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ニポン7歩目 チカンを倒そう! 代わりに!

「なななななんですか! この巨大な鉄蚯蚓は!?」

「電車だよ、レオ」

「デンシャ!?」


 なんということだ。この前のジドウシャとは比べものにならないほどの大きさの鉄の塊に人が入り込んでいく。


「みんな、これに乗って移動するのよ」

「す、すごいですね! これの腹の中に入るなんて皆さん、勇敢ですね……」

「ビクビクしてるレオ、かわいい」


 何故かユイ様がはぁはぁ息切れをしている。

 まさか、このデンシャ、吸収魔法ドレインを!?

 いや、だがしかし、どちらかというと、ユイさまの方がドレインの得意なサキュバスのような顔を……。


「さあ、乗ろっか。大丈夫大丈夫。怖くないから」


 怖い。デンシャかユイ様か何かわからないが怖い。手を引くユイ様の力が強い。流石聖女様。

 ええい!

 私は、勇者ノリオ様の代わりなのだ!

 勇気ある者として、行くぞ! デンシャァアアア!


 ガタンゴトンガタンゴトン。


 特に何も起きなかった。

 これは、あれだな、うん。

 昔、王国兵として詰め込まれた豚竜ピゴン車に似ている。

 あの時も、小さな場所に王国兵が何十人詰め込まれ豚竜が揺らしながら運んでくれていた。

 まあ、これもあれもシャってついてるしな。そりゃそうか。

 あの時ノリオ様達は空を飛ぶ絨毯に乗って先行されていたな。

 っと、ユイさまは大丈夫だろうか。


「ユイさ、ユイ大丈夫ですか?」


 余りにも人が多い為、ユイさまはかなり私を密着する状態になってしまっている。

 申し訳ない。


「ちょ、ちょっと、ヤバいかも」


 ヤバい!? ヤバいが出たぞ! ユイ様がヤバい! どどどどうしたら!?

 ユイさまが私の制服を掴んでプルプルと震えている!


「ユイ! ど、どうしましょう……私に何か出来る事があれば……」


 私がそう言うとユイはバッと勢いよく顔をあげ真剣な目でこちらを見て口を開いた。


「……この症状を抑える方法が一つだけあるわ。でも、レオの助けが必要なの」

「分かりました! で、私は何をすれば?」

「何もしなくていいわ」


 そう言うとユイはゆらりと身体を揺らし……私の胸に顔を埋めてきた!


「ふがふがふが!」

「ユ、ユイ!? ……超賢者様、これは……」

『……ユイは、ヴェルゲルガルドの人間の匂いを定期的に摂取しないと、死にます』

「なんと!? それは大変だ……! ユイ、遠慮なく摂取してください」

「ふが!? ふががががががが!」

『あ、吸いすぎたら吸い過ぎたでキュン死にしますね』


 キュン死に!? それは一体どのような死に方なのだ!?

 そうか! 天使族のキュンピドの矢によって殺された者は快楽に狂って死ぬという……!

 そういうことかぁあああ! くそう! キュンピドはすばしっこいと聞く! 一体どこに!?


『奇跡的に正解を導くのがこのくそまじめ騎士の凄いところですね』


 ユイさまの息がどんどん荒くなっていく中で私は天使キュンピドを探しきょろきょろと周りを見渡す。あまりにも人が多く、キュンピドが見つけられない。

 そんな時だった。


「……ユイさ、ユイ。ちょっと失礼しますね」

「はぁはぁたまらんでぇたまらんでぇさいこ……え? レ、レオ、どこに……?」


 私は、未熟ゆえにキュンピドを見つけられなかった。

 だが、未熟だからこそ、見つけることが出来る!

 私は人をかき分けながら進む。勇者は、人を救うものだ!

 だから。


「貴様、何をやっている……」


 私は男の手を掴む。


「は?」


 こちらを見てくる男。そして、少女。

 男は、少女の尻を撫でまわしていた。

 黒い髪を一つに纏めた少女は目に涙を浮かべ震えていた。

 男が嫌がる少女の尻を触っていたことは明白だった。

 こんな光景を私は何度も見てきた。


 恐らく彼女は平民。男は貴族なのだろう。

 彼女が逆らえないのをいい事に男はやりたい放題。

 そういう世界が嫌いで何度も貴族に逆らってしまった……。

 だが、ノリオ様……勇者ならこうしますよね!


「貴様が彼女の尻を触っているのを見ていたぞ」

「な、何を言う!?」


 男は身体の肉を揺らしながら暴れ私から逃れようとするが離さない。

 周りがざわつき始めている。それに動揺してかどんどん男の顔が紅潮していく。

 しかし、この顔どこかで見たことがあるような……。


「ふ、ふざけるな! 触ってなんかいない! おい! そこの君! わしが触ったという証拠があるのか!? 冤罪であれば大変なことになるぞ!」


 貴族は大体こうやって大声で脅せばどうにかなると思っている。

 しかも、その声の先は私ではなく少女だ。弱き者を責め逃げようとする。

 醜いにもほどがある。本当に何度も見てきた……。ん? あれ?


