018
「おー!まさか!!ドレス作りに参加するプレイヤーが他にもいたとは驚きだ!」
引率者らしき男が大きな声で笑いながら言った。現実世界の体格が反映されているのであれば筋肉質で姿勢も良かった。豪快な男の態度とは違い連れの子たちは突然の大声にも驚くことなく、静かにこちらを見続けていた。
どちらかと言えばサクラの方に注目していることが視線からも読み取れる。
「ほぅ!綺麗な金髪だ」
「……金髪。……金色の髪の毛」
「うん。綺麗」
男の子の方は金色であることを確認するように呟き、女の子の方はサクラが金髪が似合っていることの感想を漏らす。ただそれだけの言葉でしかなかったが、何故か二人の反応は普通とは違って見えた。
ハーフのサクラは美人であり、母親譲りの金髪は美しかった。普段の生活の中でも注目を集めることは多く、言われ慣れているはずの言葉だったが何かが違う。
「コラコラ、突然そんなことを言われて驚いているではないか!失礼だぞ」
「……でも、最初に『綺麗な金髪だ』って言ったのはマサさんだよ」
マサさんと呼ばれた人物は男の子からの正論も笑ってスルーしてしまった。
カナメとサクラは自分たち以外の参加者に驚いていたこともあり、三人のやり取りを黙って見ているだけになってしまう。
「おっと、自己紹介。自己紹介!……私はマサヨシだ。この子たちの保護者的なものだな」
マサヨシは笑顔でカナメたちの前までドカドカと歩いて近づいてきた。
「こっちの男の子はクルトで女の子はニーナ。よろしく頼むよ!」
男の子と女の子は小さく頭を下げて挨拶した。
「……あっ、俺はカナメで、こっちはサクラです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「サクラです。よろしくお願いします」
二人も慌てて挨拶を返した。
――マサヨシ。……マサヨシって、正義か?このクエストの重要性に気付いているのなら、何かを理解している?
豪快な態度で挨拶をしてきた男へカナメは警戒心を持っていた。この島の名前であるユースティティアが『正義』の女神であることに意味を見出そうとしているカナメにとっては気になる点が残る。
「……俺も、このクエストに他のプレイヤーが参加するとは思っていなかったので驚きました」
「ほぅ!では、このクエストに参加するのはキミなのか?」
「え?はい。俺が参加予定です、けど」
「そうなのか。こちらはニーナが参加するのだが、そちらの女性が参加するとばかり思っていた!」
「あっ、そうか。普通はそう考えるのか」
女の子が参加するのであれば、意外であることに変わりはないが納得できる部分もある。少しだけ警戒心を緩めてしまったカナメは、
「サクラさんは基本的に家事全般ダメなので、このクエストに参加することはないですよ」
と余計なことを言ってしまった。