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「『New Theory Noah’s Arc』は三ヶ月間でゲーム参加者全員でクリアを目指すゲームとなります。……って、タイトルも変わってる?」
「そうみたいね」
「ノアの方舟ってだけで嫌な予感はするけど、そんな感じですか?」
サクラはカナメの問いかけに黙って頷いた。
クリア条件を詳細に確認していなくても凡そのイメージが出来てしまうタイトルであり、三ヶ月という期限付きも気になっていた。
「参加者が生活している島『ユースティティア』は三ヶ月後の8月31日に海に沈んでしまいます。……か。まぁ、そんな感じになりますよね」
「それまでに『ノアの方舟』を手に入れて助かることがクリア条件になるの」
「分かりやすくて助かります」
ゲーム初心者のカナメには単純な内容であることが救いだった。あまり専門的な話になってくると理解するだけで時間がかかってしまう。
「なお、リアルな仮想空間を体験してもらうため、ユースティティアでは命の価値も現実世界と同一となります。……って、ゲームでの死は現実の死と同じということです?」
「……そうなるみたい」
カナメは自身の眼前に展開したウィンドウに再び目を向けて発表内容を読み続けた。
全く驚いた反応を見せないカナメを見て、サクラや他の二人はお互いの顔を見合わせて困惑してしまう。
「……死ぬかもしれないんだよ?」
「直接の表現は避けてますけど、意味としてはそうなりますね」
カナメが意味を理解していないのかと考えてしまったが、理解した上で冷静なことで更に驚かされてしまう。
「午前0時の時点でパーティー全員がログインしていなければ、この世界での生存を諦めたとして以降のゲーム参加を認めない」
微妙な表現であるがカナメはサクラから謝罪を受けた理由がここにあるのかもしれないと感じていた。パーティー全員がそろっていることでしか生存出来ないとなれば生き残る手段はゲームをクリアする以外にはない。