ニポン43歩目 みんなこんらんした! ヤバいです!
「改めて、自己紹介しとこうか。あたしが、姉の輪宮寺俳莉、で、こっちが……」
赤髪の『少女』が胸を隠しながら、髪くらい真っ赤な顔で恨めしそうにこっちを見ている。
「妹の、輪宮寺風莉」
なんとなくの違和感はあったが、まさか女性だったとは。
「この子はね、女の子なんだけど、昔のノリオ君に影響受けちゃって、女の子にえっちなことをするのが好きになって……よくみんなの胸やお尻を触ってくるのよ」
そうか。ノリオ様の影響で……ノリオ様は仲間の女性達のお尻や胸を眺めるのがお好きだったものな。
「まあ、風莉が勝手に不意打ちで襲い掛かって、その上、その、その、ズ、ズボンを下ろしたのが元々は悪いし……だから、そんなに頭を下げないで」
姉の俳莉さんがそう言って下さるが、そうはいかない。妹の風莉さんの胸を触った挙句に、皆様にちいさくなくてかわいくないものを曝け出してしまったのだから!
「誠に、申し訳ありませんでしたぁあああああ!」
完全に油断していた! いついかなる時も気を張っておかねば家族を守れないというのに、股間を曝け出すとは……ああ、愚かなレオンハルトォオオオ! そして、普通に恥ずかしぃいいいいいいいいいい!
「あ、あっはっは。その、ノリオ君のすごいんだねえ。えーと、このタイミングでなんなんだけど、俳莉も自己紹介したし……猿川流花。よろしくね、ノリオ君」
ショートカットの女性が名乗って下さる。だけど、私の股間をチラチラ見ながら自己紹介するのはやめて頂きたい。そっちが私の本体みたいで……。
「沼尻百合女だよ。今度はちゃんと覚えておいてね、ノリオ君」
緩いウェーブの女性が完全に私の股間に視線を合わせて挨拶される。この人は絶対ふざけている!
にやにやと笑いながら私を見ているし!
「ちょっと! 百合女! ノリオが困ってるでしょ! ノリオ、大丈夫?」
姉さんが間に入って助けて下さる。ありがたい。だけど、姉さん、姉さんも私の股間に話しかけています。誰か、姉さんの混乱状態を解いて下さい! 状態異常回復を!
「ええー、だって、なんかノリオ君が困ってるって新鮮じゃない? 昔は、すっごいニヤニヤしてて、胸とかガン見して怒られてもニヤニヤしてるだけだったでしょ。でも、今はさ、こーんなに照れてかわいいねえ」
百合女さんがずっと股間と話している! もう勘弁してください!
すると、姉さんが急にハッとし、こちらを見てくる。
「確かに……照れてるレオ……かわいい……」
「たしかにたしかにー! っていうか、レオって呼び方もたしかにしっくりくるねえ。あたしもレオって呼ぼうかなー」
流花さんが楽しそうにこっちを見てくる。ちゃんと顔を見て! でも、時々ちらちらしている! あああああ!
「ちがう……」
ぼそりと風莉殿が呟く。そして、俳莉さんの手から離れ、こちらを指さす。
「お前は、ノリオなんかじゃない……」
ぎくうう!
やはり、分かる人間には分かるのか……。
風莉殿は、真っ直ぐに私を見て……そうか、そうだな……私はノリオ様と比べて、ちーと能力もなければ、強力で多彩な魔法も、力も早さもなければ、人望もない、ノリオ様はすごいの、だ……。
「ノリオは! すごいど助平で! 変態で、ゴミで、クズで! ど助平で! 人間の底辺で! 覗きとネットで悪口で、性格最悪で、ひとりぼっちで、友達いなくて、ど助平で、とにかく気持ち悪い野郎なんだぁあああああ!」
「言い過ぎだろぉおおおおお!」
ものすごい悪口を言われた! 正確には、ノリオ様にだが!
ふざけるな! ノリオ様は、確かに多少性欲に忠実な所はあり、趣味嗜好が特殊で、時折鬼のような所業で、非道な振る舞いをすることもあり、多少性欲に忠実で、人より欲望が多く我が儘に生きていらっしゃって、宿に泊まる度に男のロマンだと女性の風呂を覗きに行ったり、冷たい態度をとったものに対し陰で悪口を言ったり、多少よろしくないところもあり、男性の友達と呼べる人間は少なかったり、多少性欲に忠実で、ちょっといやらしい顔をすることが多いが!
「……ん?」
これ、考えてみると、ひどいのでは?
いやいやいや、それでも、ノリオ様はヴェルゲルガルドを救ってくださった英雄で。
「お前なんか! ノリオじゃない!」
私が思考に入り込んでいると、風莉殿がそれを遮るように再び私に対し叫ぶ。
私は、ノリオ様じゃ……。
「お前は! なんかちいさくなくてかわいくないど変態野郎だぁああああ!」
風莉殿は目を剥いて叫ぶ! 私の股間に!
「も、もうやめてくださぁあああああい!」
私は、私の意志で股間を曝したわけではないのに!
その時、とてつもない邪気が道場を満たし、私は身体を震わせる。
「な、なんだ……この恐ろしい気配、は……!」
『が、がが……ぴー』
さぶ賢者様Aも様子がおかしい!
そんな、さぶ賢者様さえもおかしくさせる存在がニポンにいるだと!
私が、慌てて振り返ると道場の入り口には……。
「ねえ、レオ。股間を曝け出したって聞いたんだけど、どういうことかなあ~?」
ユイさまが笑っていた。
溢れる邪気が身体中に纏わりついており、手には超賢者様が。
『がががががががが。制御不能制御不能』
ちょ、超賢者様ぁあああああ!
元々、ユイさまは聖女で魔力が高い! そう言った人間が、闇に堕ちると……こうなる!
魔王も元々は正義の為に生きる者だったが人間に絶望し、闇に堕ちたのだったな。
まあ、そんなの関係なくノリオ様が吹っ飛ばしていたが!
「ねえ、レオ……」
ユイさまの目が真っ黒だ。
近くにいた風莉殿はもう泣いている。
わかる。私もちょっと泣きたい。
「私にも……股間を見せなさい!」
なんでですかぁああああ!
このあと、私はユイさまの猛攻をしのぎ切り誇りを守り切った。
ある意味すごく稽古にはなった。
こういうのをもとめていたわけではないが!
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