第四話 異次元の援軍
達也たち三人は時空の鳥居に入り、一歩またぐと別世界へたどり着いた。
「ここが日本か」
達也は周囲の建物を見ながらそのように言った。
郁弥は見慣れない日本の姿に少し悲しそうな表情になっていた。
「郁弥、あれは何?」
竜龍は時空の鳥居から出た時からずっと気になっていた建物を指さした。
「あれは国会議事堂だと思う。私もこれほどの変わりように驚いているのだ」
郁弥は竜龍が指さした国会議事堂が”今”と変わらず、形が同じだったのですぐにわかった。だが周囲の町並みや建物、道がかなり変わっていた。
三人は国会議事堂が正面に見える道路で、まるで迷子の子供のように周りを見た。だがある程度周りが理解できるようになると、一緒に国会議事堂へ歩き出した。
「じゃああとはお願いね。郁弥」
達也が一番前を歩いていたが、郁弥と入れ替わって歩いていった。
そして国会議事堂の門にいる警備員の人が郁弥たちを止めた。
「すみませんが、どこから来たのですか?」
警備員は中に入ろうとしていたので、郁弥たちを止めた。
「すまないな。総理大臣と合わせてくれ」
郁弥は無茶苦茶なことを言った。もちろん警備員も郁弥の頼みを断ろうとしたが、郁弥の目を見ていると徐々に意識がなくなり、門を開けると同時に他の警備員にも連絡を通した。
郁弥たちは警備員を横目に国会議事堂の敷地内に入った。
「今思ったんだけど、ここにいるの?」
達也がここにいる理由は総理大臣と国交を結ぶために来ているからだ。しかしそのためには総理大臣に会わないといけない。なのに国会議事堂に向かうのはおかしかった。
なぜなら今は臨時閣議を行い、国の方針を決めているのに国会議事堂にいるとは思わなかったからである。
「確かにいないだろうけど、遅かれ早かれここになるよ」
郁弥は直で首相官邸に向かってもろくに話し合いができず、数日後に話を伸ばされると考えた。だから無理矢理にでも交渉の場に持っていこうとしたのである。もっとも”今”の日本がどのように外交をしているのか全くわからずにいるので、やけになっているところがあった。
「その方法は昔のお前がやっていた方法か?」
竜龍は郁弥に聞くと、郁弥は竜龍に目を向けると背筋が凍るような殺意を向けた。
「じゃあ交渉は私がやるから少し休憩しな」
達也がそう言うと、なんと国会議事堂の中央玄関のドアが開き、そこから総理大臣が現れた。
誰なのかと総理大臣は聞こうと思ったが、総理大臣と国務大臣は無意識に交渉の場に持ち込まれた。意識が戻ったときには基本的な情報が頭の中に入っていた。しかもいつの間にか国会議事堂の議長応接室で国務大臣とカルデラ王国の国王たる達也と共に座っていた。
「何が起きてるかわからないでしょうから今からご説明します」
達也は全てを話した。最初にカルデラ王国とは異世界にある国であり、魔法が使える他に圧倒的な軍事力と技術力があることを伝えた。しかもその証拠に魔法を使ってこの場にいた人たち全員に紙で全てを見せた。
総理大臣たちがその紙に書かれていたことに目を通していると、郁弥が達也の耳に耳打ちをしてきた。
「国務大臣が一人足りない」
郁弥は部分的に”今”の日本の知識を持っていた。その知識の中で国務大臣は十六人、しかし今この場にいる国務大臣は十五人だった。
「誰かが二つ以上掛け持ちをしている可能性は?」
達也の質問に対して郁弥は横に首を振った。郁弥は十六人であることはわかっているが、全員の名前と人数はわかっていなかった。
二人で少し考えていると、竜龍は目にも止まらぬ速さで二人の頭を軽く叩いた。達也は総理大臣たちの方を向いた。
「聞きたいことがあるのですがいいですね?」
総理大臣はなぜ日本に来た理由、言語が同じなのか、そしてどのようにして警備員を突破して国務大臣と総理大臣の十六人をここまで移動させたのか、主にこの三つが聞かれた。
達也はまず言語が同じ理由について話した。驚くことにカルデラ王国がある世界の共通言語は文字は違うが、言語は日本語であった。だから文字は読めないが会話する程度であれば話すことができた。
二つ目に警備員と総理大臣たちを動かすことができたのは、達也の護衛としてきた郁弥が精神魔法で意識を朦朧とさせて行動を強制的に動かすことができる。しかし意識を朦朧とさせるだけだと、信念から働いている人では効果が殆ど無いので、総理大臣たちには意識も含めて行動を強制させる精神魔法で無理やり動かしたのである。
「そして私達が日本に来たのは同盟を結ぶためです」
達也は単刀直入に同盟を結びに来たと言った。
総理大臣たちは達也は知らないのではと思い、今の日本の状況を伝えた。達也は想定していた状況の中でかなり楽な状況であることに息を吐いた。
「その程度であれば援軍として迎撃することができますよ」
総理大臣たちは流石にうますぎるので対価はなにかを聞いた。
「対価は技術と交渉術だけです」
総理大臣はどうするかを考えていると、郁弥は総理大臣を睨みつけた。すると総理大臣は意識が朦朧としてきた。だから総理大臣の本音が出てしまった。
「虫が良すぎると思うのですが、まず日本を救ってはもらいませんか」
総理大臣は頭を下げて対価について話し合って決めるから、まず日本を助けてほしいと言ってきたのである。カルデラ王国が日本を助けても話し合った結果、同盟はできないとなる可能性が出来てしまった。
達也は総理大臣が頭を下げたのを見ると、郁弥の顔を見てため息をついた。すると達也は立ち上がって総理大臣のお願いを聞き入れた。
「竜龍はすぐに国防軍に出撃命令を出せ」
達也は竜龍にそう命令を出すと、すぐに通信魔法でカルデラ王国で待機している国防軍に連絡をした。達也はすぐにその他の情報も聞いた。今の戦況と自衛隊の配備状況などを聞いて、最新状況を聞いた。
これはフィクションです。現実とは全く関係ありません