2
エルゼ帝国には、計10人の皇族がいる。
父親である皇帝、母親である皇后
兄の第1〜第3皇子、第1皇女エヴァ、妹の第2皇女ノヴァ、弟の第4〜第6皇子。
あとは傍系がちょろちょろと、遠い親戚が何人か。
つまり、兄3人・妹1人・弟3人。雑魚が20匹。ボス2人。
傍系は継承権争いの余波で何人か死ぬだろう。弟達はすぐ殺せる。やはり邪魔なのは、兄3人と妹のノヴァだ。特に腹違いの兄である、第1皇子は危険だろう。彼は今年で23になる。いくら私でも、成人男性相手に肉弾戦は不利だ。
しかもアレは頭が良い。私の一方的な王位継承権戦争が終わるまで、どこかに閉じ込めておくべきかもしれない。予定は未定ってな。
ちなみに、弟達は本当に秒殺だぞ。一番下の第6皇子は4歳だ。適当に窓から投げれば死ぬだろう。
あと……あぁ、第2皇女ノヴァ。肉弾戦では勝てるけど、頭脳戦だと勝てるか怪しい。普通に殺しても良いが、ノヴァとエヴァは何かと比較されることが多かった。完全に負かしてから殺す方が、きっと気分が良いだろう。よし、ノヴァは最後の方まで取っておく。姉に感謝するべきだ。
知ってるか?「金の麗らかなノヴァ皇女、銀の壮麗なエヴァ皇女」って話。
麗らかって表現良いよな。優しそうで。その一方でなんだ壮麗って。デカいって言いたいのか?何がだ?スレンダービューティーハニーの私のどこがデカいと言うんだ?
言っておくが、ノヴァと身長は変わらない。ノヴァがパンプスを履くのに対して、私が20cmのヒールを履いているからデカく見えるだけだ。
……なにか文句があるのか?20cmのヒールは特注だから、あげないぞ。
天気の良い昼下がり、薔薇の庭園にあるガゼボで、なんて事ないことを考える。
美味しい紅茶と、一流シェフの高級デザート。今はこれだけで満足だが、私は先を見通せる女だ。生活する上で、いつか権力が邪魔になるだろう。苦手なものを最初に食べるタイプだから、面倒ごとはさっさと消した方が良い。
「ごきげんよう、第1皇女サマ?笑」
心穏やかタイムが終了した。視界に入れるのも馬鹿馬鹿しいクソ第3皇子のブスだ。
20cmヒールを履いた私に、身長で負けているのが悔しいのだろう。事あるごとに絡んでくる。コイツに見下ろされるたびに1cmずつヒールを上げていたら、最終的に20cmになった話はまた今度しよう。
よし決めた、第3ブス皇子は最初に殺す。後腐れがなくて非常にスッキリすること間違いなし。
「ごきげんよう、第3皇子様」
「良い茶葉を持ってきたんだ。淹れろよ」
「仰せの通りに、第3皇子様」
このままだと、第3デブス皇子をなぜ殺したいほど憎んでいるのか、分かりづらい事だろう。第3皇子☆絶許ぶっ殺しポイント!を今から解説する。
第一に、皇女への訪問は1ヶ月の訪問申請を経ないといけない。皇帝であってもだ。
そもそも第3皇子は出禁にしているから、承認以前に申請が出来ない。
なのに、デブスは私の居場所を知っている。つまり私の身の回りに第3皇子のスパイがいる。スパイを送るのは皇族を殺す意思があるという暗黙の合図だ。はい戦争。
前世のノリで言ったらこうだ。
「1人カラオケしてたら、不審者が部屋に入ってきた。何度電話しても店員は対応してくれない。なんなら、カラオケ店員が女性1人で使ってる部屋を、不審者に勝手に教えていた。案の定、不審者と密室で2人きりになって…云々」この辺でやめておこう。私の殺意を理解してくれればそれで良い。
第二に、……いや、もう説明はいいか。そろそろ第3皇子、死ぬし。