ニポン40歩目 おねえちゃんと出かけた! ヤバいです!
「ノリオ、あたしの傍から離れちゃ駄目よ」
「う、うん、わかったよ。姉さん」
「……ふふ」
姉さんは私の言葉を聞いてふわりと笑い、私の頭を撫でる。
今日は、姉さんの通っている道場に、ノリオ様も通っていたというそこに連れて行っていただくことになっていた。
事の発端は私が一昨日の夕食の時に……。
「姉さん、姉さんが通ってる道場ってどんなところなの?」
と、私が興味本位で聞いたことだった。
ニポンの格闘技の道場には興味があるし、なんといってもノリオ様が僅かにでも通われていた所だ。ノリオ様の強さの秘密が少しでも見いだせるかもと聞いてみたのだ。
すると、
「レオが、あたしに、興味を……?」
姉さんの身体が震えていた。
そこまで驚く事だろうか?
「つまり、これは……結婚?」
「いや急展開すぎませんか!?」
「そうね、いきなり結婚は早すぎるわね。恋人でみっちり楽しんでからのほうがいいわよね」
ちょっと何言っているか分からなかった。
『さぶB~、ミオリの思考がでんじゃらす』『いやいや、さぶA、姉の溺愛こそが至高』
さぶ賢者様同士もちょっと何言ってるか分からなかった。
「それで、あたしが通っている道場が何? 興味あるの? あたし、が通っている道場に」
変な所で区切った気がするが気にしない。
「そうなんだ。折角だから通えたら嬉しいな、と」
「姉さんと通えたら嬉しいですって……!?」
言ってはない。
言ってはないが。
「そうだね、姉さんと通えたら嬉しいよ」
孤児として生まれ家族のあたたかさに飢えているせいだろうか、家族と一緒にいられることは本当に嬉しい。
そんな風に思っていると、
「ねえさん? ねえ、ねえさーーーーーーーーーん!」
姉さんが倒れた。
とてもしあわせそうな顔で倒れた。
と、言った事があり、私は今、姉さんと道場に向かっている。
姉さんは基本獅子王大学の空手部で稽古をしているのだが、週に一度通っているそうで同行させてもらっていた。
だが
「姉さん、その近くないかな」
姉さんは、私に腕をしっかりと絡ませて歩いている。
背が高い姉さんなので、頭がすぐそばにあり、しゃんぷーのいい匂いでくらくらする。
「近くない。これが姉弟の普通の距離なのよ」
らしい。街中では姉弟を見たことがない。顔の似ていない男女がこうなっているのを見たことがあるのだが、アレはかっぷるではなく姉弟だったのだろうか……。
「何人たりともレオを傷つけさせないから、お姉ちゃんにまかせなさい」
「ありがとう、おねえちゃん!」
「あああああああああああああああああああああ!」
姉さんが急に正拳突きを始めた!? 何故!?
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
何か感謝をしている! 感謝の正拳突きをしている!
『はいはい、認識阻害認識阻害~』
さぶ賢者様Bが姉さんに認識阻害の魔法を掛けて下さっているらしい。
ありがとうございます。
姉さんが何度も音を置き去りにして暫く経つと落ち着いた様子で帰ってきた。
「ふう……はあ、スッキリしたわ」
妙に吐息がなまめかしいのを勘弁していただきたいのだが。
汗をすこしかいた姉さんは、その、失礼ながら煽情的で目のやり場に困る。
「はぁはぁ……どうしたの? レオ……もしかして……おねえちゃんに興奮しているの?」
「いや、興奮とはいわないけど、その、元々綺麗だから、そんな風になってると、ドキドキしてしまうよ」
「……! だ、誰に? なにちゃんに?」
なにちゃんに?
そう聞かれればこう答えるしかない。
「お、おねえちゃんに」
「ああああああああああああああ! ありがとうございます! ありがとうございます!」
暫く感謝の正拳突きは鳴りやまずあまりにも大きなその音はさぶ賢者様Bの認識阻害でも防ぎ切らず、街の七不思議のひとつになったとさぶ賢者様Aが後に教えてくれた。
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