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4話 罪 (終)

キリスはしばらくの間、外の景色を眺めていると、息を切らしながら先ほどの少女が歩いてくる、少女はキリスの存在に気づき、呼吸を正常に戻し、話し始める。

「疲れた…、君あれからずっといたのか?、ふぅ…一つ君に聞くよ?、君戦闘は得意かな?、もし得意なら私達を助けてほしい」

少女はそう言い終えると、頭を少し下げる、突然のことにキリスは少し困惑の表情を見せ、答える。

「助けてほしい?、戦闘は得意じゃない、力はあるかもしれない、僕も一つ聞きたい、この都市に住むには何をしたら良い?」

少女は一瞬驚いた表情を見せた後に、冷静に話し始める。

「走ってきたかいはあったかも…、住みたいならいぬ…ラルフに言えばすぐだと思うよ、ただ残念な事に今、ラルフは危機的状況にある、ここに居る私が何か事を起こさないといけないほどに、だからこそ力があると思うなら、その力を私達に貸してはくれないか?」

少女はそう言い終えると、先ほどよりも深く頭を下げる、キリスは決意を決めていたように答える。

「力になれるなら、僕は貴方達を喜んで助けるよ、だから僕は何をしたら良い?」

少女は頭を上げ、生き生きとした表情を見せ、話す。

「いい返事だ、わんこ!、よし!これで飛ぶ人間は決まった」

そう言い終えると少女は早歩きで歩き始める、キリスは飛ぶと言う単語に不安を感じながら、その後を追い、しばらく廊下を歩くと複数個の装置が置かれ、複数機のロボットが何かを準備しており、少女がそれらに近づくと、不自然に装置を着けた1台のロボットが音声を発する。

「マスター、準備が整いました、いつでも飛び降りれます、指示をください」

少女は歩きながら、そのロボットに向けて話す。

「うるさい、飛んで兵器になりたいのか?、そんなものを着けてないで、そこにいるわんこに着けなさい」

少女はそう言い終えるとコンピューターを使い始める、不自然に装置を着けた機械は少ししょんぼりしたようにキリスに近づき、自身に着けてある、装置をキリスに着せていく、少しして少女はキリスに近づき話す。

「さてと…これから行う事を説明するよ、今から君は浮遊しているこの都市から飛び降り、いぬが居る場所、イオス旧交流公園に着地してもらう、ただ正常に機能する飛行船やパラシュート等が無いんだ、だから君の着けているその装置で落下を軽減させる」

キリスは少し不安な表情を見せ「安全?」と何か察しているように聞くと、少女は首を横に振り、続けて話す。

「残念な事に私は天才じゃない、完成させる事は出来なかった、本来の2割ほどの衝撃は覚悟してほしい、君がやめたいのならそれも良い」

キリスは悩むことなく「やめたりしない、僕が助けるって決めた」そう言うと少女は少し笑みを見せ、少し声を上げ話す。

「よく言った!、例え君が肉塊になったとしても、必ず無駄にはしない、君の準備が整ったら、あそこの穴から飛び込むんだ」

キリスは少女が指さした方に進み、大きく穴が空いた場所の目の前に立ち、下を眺め動きを止める、少し眺めたあとに、キリスは黒い獣を思い出し、その姿になれないかと目を深くつむり力んでいると、少女が少し近づき「大丈夫かい?」その様に言うと、キリスは目を開き「大丈夫」と伝え、それと同時に黒い泥のようなものの中に落ちた事を思い出し、その中で感じた強い不快感と聞くに堪えない言葉を強く思い返していると、キリスの内から黒い泥のようなものが、キリスを包み、狼のような姿に変わる、少女が驚きで口を開き目を丸くしていると、キリスは「装置、問題ない?」と質問すると、少女は手に持っている端末を確認し「問題はない…、ただその姿は?」と質問を返すが、キリスは「わからない」とだけ呟くように口にし、穴に飛び降りる、飛び降りるとキリスの下に半透明なオーラのようなものが現れる、ただ減速することなく、速度は速まっていき、凄まじい勢いで芝生をえぐる、キリスは瞬時に辺りを見渡し、ラルフが斬りかかられているのを確認し、凄まじい脚力で瞬時に近づき、斬りかかっていた人物と共に木々が生い茂る場所に連れていく、斬りかかっていた人物は激しく木に叩きつけられるが、動じることはなく聞き覚えのある声で「やはりいたか、獣!」そう声を上げキリスを強く見つめる、キリスは連れてきた人物がエキであることに気づき、少し息を乱す、エキは強い視線をキリスに向けながら話す。

「今すぐに処理をしても良いが、お前は後だ、1秒たりとも、時間を稼げると思うな」

エキはその様に言い終えると「青龍…顕現」そう呟くと、以前現れた黒紫の龍が辺りの木々をなぎ倒し、黒紫の龍はエキの体の中に入り込み、エキの体が膨れ大きくなり、それは次第に人と龍の形をなしたものとなる、エキは刀を前に突き立て、キリスが攻撃に備えようとした瞬間、キリスの意識はエキが刀を突き立てた瞬間で終わる。


