ニポン4歩目 家族に再会した! 代わりに!
「ノリオ……本当に、よかったわ……」
よろめくように抱きついてくるノリオ様のお母様。
一年間、心配だったのだろう。
瘦せこけ、目には隈が。
私はこれからこの人を騙さなければいけない。
罪悪感は胸が痛むほどにあったが、彼女の本当に嬉しそうな笑顔を見て、ノリオ様の代わりとして少しでも幸せになれるよう努力することで罪滅ぼしとさせていただこうと心に強く誓った。
「母上、一年間も申し訳ありませんでした」
「……ノリオ、あなた……そんな口調だったかしら?」
涙が零れる瞳を見開きながら首を傾げるお母様を見て、私は流れる汗が止まらない!
ノリオ様の口調を何故学んでおかなかった!
愚かなレオンハルトォオオオ!
『記憶改ざんまほー』
「あばばば!」
超賢者様の例のアレだ。
今さらだが、後遺症とかないのだろうか。なんだか身体の調子は良くなっているのだが……。
「あ、あの! 一年間色々ありまして、でも、ノリオ君、こっちに帰ってきたときに頭打って記憶もなくなっちゃってて……色々変わってしまって、変な気がするかもしれませんけど、気にしないでください」
更に、ユイ様が助け船を出してくれる。
お母様は、あばばばの効果があったのかなかったのかふらりと近づいてくる。
「……大丈夫?」
お母様が心配そうに問いかけてくる。
何に対して聞かれたのか分からない。
けれど、私は今、心からこの人を安心させたくて。
「大丈夫、これから全部だいじょうぶにするから」
精一杯の気持ちを込めて自分の気持ちを伝えた。
ユイ様が何故か隣で顔を真っ赤にして【人食い岩魚】のように口をパクパクして何か言いたそうにしていらっしゃるが、すみませんユイ様、今はお母様に集中させてください。
「そっか……うん、なら、いいわ。あなたが、大丈夫なら」
お母様はほっとしたようのか笑ってくださった。
「ねえ、あなた達も早くきなさい! ノリオが帰ってきたのよ!」
お母様が後ろを振り返り、誰かを呼んでいる。
そこには二人の女性がいた。
一人は、金色の髪を二つ結びにした小柄な女性。
非常に可愛らしく何やら光の出る板を見ながらこっちに歩いてくる。
もう一人は、長身で赤い髪の女性だ。
背筋が伸びており力強く、しかも何故か睨みながらこっちに歩いてくる。
「も~、なんで梨生奈が、ソイツの迎えに一緒に行かないといけないの? 一年もお母さん心配させたバカの迎えにとかマジで最悪、なん、だけ、ど……」
「っていうか、母さん、あのさ……」
お二人は、情報にあったノリオ様のお姉さまと妹様だろう。
二人が茫然と私を見ている。ま、まずい!
「「誰? このひと?」」
「ノリオよ」
お母様が聖母の微笑みで答えてくださる。
「「いやいやいやいや!」」
二人が驚愕の顔で答えていらっしゃる。
「あの馬鹿、こんなに彫り深くなかったって!」
「それに、アタシより背が高いじゃねーか! アイツもっとチビだったって!」
「も~、何言ってるの。ノリオは一年間でかっこよくなって帰ってきたのよ」
「「…………いやいやいやいや!」」
本当に大変だった。
お母様が多少ノリオ様に盲目的だったこともあり、なんとか事なきをえたが、終始姉妹であるお二人は私を見つめてきていた。
ま、まずい! 私が、なんとかせねば……! ノリオ様を完璧に演じなければぁあああ!
「や、やあ、姉さん、妹さん、ぼく、ノリオだよ☆ 本名、鈴木乃梨生。あだ名はレオって呼んでね♪ 身長160センチで、体重60キロなんだ。顔がチャームポイントだよ! な~んてね! 性格は、ちょっとクールって言われてるけど、実際はトーク上手な愉快なやつさ☆ な~んてね! 趣味はPC、漫画、アニメ鑑賞、似顔絵、ネットサーフィンだよ。気になる趣味があったらどんどん話しかけてね。クラスの中では、異世界転移したら主人公ポジションになっちゃう感じ! な~んてね! 勉強は、学校教育は苦手なんだけど、結構賢いよ。な~んてね! 運動は、能あるタカは……なんてね、フフフ。恋人は……内緒だよ。これからよろしくね」
い、言えた! ノリオ様から頂いた資料を一言一句違わず!
二人がしっかりと私の目を見て聞いてくれている。よし!
「ほら、ぼく、ノリオだよ」
「「いやいやいやいやいや!」」
「プロフィールカードかよ!」
「な~んてねが腹立つ! ノリオっぽいけど!」
うまくいかなかった!? 何故!?
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