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04

「さて、フジコちゃん。出動する前に、ちょっと確認しよか」

「は、はい」

「まず、鬼のランクについて言ってみてくれる?」

「鬼はその能力により三段階に分類されています。上から、A、B+、B」

「うん。それで?」

「Bは特殊な能力のない、一般的な鬼で、大半の鬼がこのクラスであるとされています。B+は通常の鬼の剛力にプラスして、なにか特殊な能力を持つものが該当します。特殊能力を持つ鬼の中でも飛びぬけた力を持つものがAにランク付けされていますが、現時点ではAランクの鬼が地上に現れることはほとんどないとされています」

「その通り」


 いつもと変わらない調子で桐生さんは「えらいね」と続けて、補足した。


「Bの中にも細かいランクはあるけど、基本的にはフジコちゃんの言った通りでオッケー。B+ランク以上の鬼の討伐の際は、鬼狩りもチーム編成をすることが基本です。そしてそのときは、こっちもB+以上が二人か、Aランク以上一人がチーム内にいることが必須条件」


 つまるところ、B+以上の鬼は、とても危険なのだ。あたしが任務で出会うことも早々ないと思いたい……のだけれど。


「今回はBランクの鬼なので、出動者は僕とフジコちゃんの二人編成で問題なし」

「はい」


 不安を吹き飛ばすように勢いよく頷いたあたしに、桐生さんが苦笑を零した。


「蒼くんが本部から戻ってからやないと、出られへんから。今からそれやとしんどうなるよ?」

「あ……はい。そう、ですよね」

「まぁ、ほな。勢い込んでるフジコちゃんのために、出動の手順も一緒に確認しとこうかな」

「は、はい。すみません……」

「じゃあ、フジコちゃんにクイズです。さて、蒼くんは、今、なにをしに本部まで行っているでしょう」


 あたしの緊張を解すような軽い口調だった。あたしも努めていつもの調子で答える。無用に力が入っていると、ろくなことにならないだろうことは想像に難くない。


「逮捕状も、ですけど、前科のある鬼ということは、ICチップが埋め込まれていますよね。その追跡情報を受け取りに、ということですか」

「うん、そう。正解。フジコちゃんはちゃんと勉強していてえらいねぇ。なので、蒼くんが戻ってきたら、鬼の居場所もわかるので、すぐに出動することになるんやけど」

「はい」 

「じゃあ、フジコちゃん。確保の手順はわかるかな」

「確保の手順……」


 一度、直接見たことがあるそれは、いろんな意味であたしの脳裏に色濃く残っている。


「まず、鬼がターゲットであることを確認し、ライセンスの提示と、令状の提示。抵抗が無ければ、その場で確保、担当者に引き渡しで任務完了です」


 鬼を確保するために必要なものは、ライセンスに令状。それから登録武器と、術具職人が作る鬼の剛力を押さえる手錠。つい先日、渡辺さんから貰ったばかりのそれがバッグの中に入っている。素直に嵌めてくれるのなら問題はないのだけれど、そうでない場合、「武力行使」ということになってしまう。つまるところ、戦闘だ。


「殺人などの重大犯罪犯の場合は、殺傷も可能ではありますが、生きて確保することが望ましいとされています」

「うん。その通り。基本知識は問題なし。まぁ、現場は場数を踏んでみんとわからへんしね。これから経験を増やしていけば、実戦も問題なしになっていくやろうし」

「はは、そうなればいいんですが」


 というか、ならなければ困るのだけれど。苦笑いとも愛想笑いとも言えないものを浮かべたあたしに、桐生さんはまた笑って、「忘れ物はしないようにね」とこれぞ引率の先生のようなことを言った。


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