006
「無警戒でいいんです。ゲームだから、楽しむことが目的なんです」
「えっ!?」
自分は覚悟していたと言いながら三人には警戒する必要はないと言うカナメの矛盾に驚かされる。確かにゲームを始める前に命が奪われる可能性を考える者などいない。
「……あと発表の時には何か言っていましたか?」
「あっ、うん。……不正なログアウトを試みた場合の安全は保証しないとも言ってたよ」
「ちゃんと予防してあるってことですね」
「それと、同じ内容は現実世界にも告知されて、ゲーム開始は明日からって言ってた」
「うん。でも、現時点でもパーティー全員でログアウトすることは出来なくなってるみたい」
ログアウトしていたプレイヤーも明日の0時には仲間と一緒にいなければ見殺しにしたことになってしまう。単純なルールでプレイヤーたちの行動を縛るつもりに感じた。
「明日以降は日付が変わる時間に全員が揃っていないと死ぬかもしれない。ゲームで失敗しても死ぬかもしれない。……三ヶ月後にノアの方舟を手に入れて脱出出来なければ死ぬかもしれない」
カナメが端的に口にした状況を聞いた三人は絶望を感じてしまう。
「ノアの方舟の入手方法は、どうなってるのかな?」
絶望的な状況を理解していながら発表された内容を読み進めているカナメの姿が淡々としていることに三人は戸惑ってしまう。
「島の中心にある山に『ノアの方舟』はあるんですね。六つの監視塔の中心にあって、監視塔の機能を停止させないと『ノアの方舟』に近づくことが出来ない」
「それぞれの監視塔ではボス戦があるわ」
「まぁ、そうなりますよね。設定だけは普通のゲームっぽい」
「ええ。普通のゲームと何ら変わりはないの」
「……実際に命を懸けるってこと以外は、ってことですね」
そこに関してはプレイヤーたちの間で激しい議論が繰り広げられた。ゲームを盛り上げるためのブラフであるという意見が多かったが、それを証明するには文字通り命を懸ける以外にない。
「とりあえず、皆さんもログアウトして食事とか済ませた方がいい。発表されてからゲーム内にいたんですよね?」
「えっ?……ええ」
「俺が留守番してますから、皆さんログアウトしていいですよ」
「えっ!!?」
カナメの発言に三人は明らかに驚き動揺させられた。