「その時は『私に』訴えを起こせばいい。私は何も間違った事などしていない。神の前でも誓おう。貴様は、女の尻を撫でまわしていた」

「……!」

「わしはやってない!」


 こいつ、やはり、どこかで……。


「さ、さわってました……」


 その時、少女が震える声でそう告げた。


「このひとです。ま、窓にうつっていたから分かります……! この人が……わ、私のお尻を……」


 少女はまだ泣きそうな顔をしていた。だが、震える身体を押さえ勇気を出して告白してくれた。平民なのに……偉いぞ! まるであの時の……。


「やってない!」

「や、やりました」


 この男、もしや、あの時の……。


「わしは違う!」

「ちがいません!」


 そうだ。平民出身の騎士だった彼女の尻を撫でまわし妾になれと迫っていたあの貴族の……。


「わしじゃねえ!」

「あなたです! 変態」

「変態じゃない!」


 コイツは……!


「もしかして! お前まさか……ティンティンカンカン伯爵!?」

「違ーう! 痴漢だ! ……あ」


 男がそう言って青い顔をしている。

 そうか……ティンティンカンカン伯爵ではなかったか……。

 何人もの平民の女を攫い好き勝手をしていたあの醜悪な男にそっくりな顔なんだが……。


 ……待て?

 待て待て待て待て! 違うぞ! ここは、ヴェルゲルガルドではなかった!

 頭に血が上ってごちゃごちゃにしてしまっていたぞ!

 愚かなレオンハルト! あ、謝らねば!


「ち、ちが……わしは」

「すまない! そうだな、貴方はティンティンカンカン伯爵ではない、そうか、貴方はチカンだったのだな。申し訳ない」

「ち、違う! 痴漢じゃない! 痴漢じゃないんだ! あばばば!」


 どこからか電撃が! 超賢者様! もしかして、私のフォローを!?

 電撃がおさまるとチカン伯爵は、大人しくなった。


「ワシがやりましたー! 皆様本当にすみませんでしたー! 今から警察に行き、家族も社会的地位も未来も何もかも失ってきます! 痴漢なんてして人生オワタ、オワタよー。するんじゃなかたよー」


 そう言いながら何人かの男性に連れられて男がデンシャを下りていく。

 途中から\(^o^)/こんな風になっていたのは何故だろうか……。


 ぱちぱちぱちぱち!


 周りから拍手が!? 称賛の声も聞こえる。

 あの貴族に逆らえなかった人たちだろうか。

 よかった……ヴェルゲルガルドの頃は声を上げてももみ消されていたが、こうやってニポンでは認めて下さるのだな。

 気付けばものすごい注目を浴びている。

 これはどうしたら……思い出せレオンハルト、ノリオ様ならこういう時……!


「は!」


 そうか! 思い出したぞ! ノリオ様なら!


「ねえ、超賢者ちゃんすっごく嫌な予感が」

『同感です』


 ノリオ様ならばこういう時こう言う!


「俺は、勇者、ノリオだ! 女を泣かせるヤツは、許さん! 女の敵はオレの敵だ!」


 ……。

 あれ? 静かになった?


 ぱちぱちぱちぱち! わーわーわー!


 と、思ったら大騒ぎに!? 笑っている人もいるぞ! やった! 『ウケた』!

 何やら小さな石板のようなものを向けている人もいる。あれがニポン流の称賛の仕方なのだろうか。


『あーあー、やっちまったな~。ねえ、ユイ……』

「ほう~、かっこいいよお、レオンハルトさん~」

『……駄目だ、ニポンに帰ってきて歯止めが利かなくなってますね。あと、レオンハルトフィルターがすごい。でも、まあ、レオンハルトは本心から言ってますからね、感動する女性もいるでしょう。クズノリオは女性の前でええかっこしたかっただけですし』


 ユイさまと超賢者様が遠くで何かを言っている。

 だが、その時の私は気づいていなかった。えすえぬえすとやらで私の姿が撮られていたことに。


 その見出しが、


『痴漢を討伐して電車で叫ぶ勇者参上www』


 というものでものすごく『バズった』ということに。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。

今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!


また、作者お気に入り登録も是非!


完結済をよこせという方!

完結ほやほやがこちらに!

『英雄たちのアシナガおじさんが冴えない私なので言い出せない』

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笑い多めならこちら!

『俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。』

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[良い点] 毎度の超賢者様のウルトラ力技解決 [気になる点] ティンティンカンカン伯爵とはいったい
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