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「明日から始まるゲームについては状況を見ながら進めるしかないかもしれませんね。リアルの方が、どんな対応をするかも分からないし」
「そうね。……でも、きっと同じだと思うわ」
「同じって?」
「ゲームで命を奪われることなんてあり得ないって、特別な対応は取られないかもしれない」
そこはカナメもサクラの考えに同意している。結局は誰か犠牲者が出なければ本気の対策なんてものは期待出来ないのだろう。
「……『きっかけ』は必要なのか」
ここでカナメが言う『きっかけ』は誰かが死ぬことを意味していた。
誰も死ぬことなくゲームクリアを達成出来れば良いのだが、それは望むだけ無駄なことになると諦めるしかない。何かが動き出すときは、そんなものである。
「あとは数の問題になる」
サクラはボソボソト話すカナメの言葉を聞いていて、間違いなく人が死ぬことになる展開を覚悟していた。カナメと合流する前までユリとナデシコと話をしていた中でも、最悪の展開だけではなく甘い期待も考えてはいた。
だが、カナメはゲームで命を落とすことを全く否定しない。
「……って、あと10分くらいで日付が変わるのか。ゲームが始まる」
気が付けば23時48分になっており、ゲーム開始までのカウントダウンが始まってもおかしくない状況だった。
「サクラさんも、一旦ログアウトしてください。今日はまだ揃っていなくても大丈夫なので」
「そうだけど、怖くないの?」
「明日からって説明はされているけど、ルールを破ることもあるんじゃ?」
「いえ、こういうことを考えるヤツは変に几帳面なところがあると思うので大丈夫ですよ。そうでなければゲームで実行する必要はない」
ユリとナデシコがいない時点で無意味な提案になるのだが、この状況で一人残れる神経はサクラにない。
するとドアが開いてユリとナデシコが戻ってきた。
「姉弟の会話は終わったのかな?」
「えっ!?……もう戻ってきたの?」
「うん、四人揃ってゲームを開始しようってナデシコと話したの」
「運命共同体になるんだもんね」
この二人もカナメの言葉を信じていることが分かる。少し前までとは違う決意しているような表情でイスに腰かける。
すると、どこからか機械的な女性の声が聞こえてきた。
『あと5分でゲームが開始されます。ゲーム開始前ですのでパーティー全員が揃っていなくても命を落とすことはありませんが、ゲーム開始以後は日付が変わる瞬間をパーティー全員で迎えないと命を落とすことになります』




