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東京異世界ロープウェイ  作者: 福長 稔
東京異世界ロープウェイ1
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東京異世界ロープウェイ 6

真夏のある日の事である。日雇いの仕事を終え自宅である公園へ戻る途中、いつものごとく、本日の夕食の買い出しの為、値引き商品を求めてスーパーへ行く。しかし店には、いつもたくさん置いてある弁当などの惣菜やパンなど全て売切れており、缶詰などの非常食の棚までも空っぽの状態だった。私は、今日は何かおかしいと思いつつ、店を出て商店街を回る。しかし店はいつもなら会社帰りの客で賑わい開いているのだが、ほとんどの店が閉店している。普段なら閉店してもシャッターなど閉めない店が今日は、しっかりとシャッターが閉まっている。近所に泥棒でも入ったのかとそう思う。しばらく歩くと、中華料理屋のシャッターを閉める音がする。私はすぐにその人に近寄り、話をする。

「あのー今日近くで何かあったんですか?、早じまいするとこ多いですよね」

すると中華料理屋の店主らしき人が、加えタバコで店のシャッターを閉めるのを止め、

「あんた知らないの、これから大きな台風が上陸するよ、間違いないんだから、あんたもは早く家に帰って台風準備したほうが良いよ」

 私はその時、そんな大きい台風なら今いる公園から出て何処か頑丈な建物に避難しないと命が危ないと思う。もちろん徳さんも一緒に行かなければと、そんな思いで足早に公園へと戻る。公園へ戻ると早速、台風が接近し避難が必要な事を徳さんに伝える。すると徳さんは、

「俺は、いつも行っている高速道路の下に避難するよ、あそこなら少々風が強くても大丈夫だから」

「そんなこと言ったって、風だけじゃなく雨も強いんだよ、一緒に徳さん避難所へ行こうよ」すると徳さんは私に自分の服の胸のあたりをひっぱりながら

「避難所、こんな臭いホームレス受け入れてくれないよ、危なくても俺は避難所へは行かない」そう言って徳さんは独り寝床の段ボールを抱え、いつも日曜日に過ごすガード下へと行ってしまった。それから私は、徳さんが心配ではあったが、独りだけ近くの避難所へと向かう。すると避難所には沢山の近辺の人々が集まっていた。避難所になっている学校の体育館で、まず身分確認の為住所を書類に書くように言われる。もしその時私が住所不定で公園で暮らしていると担当者に言ってしまったら入所を断られると思い。以前住んでおり自動車免許書にも書いてある住所を書くと職員はすんなり

「大変ですね」とそう言いながら、自治体からの支援物資であるおにぎり二個とペットボトルのお茶をもらい避難スペースへと案内してくれた。避難所は普段家で、暮らしている人にとっては床も固く苦痛だろが、公園で暮らしている私にとっては、雨露も凌ぎ支援物資まで貰え、まさに天国のようなところだ。

 体育館に避難している人達は、めいめい家族があり人塊になり話をしている。きっとみんな自宅では不安なのでここに来たのだろう。私はひとり広い学校の体育館の一角に敷いてある柔道用の畳、一畳程に横になり台風が過ぎるのを待っていた。

 夜も深くなり、いよいよ台風の雨風が強くなって来た。叩き付ける雨風が体育館の屋根に当る、窓には台風の強風でガタガタと今にもガラスが割れるような猛烈な音が館内に響き渡る。避難している誰もがその音でなかなか寝付けない様子だ。私も徳さんのことが心配で眠れない。徳さん大丈夫かな、こんなことなら何としてでも説得しここへ連れてくればよかった。そんな後悔がつのる。


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