表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出戻り魔術師のセカンドライフ  作者: 無口な社畜
第二章 故郷の小さな魔術師隊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/60

26 面倒な魔術師隊

 あの後入隊の手続きを済ませると、寮についての話も聞く。

 隊員であれば無料で寝泊まりできるという事で早速明日からお世話になる旨を伝えると問題ないとの事だったので、一旦宿に荷物を取りに戻る事になった。

 どのみち、明日から入寮するという話を伝えなければならないから丁度良かった。


「そう。きちんとした仕事が決まって良かったわね」

「あそこは領主様の直轄だからな。大したものだ」


 最後の宿泊日と言う事もあり、食堂の営業が終わった後に俺の部屋にやって来たのはマーモットさんとアリーシャさんの2人。ナターシャはいないがまあ、そうだろうなと言う気しかない。


「グローリィさんの紹介ですが、元々俺に声を掛ける予定だったそうです」


 ただ、俺が町にやってきた情報は魔術師隊はおろか、騎士団にさえ伝わっていなかったそうだ。

 役所の人間が領主様に対して非協力的である為、その対策として騎士団の人間を門に配置していたようだが、無駄だったという事だ。その理由も、今では何となくわかる。


「まぁ、元王都魔術師隊だったわけだしな。別に不思議な話でもないだろう」

「元赤龍隊ですけどね」


 イリス曰く、学園を卒業できれば誰でも入れる大した事の無い部隊だ。


「入隊の条件である学園の魔術科卒業が難しいって話だ。俺は結局卒業する事は出来なかった」


 コップの酒を一気に仰ぎ、大きく息を付きながらマーモットさん。


「そうだったんですか……。それよりも、学園に通っていたんですね」

「……ん。まあな」


 アリーシャさんをチラリと見た後にマーモットさんは新たな酒をコップに注ぐ。

 まあ、この場で王都に行った理由は言えないよな。


「それよりも、思っていたより魔術師隊の人数が少ない事が気になったんですよね」


 俺を入れても8人だ。元白龍隊の隊士が2人いると言っても、元々三大魔術師隊以外の部隊にいたと思われるクランチさん、この町出身の魔術師だというレイズに、学園を卒業したばかりのイリス。他の2名に関しては詳細は聞いていないが、平隊員の中で最も強いのがクランチさんという事だから、恐らくこの町出身の術者だろう。


「それは絶対数の差と経済的な理由だろうな。元々優秀な素質を持つ魔術師の卵は王都に行くやつが多いし、王都に行かないまでも私塾に通うなり家庭教師を雇うなり金がかかる。王都に行った奴は基本的に戻って来る事は無いし、戦力の拡充が急務だったこの町にとって、騎士団の強化の方が容易だったってだけだな」


 確かに、15年前の騒動の時も圧倒的な魔術師の不足から、母さんから教育を受けて多少魔術が扱えるという理由だけで俺が駆り出されたほどだ。

 最も、あの時は父さんを最初の襲撃で殺され、復讐心に駆られた母さんの強い推薦もあったが……。


「暫くは騎士団だけでもなんとかなった。だが、魔術師のいない領地軍では対処できない問題も頻発してな……。伯爵ご令嬢が王都から何人か魔術師を引っ張ってきて魔術師団を作ったって経緯だからな」

「その最初の魔術師達も今は1人しか残っていないようです」


 ギルバート副長だ。


「当たり前だ。あいつら最初から仕方なく田舎に来たって連中ばかりだったからな。地元の人間が多少入ればどんどんいなくなった。最初の魔術師連中の顔なんざ、ギルバート以外もう1人も思い出せねぇ」

「そう言えば、いつの間にかいなくなってたわね」


 酒を一気に飲み干し、ドンっとテーブルにコップを叩きつけたマーモットさんにお酌をしながら、アリーシャさんも首を傾げる。


「そんな状況でギルバートさんは良く残ってくれましたね……」

「放っておけなかったんだろう。ギルバートは王都からきた連中の中では最年少だったが、最も規律に厳しかったらしいからな。この町から入隊した連中は軒並み若かったし、組織として活動できるとは思えなかった」

「母さんは参加しなかったんですか?」


 身内贔屓かもしれないが、母さんは凄腕の魔術師だった。俺の生存が1ヵ月で判明していたのなら、生活費を稼ぐためにも入隊しそうなものだが。


「サリィなあ……。確かに魔術師隊の募集を掛けた頃はお前の捜索も落ち着いてたし、声も掛かったようなんだが、断ったようだ」

「何故です?」

「さあな。ただ、お前がいなくなってから1年ちょっとした頃から急に表に出てこなくなったな」


 表に出てこなくなった? ミーシャが体調を崩したと言っていたが、その事だろうか?


「体調を崩していたって話も聞きましたが……」

「……どうだろうな。俺にはあいつが弱る姿なんて想像できんがね」


 コップに口を付けると、少しだけ飲んで漏らすマーモットさん。

 その目は何かを考えているようだったが、直ぐに声質を変えて俺を見た。


「だが、今の隊長のスコットが来てからは明らかに変わった。ある程度腕の良い魔術師も入隊してくるようになったし、治安が良くなったのも確かだ。そういう場所に推薦されるって事は自信をもっていい」

「さっきから聞いた話を改めて考えると、尚更もっと人数がいてもいい気がするんですけど」


 元いた魔術師が帰るくらいに人数が増えていたなら、なおさら現在の7人は少ない。


「少数精鋭になったって言えば聞こえはいいが、最近入ってきた連中が優秀な奴ばっかりで元いた奴らが辞めていったらしい。まあ、そういう連中は今は別の職に就きながら自警団に入ってるから助かってはいるがな」

「そうだったんですか」


 最近入ってきた優秀な連中……。それを聞いて思いつくのは今日遭遇した3人だった。

 面倒な事にならなければいいけど。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