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世界一の暗殺者

「魔王様、人間達から勇者が誕生したそうです」


「そうか、ついにか」


 魔王は玉座から立ち上がる。


「では、ミーラよ。勇者を殺せ」


「はい、わかりました」


 ミーラと呼ばれた彼女は、謁見室を後にする。


 彼女は魔王軍が有する最高で最大の武器。黒を基調とした服を好み、全てが謎に包まれている。彼女について分かっていることは、世界一の暗殺者であるということだけだ。


「勇者か。どれほど強いのか、楽しみであるな」


 魔王は玉座に座り直し、ニヤリと笑った。


 勇者と呼ばれた青年は平原で、魔物を討伐していた。

 彼は勇者とは思えない程に、体が貧相だ。


 その手に持った剣も、そこまでの力を感じられない。


「はぁ、はぁ。これで最後か」


 勇者は魔物の死体を見下ろしながら呟く。


「ねぇ。勇者様?」


 ミーラが木陰から姿を現す。


「ああ、そうだよ」


「勇者になってみてどう?」


 勇者は剣を鞘に納める。


「悪くないよ」


「そ、良かったわね」


 ミーラは微笑むと、懐から短剣を取り出した。


 そして、そのまま勇者に突き刺す。


 しかし、勇者は体を捻ってそれを躱す。

「何のつもりだ?」


 勇者はミーラを睨み付ける。


「あなたが本物かどうか確かめたかっただけ」


「どういうことだ?」


 勇者は剣を抜く。そして、ミーラに斬りかかる。しかし、彼女は簡単にそれを避ける。


「本物のようね」


 ミーラは短剣を構える。

「どういうつもりだ?」


「勇者を殺せ。とのご命令なので。」


 勇者は剣を構える。

 そして、二人は同時に動き出した。


 ミーラは素早い動きで、勇者を翻弄する。


 しかし、勇者はその攻撃を的確に防いでいく。


 二人の攻防は続く。だが、次第に勇者が押し始める。


 ミーラの動きに慣れてきたのだ。


 そしてついに、彼女の腕を切り落とすことに成功する。


 しかし、その瞬間に勇者の腹に激痛が走る。


「ぐはっ」


 勇者は吐血し、膝をつく。


「油断ね」


 ミーラがニヤリと笑う。


 彼女の手にはいつの間にかナイフが握られていた。


 そのナイフで勇者を切りつけたのだ。


「はぁ。めんどくさいな」

 勇者は手に持った剣をダラりと下げた。


「今から僕の能力を使う。死にたくなければここから去れ」


 ミーラは首を傾げる。


「能力? なにそれ」


 勇者は本当に気だるそうに能力を発動する。


 その瞬間ミーラは理解した。この勇者が何者なのかを、身の毛がよだつ程の寒気。それは世界一の暗殺者と呼ばれたミーラでさえ経験したことのない恐怖。


「ま、まさか……」


 ミーラは震える声で呟く。


 その能力が発動した。


 その瞬間、世界が一変する。


 先程まで平原だった場所は一瞬にして荒野と化し、空が赤く染まる。


 そして地面から無数の魔物が現れた。それは魔王軍に所属する魔物達だ。


 その数は数百を超えているだろう。その光景はまさに地獄絵図であった。


「な、なんだこれは」


 ミーラは思わず叫ぶ。こんな能力は聞いたことがない。


「で?まだやるの?」


 勇者は気だるそうに言う。


「くっ」

 ミーラは短剣を構えるが、足がすくんで動けなかった。


「じゃあね」


 勇者は剣を振るった。その瞬間に魔物達が動き出す。


 その光景はまるで地獄絵図のようだった。魔王軍が次々と突撃してくるのだ。それも一方的に虐殺される形で。


 その時だった。魔物達が一斉に消えた。


「ねえ。まだやるの?早く逃げなよ」


 ミーラはその言葉を聞き終える前にこの場から姿を消していた。


 勇者は剣を鞘に納めると、大きく伸びをした。


「あー疲れた」


◇◇◇


「なんだお前逃げ帰って来たのか」


 魔王は玉座に座ったまま、ミーラを見る。


「はい。申し訳ありません」


 ミーラは膝をつき頭を下げる。


「まぁよい。次の策を考えるぞ」


 魔王は立ち上がりマントを翻すと、自室に戻るのだった。

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