃っている所を見ると本当に歓迎会らしい。

 驚いた事に赤毛の魔術師クランチさんもいた。


「隊長~連れて来たぞ」

「ご苦労。お前も好きな所で見学していいぞ」

「はいよ」


 スコット隊長の言葉にレイズはヘラヘラと笑いながら手を上げると、俺に一言「頑張れよ」と言って歩いて行く。

 頑張れって何を?


「さて。これで全員集合だな。開拓村に出張しているガルムとハイヤーはいないが仕方ない。あいつらには後で結果を伝えてやってくれ」

「りょーかい」


 ぐるりと見渡しながら言った隊長の言葉に、レイズだけが軽い調子で答える。

 副長のギルバートは隊長の背後に佇み後ろ手を組んで立っており、クランチさんは俺から見て左側、少し離れた場所で腕を組んで立っていた。

 そして、対角になるように反対側にレイズが腰を下ろしており、真正面には杖を持ったイリスがこちらを見ていた。


 ……杖?


「……歓迎会という話でしたが」

「そう。歓迎会。とはいえ、多分お前さんが想像しているであろう歓迎会は今日の仕事が終わってからだ。そっちはレイズが幹事だからいい所に予約してくれてるだろう」

「任せろ。ばっちりだぜ」


 ニヤリとしてサムズアップをするレイズと、不敵な笑みを浮かべる隊長。

 どうにも嫌な感じがするな。


「では、俺が想像していない歓迎会があると」

「そうだな。しかし、この状況なら予想は付くんじゃないか?」


 予想ね。


 周りを見渡す。

 ここは訓練場で目の前には杖を持った先輩隊員。

 その先には2つの的が見える。魔力の膜の強度を見るにCタイプ。強度訓練用。

 そして、イリスを取り囲むように配置するギャラリー……。


「学生時代にやった魔術の実技試験を思い出しますね」

「まあ、似たようなもんだな。違うのは新人と一つ前の現役隊員が同時に魔術を披露するってとこかな」


 成程、分かった。


「要するに、自分の力を過信した新人の鼻っ柱を折る為の儀式ですね」

「本来の目的はな。最も、中には例外も──」

「例外はありませんよ」


 隊長の言葉を幼い声が遮る。


「例外はありません。通例通り私が慢心した新人に現実を見せます」


 イリスの言葉に、朗らかに笑う隊長と渋面の副長。眉を顰めて首を振るクランチさんに爆笑するレイズ。

 4者4様だが、明らかにイリスの言葉には間違いがある。


 俺、ここに来てから慢心したことないんだけど。



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