暗く明るい矛盾に満ちた空間、キリスは自身が死んだ事に瞬時に気づき、やるせなさからか深い溜息を漏らし、歯を食いしばる、それを嘲笑うように少し離れた場所からルシフが素敵な笑みを見せ見つめていた、地面が泥のようなものに置き換わり、以前のようにキリスの足を掴む、ルシフはゆっくりとキリスに近づく、キリスはそれらを気にすることなく、下を向き何か悩んだように少し唸る、ルシフが手の届く距離に近づくと、キリスは決心した顔でルシフに話す。

「ルシフ…、力を貸して…ほしい、僕達が逃げる間あいつの足止め…」

キリスが言い終える前にルシフが笑い声を上げ、ルシフは軽蔑したように話す。

「お前は…、もう忘れたのか?、その力を私に渡すことを、拒んだ、お前の言葉はそんなにも揺るぐのか?」

キリスは少し目を細め、すぐに目を見開き話す。

「忘れてない、だけど僕は決意した、こんなすぐに終わらせたくない、だから終わらせないために、あんたの助けが必要」

ルシフは素敵な笑み見せ、冷たい声で言葉を返す。

「だからどうした、この話は私にとって得は無いのだ、今すぐにお前の体を乗っ取れいいだけだ」

キリスは臆することなく、話す。

「だったら今すぐにすれば良い、だけどあんたは始め、交渉にした、それはあんたにとって、そっちのほうが良いから」

ルシフは「そうだ」そう相槌を返しす、キリスは決意した顔で続けて話す。

「僕は僕以外の全てをあんたに渡す、だから僕達を助けてほしい」

ルシフは少し悩むしぐさを見せた後、口角を上げ左手を前に出し、握手を求め、話す。

「助けか…、利害の一致だ、リスクはあるが、囮になってやろう」

キリスは握手に応じようと手を前に出し、何か思い出したように拳を丸め、話す。

「ルシフ、今ここで誓え、僕や神じゃない、正しき聖人に」

ルシフはキリスを睨みつけ、舌打ちをし、祈るように誓いを立てる。

「私はここに誓う、そして正しき聖人キリス アヌンソルテに誓う、卑しき獣の願いを叶えると…」

キリスはその少し苛立つ誓いを聞き終えると、握手に応じる、ルシフが悪意からか手を強く握ると、キリスの意識は薄れ、消えていく。


意識がはっきりすると、キリスは泥のようなものの中におり、当然のように強い不快感と聞くに堪えない言葉がキリスを包む、ただそれ以上にキリスは清々しい気分に満たされていた、それはまるで本来の自分を取り戻したように、少しして泥のようなものは異物を吐き出すようにキリスを外に吐き出す、キリスは自身の身体が白い毛皮の巨大な狼になっている事に気づき、それが自身の本当の姿だと理解する、キリスが匂いを嗅ぎラルフの居場所を探る、キリスを吐き出した泥のようなものはキリスに巨大な影を作り、遠くに見えるビルを越えるほど巨大な黒い獣の形をしていた、キリスはそれを気にすることなく、ラルフの匂いがした方へと駆け始める、風のように木々の間を駆け抜け、芝生が広がる場所に出ると、ラルフとソルトが大勢の警備隊と数人のデルタロスと思われる人達に囲まれ、休む隙を与えられる事なく攻撃を受けていた、キリスは力いっぱいにその集まりに駆け始め、大きく飛び上がりキリス達がいる中心に荒々しく着地をする、突然現れた白い獣に全ての人が驚きの表情を浮かべ、ラルフが何かに気づいたのか、疑問の表情と声色で「キリス?!」と声をかけ、キリスは少し身を屈め頷くと、ラルフはソルトに「ソルト!!」と強く呼びかけ、キリスの背中に飛び乗り、警備隊とデルタロスは逃がすまいと攻撃を更に激しくし、キリスは力いっぱいに地面を蹴り素早く駆け始める、尻尾をソルトがギリギリで掴み、ラルフがソルトに手を伸ばし、キリスの背中に持ち上げる、一瞬にして公園を離れ、キリスは車が多く走る大通りを駆け抜ける、ラルフが話しづらそうに「あそこの一番高いビルの上を目指してくれ」とキリスに伝え、キリスはそれに答えるように速度を上げ、ビルとビルとの間を飛び上がっていき、飛行船が止まるビルの屋上に辿り着く、その場所にはラルフ達の帰りを待つスーリアとトロキパそしてエプロンを着けた男性おり、突然現れた白い狼のキリスに強い警戒心を向ける、キリスはそれを気にすることなく目の前まで歩き、少しの間緊張した雰囲気が辺りを包み、それを晴らすようにラルフが背中から飛び降り、話す。

