ヴェルゲルガルド6歩目 裸で疾走! 代わって!
や、やあ! みんな! ノリオだよ!
みんなは元気カナ!?
俺は今、
「うぎゃあああああああああ! 浮気してごめんなさぁあああああい!」
シノから逃げ回っているんだ!
「うふ、うふふふふふふ」
高い所からシノが逃げ惑う俺を見て笑っている。こええ……背中にブラックドラゴンが見える……。めっちゃくちゃお怒りのようだ。
イノリにボコボコにされて血塗れになった時の方がまだマシだったかもしれない。
あの時は、命からがら逃げだせたし、自分で掛けた回復魔法でなんとか治療できた。
すげえ痛くて泣けたけど。
イノリは結局帰ってきていない。
あのあと、女傭兵団は城に向かうのは、危険と感じたっぽくて一旦撤退していったらしい。
その女傭兵団に入って暴れ回っているというのは聞いた。
目の前の敵とは別の何かを思い浮かべながらボコボコにしているようだったと部下から聞いた。
こええよ……。
そして、城に帰って落ち着いた頃、俺はやらかしてしまったのだ……。
「ふー……」
俺は隣で帰り支度を始めている裸の女の子を見ながら、とっても満足していた。
「ありがとね」
「いや、金さえ貰えれば全然大丈夫っすよー」
いわゆるそういうお仕事の子を呼んだ。
お金を出してするのは不本意だが、お金を出せばさせてくれるので有難く利用させていただいた。
だって、しょうがないじゃないか!
散々5人と致していたのに、みんないないんだから!
キリは他の男の所だし、リエナは闇堕ちしたし、イノリは女傭兵団だし、他の二人は出かけているし!
「いやー、それにしても、君かわいいね。どう? お妃にならない?」
皆と約束して結婚するのは彼女達5人までと約束していた。
だけど、3人抜けたんだ。別にいいだろう。
お店の子はにこりと笑って俺の元へやってきて俺のものに……。
「いやー、お断りするっす」
「え?」
ならなかった。
「な、なんで?」
「なんで? って、まあ、正直、今の国の状況見たら泥船っぽいっすよねー。それに……あい、いや、なんでもないっす」
お店の子が歯切れ悪く言いよどむ。
その言い方はズルいなあ。絶対何かあるじゃん!
「な、なに? 気になるなあ。遠慮なく言ってよ」
「んー、正直。ノリオ様はタイプじゃないっすね」
わお、正直―。
「いやー、まあ、ワタシもノリオ様が昔戦っているのを見たことありますけど、すげーつえーってなりましたけど、まあ、感想としてそんなもんでしたね。いや、あんま強いから結婚するにはならんじゃないっすか。そういうその力が全ての国以外。だから、ユウナ姫が結婚するってなった時、ほんとびっくりしました。なんでって」
正直ぃいいい~。
「まあ、基本的にハーレムっつーのは、男が圧倒的に権力を持っていて、女が従うのが当然みたいな感じだから出来る事っスよね。だから、奥様方がいとも簡単に従ったのは不思議だったっすね。なんか、強ければいいんだみたいな。だって、ノリオ様程度のやさしい人なんて探せばいますよ。あと、ノリオ様のために、みんなで仲よくしようっていう前提がないと全部おかしくなっちゃう形なんでよくみんなそれでいいと思ったなあと絶対どろどろするやつやんって思ってたっす。まあ、要するにみんな馬鹿じゃんって思ってたっす」
正直ぃいいいいいいいいいいいいいい!
「い、いや、でも……強い方がいいじゃん」
「んー、そりゃ強い方がいいっすけど先にこの人好きだってなって例えば、同じくらい好きな人がいれば強い方がいいかもっすけど。まず、強いかどうかが先じゃないっすね。あと、ノリオ様、トレーニングしないからどんどんチート能力落ちてるって聞いてますけど?」
「お金持ってるよ!?」
「それこそもうあんまないらしいじゃないっすかー。大体、お金持ってるから好かれるんじゃなくて、お金を手に入れられるほど周りの人が価値を認めていたり、技術を磨く努力をしているからかっこいいんであって、例えば、強いから強盗してお金を手に入れた男がかっこいいとは思えないっすねー」
「か、顔は」
「普通っス。まあ、戦ってる時は何割増しかでかっこよく見えるかもっすけど、普通っスね」
「あ、あたま」
「いや、ノリオ王、馬鹿じゃん。ワタシが分かる位に馬鹿じゃん! だって、ノリオ王の一番好かれるの力なのに、力落ちてるし、金ももうないって聞くし、漏らしまくってるし、めっちゃ王国の人らに嫌われてるのに、ワタシみたいなの気にせず城に呼んじゃうなんて女心も分かってない馬鹿じゃん! あはははは!」
正直ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
いや、流石に言い過ぎだろと思っていたその時だった。
「そうですね、本当に馬鹿ね、私達」
部屋の入り口に……【賢者】シノがいた。
あまりに天才過ぎて頭の固いジジイ共に押さえつけられていたほどの天才であるシノ。
魔法は勿論、作戦や政治にも明るくて色んなことをシノが考えてくれていた。
そんなシノが頬に手を当てて微笑んでいた。
「うふふふふ」
こわい。
「や、やあ……シノ。早かったね。その、ユウナは?」
「ユウナはまだ他の国で交渉を行っています。あなたがボコボコにされたと聞いて私は一足早く帰ってきたのですが……元気そうでなによりです」
こわい。
「じゃあ、ワタシは帰ります~。ワタシはお仕事で呼ばれただけなんで関係ないっす。恋愛感情もないし。恋愛感情があるお二人であとはどうぞ~」
そういってお店の子は去っていく。
いやいやいやいやいやいやいや!
帰らないで! 一人にしないで! ねえ!
シノはお店の子に微笑みかけながら会釈すると、俺の方に向き直る。
「恋愛感情、か……。考えてみれば恋愛というのを学ぶ暇もなかったなあ」
「シ、シノさん……?」
「この人しかいないと思って……戦いに明け暮れる中で、それを発散するように貪りあって……果たして、これが恋愛だったのか……いえ、そうね。学んだのね。恋愛を」
シノが手を揺らりと動かしながら魔力を練っている。
マズい! あれは彼女だから出来る略式の……極大魔法!
俺は慌てて詠唱を紡ぎ始める。
「この大きな失敗を学習として、学んだ私はもう間違えない! ただ、ユウナの為にもお灸は据えておかないとね……! 誰が、誰のために、他国を回って頭を下げていると思っているの、この馬鹿ノリオォオオオオオオオオオオオオ!」
「ダークネスドラゴンブラックダークネスカタストロフィーショッ……ぎゃああああ!」
シノの魔法を防ぎ切らず裸のまま庭に吹っ飛んでしまう。
飛行魔法で庭に降り立ったシノはまた微笑んでいて……。
「さあ、おしおきの時間ですよ……」
こ、こええええええ!
頭上にあほほど魔力の塊が浮かんでるんですけどおお!?
「うぎゃあああああああああ! 浮気してごめんなさぁあああああい!」
この日、裸の王様が街中を走り回っていたと噂になった。
ご、ごめんなさぁああああああい!
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