013
ゲーム開始前に仮想世界を体験していた楽しいだけの状況から一変して、各パーティーが他のプレイヤーたちを観察している地味な展開になっていた。
「まぁ、このままではゲームクリアも出来ないですから、俺たちは俺たちなりにゲームを進めましょうか」
サクラ、ユリ、ナデシコはカナメの提案に緊張した。
ゲームクリアを目指すことになれば当然のように戦闘が必要になる。レベルを上げて監視塔を撃破するためにはボス戦も待っていた。
「まず、サクラさん、ユリさん、ナデシコさんは、カフェの経営を頑張ってください」
「えっ?このままカフェを続けるの?」
「当たり前です」
予想していた話とは違ってしまい三人はお互いの顔を見る。
「それで、まずメニューにカレーを加えてください」
「……カレー?」
「はい。スパイシーな刺激のある美味しいやつをお願いします。サクラさんはともかく、ユリさんとナデシコさんは料理が得意みたいですから」
サクラは一瞬ムッとした。
仮想世界ではスキルを入手すれば現実世界で苦手なことも、ある程度は出来るようになる。剣を使った戦闘を現実で経験したことがなくても剣で戦闘出来てしまう理屈と同じだった。
「ゲーム内でも現実と同じような調味料はあるから、それは大丈夫だと思うけどカレーなの?」
ナデシコが聞いた。
「はい」
「カレー好きなの?」
「一般的なレベルで好きですけど、特別好きではないですね」
「……辛い物が好き、とか?」
「どちらかと言えば苦手です」
ユリとナデシコは小声で相談した。
「……それなら、料理スキルも入手しているからスグに対応できると思うわ。ちょっと悩むのは調味料ね」
「ええ。ケーキやクッキーもセットで提供しているから甘いものは準備があるんだけど、スパイシーなものは揃えないとダメね」
カナメは少し意地悪そうに微笑んでから二人に向けて、
「俺の予想では俺が納得出来る物が出来るまで、最低でも一ヶ月近くかかると思ってます」
これには自分たちの料理レベルを過小評価されたと思い、ユリとナデシコも珍しくムッとした表情を見せてしまう。
「サクラと一緒にしないでほしいわ」
ナデシコが発した一言に『どういうこと!?」とサクラが反応してしまった。