「お待たせ、ソルトとキリスが助けに来てくれなかったら、俺死んでた」

それに続くようにソルトはキリスの背中の上に立ち、少し作った表情で話す。

「あぁ本当に気をつけろぉ、リーダー?、ただオレもこのデカい犬が来なかったら死んでたぜぇ、ありがとよ」

ソルトがそう言い終えると、キリスは体を大きく振り背中に立つソルトを振り落とす、それを気にすることなくトロキパがラルフに話す。

「目立った怪我は無さそうだな、リーアスの欠片は譲ってもらえたのか?、そうじゃねえとせっかくお前が命を張ったのに、割に合わねえような」

キリスは笑みを見せ、懐から何かを包んだ布を取り出し、話す。

「リーアスの二又槍、その刀身の片方…、いやびっくりした、まさかスーとキリスがあの爺さんに貸しを作ってるなんてな」

そう言い終えると、ビルが大きく揺れ、それと同時に獣に似た声が大きく響く、トロキパは冷静に遠くに見える巨大な黒い獣を見て「特異A相当か?」と呟き、その意味を知ってかエプロンを着けた男性は「やばいじゃないですか!!」と声を上げ、急いで飛行船の中に入っていく、それを見てトロキパも飛行船の中に入っていく、スーリアは心配そうにキリスを見つめ話す。

「どう見ても飛行船の中に入らない、ん…どうしたら入るかな?、ラルフ?、どうしたら入ると思う?」

そう聞くとラルフは、真剣な表情を見せ、答える。

「上に乗せるとかになるかな…、ただ乗るかどうかはキリスが決める事だ、キリス…、俺達はこれからすぐにこの都市を旅立つ、俺は一緒に来て欲しい、だけど俺達は正しくないのかもしれない…、それに俺達と居れば命の保証は出来ない、だから乗るかどうかはキリスが決める事だ」

キリスはラルフとスーリアそして飛行船を見たあとに激しく暴れるルシフを見る、キリスの体から煙が生み出され、一瞬で人の姿になる、ただその姿は以前の見た目、声ではなく、正しき聖人のものになっていた、その姿を見てラルフは驚きで目を丸くし、スーリアは小さく「キリス…きゅん??!」と言葉を漏らす、キリスは2人の反応を気にすることなく、答える。

「前の僕ならきっとこの場所に残っていた、だけど今は見たい景色がある、ラルフ達に付いていく…、それ以外の選択があっても、僕はきっとラルフ達に付いていく選択をする、だから…よろしく」

ラルフはその言葉を聞き、嬉しさで顔を崩し「あぁ…よろしくな!!」そう嬉しそうに答える、キリスが一歩前に進むと凄まじい地響きと共にビルが大きく揺れる、少し慌てたように飛行船の中からトロキパが「そろそろヤバくなってきたぞ」と3人を急かすように声を上げる、キリスとラルフは混乱しているスーリアを連れ、飛行船の中に入っていく、飛行船は少し不安になるエンジン音を鳴らしながら、飛行船は浮遊都市に飛び立っていく。


キリスがラルフとソルトを救った、緑豊かな公園は見る影もなく、木々は荒々しく倒され、芝生は酷く荒らされ、数十人の死体が転がり、多くの人を弔う石碑は悪魔にも思える巨大な黒い獣によって砕かれていた、その中エキは飛び去っていく飛行船を見つけ、げっそりとする巨大な黒い獣に向かって話す。

「どうやらあいつらはお前を見捨てたようだ、命を賭したとしても、お前の価値は所詮、獣か…」

巨大な黒い獣は体を縮めていき、人の体に戻る、ルシフの人としての姿を見て、エキは目を細める、ルシフは自身の体を確認しながら話し始める。

「どうやらあれは仲間を救った…、私としては気に入らないが」

エキは強い違和感を感じ「お前は?…、獣か?」そう言葉を漏らす、ルシフはエキの言葉を無視し、続けて話す。

「まさか肉体を得ても、私本来の姿に戻らないとはな、少し報酬としては見合っていないな」

ルシフは笑みを浮かべ、何かを誰かを持つようにエキを眺めていると、少し息を切らしながら片目を隠した女性が現れ、エキの隣に立ち、少し困惑した表情を浮かべる、空気が重くなっていき、不自然に風が揺らめく、エキが体を動かそうとすると、エキとルシフの間が大きくゆがみ、空間にノイズが走る、次第に体格の良い男性の姿があわらになり、その男性を見たエキはすぐに警戒心を高め、刀を体格の良い男性に向け構える、体格の良い男性はそれを気にすることなくルシフに向かって話し始める。

「同士よ、よく戻ってきた、ただ少し手こずったようだな、ただ君が戻ったのなら我々も事を起こせる」

エキは体格の良い男性を睨みつけ、少し低い声で話す。

「ゼルス…ゴールド、間違いないか?、いや…忘れるものか、エヌジスタ筆頭のその顔を…、イオスで行った愚行、そのつけを今ここで払え」

ゼルスは少し嘲笑うようにエキを見て話す。

「竜は空に旅立った、人はその姿を見て、流星を描いた、君は星龍、ただその内にある星の龍は、ただ一人の人間の愚行の現れ…、その力を使うのなら、君は勝つことは出来ない」

そう言い終えるとゼルスは構え、笑みを浮かべる。

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