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副官イリアス

「魔王様、勇者の始末この私めにお任せください」


ある日の魔王城。いきなりそのような提案が飛んだ。


彼女は副官イリアス。魔王軍で魔王に次ぐ、二番目の権力者だ。


スマートな鎧を身に付けており、その顔には眼鏡がかけられている。


「あぁ。よいのだが、作戦はあるのか?」


「はい。必ずや勇者を倒してみせましょう」


「そうか、では任せるとしよう」

魔王はイリアスに勇者討伐の全権を与えることにした。


イリアスがやって来たのは人間の国だ。


勇者は警備も兼ねて人間の国王の城に住んでいる。


イリアスがやって来たのは、その城のメイドの面接が今日だからだ。

今日のイリアスはスーツ姿だ。


「さて、行くか」


イリアスは城の門の前に立つ。そして門番に話しかける。


「私はイリアスだ。面接に来た」

すると、門番は困惑した表情を見せた。

しかし、そこは流石兵士といったところか。すぐに冷静さを取り戻して答えた。

「少々お待ちくださいませ」

そんなやり取りをしている間に一人の兵士がやって来たようだ。


「私に着いてきてください」


兵士が案内したのは、城の庭にある小さな小屋だった。


「ここでお待ちください」


イリアスは言われた通りに待つことにした。


しばらくすると、扉が開き一人の男が入って来た。その男は若く見えるが、その眼光は鋭く只者ではないことが窺える。

「面接に来たとのことですが?」


男は椅子に座って言った。その声は低く落ち着いているためか安心感を覚えるものだった。


「はい」


イリアスもそれに答えるように落ち着いた声で話す。


「では質問をします。今までに家事の経験は?」


「あります」


イリアスは即答した。


「そうですか、では次に料理は?」


「はい」


イリアスは再び答える。これもまた自信があったからだ。


それからも質問が続いた。


「なるほど、分かりました。採用です」


男は立ち上がりながら言った。


イリアスはホッと胸を撫で下ろすと、すぐに立ち上がる。


そして男に一礼してから部屋を出た。


そして、今日からメイドとしての仕事が始まる。イリアスはまず最初に城の中を案内されることになった。


「こちらが食堂になります」


男が扉を開けると、そこはとても広く豪華な部屋だった。


テーブルの上には様々な料理が並んでいる。どれも美味しそうだ。


「では、ここでの仕事を教えていきますね」


男はイリアスを椅子に座らせると、説明を始めた。


その内容はとても分かりやすく、すぐに覚えることができた。


それからもメイドとしての仕事を教わる日々が続いたが特に問題なくこなすことができたのだった。


そんなある日のこと、魔王から命令が届いたのだ。

イリアスはその命令に従い、勇者の暗殺に向かうことになった。


イリアスはこの数日間で、勇者とある程度親密になっている。だからこそ、この任務は都合が良かったのだ。


「イリアスさん。お久しぶりです」

勇者は笑顔で声をかけてくる。


「はい、お久しぶりですね勇者様」

イリアスは笑顔を返す。


勇者はイリアスを信用しきっているようだ。

「あの……実はお話がありまして」


「はい?なんでしょうか?」


イリアスが首を傾げると、勇者はゆっくりと口を開く。


そして驚くべきことを言ったのだ。


「僕と一緒に世界を救いませんか?」


「……ふふっ。私は一介のメイドに過ぎませんよ」


イリアスは笑いを堪えながら答えた。


「いえ、貴女なら」


勇者は真剣な眼差しを向けながら言う。


「……申し訳ございません。私にはその資格がないと思います」


「そんなことはありません!一緒に行きましょう!」


勇者はイリアスの手を取ろうとする。


しかし、その手はイリアスによって弾かれてしまった。


「……私はただのメイドに過ぎません。だから、貴方の役に立てるはずがないんですよ」


「では少し二人で話しませんか?」


勇者の提案にイリアスは頷く。


「分かりました」


二人は城の庭にあるベンチに座った。


「僕は貴女を信頼しています」


勇者は真剣な眼差しで言う。


「それは光栄ですね」


イリアスもそれに応えるように答えた。


「だから、僕と一緒に世界を救ってくれませんか?」

「残念ながらお断りします」


イリアスは即答する。その答えを聞いて勇者は少し悲しげな表情を浮かべたが、すぐに笑顔に戻った。そして立ち上がると言ったのだ。


「……やっぱり無理ですよね。世界を救うなんて。魔族の貴方には」


それを聞いてイリアスは後ろに跳び戦闘態勢に移る。


「なぜそれを」


「さぁね」


その瞬間に勇者の体から魔力が溢れ出す。それは今までとは比べ物にならない程の量であった。


まずい。そんな感情がイリアスを支配した。


イリアスは額から冷や汗が流れてくる。

相手は本気のようだ。


ならばこちらも本気で戦うしかないだろう。


「じゃあね。ばいばい」


視界が白く染まり、次の瞬間イリアスは魔王城に居たのだった。

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