ニポン37歩目 らぶこめがはじまった! ヤバいです!
第二部開始です。
長くならない予定なので、よければ、お付き合いください。
「朝か……」
私は、レオンハルトは、聖魔法【聖域】の中で今日も目覚める。
これはユイさまが毎晩私に張ってくれている結界だ。
ユイさま曰く、なにやら私の大事なものを狙っているモンスターがいるらしく、その者達から私を守るために張って下さっているらしい。
そのモンスターの正体は……私には分からない。しらない。なにも覚えていない。
「それにしても、ユイさまの聖域はすごいなあ」
私はユイさまの聖域による光の壁に触れてみる。
悪しき心持つものを弾くという光の壁は強力で私には壊せそうにない。
部屋全体をこれで守って下さっているのだが、これから朝のトレーニングと朝食づくりがあるので外に出なければならない。
なので、私はすまほを持って、電話を掛ける。
『お、おはよ! レオンハルト』
「おはようございます、ユイさま」
相手はユイさまだ。相変わらず朝早くでもとても可憐な声だ。
まるでもっと前から起きていて準備をしていた様な、そのくらいとっても可愛らしい声だ。
「ユイさま、今日もありがとうございました。聖域を解除していただいてよろしいでしょうか」
『うん、すっごく穏やかな寝顔が見られてげふんげふん! すっごく穏やかに寝れたような声でうれしいよー』
突然咳き込まれたけれど大丈夫だろうか。
そういえば、いつも視線を感じるような……いや、気のせいだろう。気のせいだ。気のせいであれ。
『じゃあ、解除するねー』
「ありがとうございます。ユイさま。それにしても聖域を毎日はユイさまの負担になっていませんか?」
『そ、そんなことないよ! だいじょぶだいじょぶ! これでもヴェルゲルガルドの聖女だよ! 元だけど』
「ユイさま……! ありがとうございます! しかし、聖域はかけた相手の声を聞かないと解除できないなんて条件があったんですね」
ユイさま曰く、
『さ、聖域はねっ! 人相手にかけた場合は、そのかけた人の声を聞かないと、解除できないのっ! だ、だから、毎朝、起きたら解除の為に、お電話してねっ』
らしい。
なので、毎朝電話させていただいているのだが、ユイさまの朝の貴重な時間を奪ってよいのであろうか。
私が心配していると、電話の向こうのユイさまはなんだか慌てた声で。
『そ、そうなんだよねーそうなんだよ、そうなんだ、そうなんですよー』
そうらしい。
『嘘である。この女、本当は時間で解除することも出来るのに朝一とれたてレオンハルトボイスを聞きたいが為に真実を教えていないのだ』
『超賢者ちゃん、ちょおっと黙ろうかあ』
『幼馴染は絶対に勝てないらぶこみゃああああああああああ!』
電話の向こうで超賢者様となにやら揉めている。一体何が起きたのだろうか。
学校への準備に支障がなければいいが。まあ、いつものことだし気にする必要はないか。
私は、聖域が解除されるのを感じ、朝の準備に取り掛かる。
「ふぎゅ! お、おはよう! レオ!」
聖域を解いた部屋から出ようとすると拳を構えた姉さんが立っていた。
扉が開くとは思っていなかったのかポニーテールに纏めた赤髪を揺らして驚いている。
姉さんは大分薄着で身体にぴったりなタンクトップでショートパンツ姿なので目のやり場に困る。
「姉さん、風邪ひかないでよ。それに……今日はちゃんと寝た?」
最近、姉さんは遅くまで稽古をしているようで寝不足な様子だった。
なので、心配しているのだが、言われた姉さんは目を思い切り泳がせながら、人差し指同士をちょんちょんと合わせている。
「え~と、うん、寝てる、よ……。勿論、レオとの約束だもん。姉さんだもん。ちゃんと守ってるもん」
モンが多い。
『嘘である。この女、ユイの聖域を破る為にも、レオへの今日もかっこよくてありがとうというかんしゃのせいけんづきを行い破壊しようとしていたのである。勿論、毎日である』
「おい、さぶ賢者、ちょおっと来な~。稽古しに行こうぜ~」
『1ターンキルだけは! 1ターンキルだけは! ラインがギリギリでぎゃあああああ!』
ミオリ姉さんとミオリ姉さんのさぶ賢者様、さぶ賢者様Bが姉さんの部屋に入って、激しい稽古を始めた。
私の正体がバレてからは、ミオリ姉さんたちにも危害が加わらないようにとさぶ賢者様がつくようになった。みなさん、何か色々さぶ賢者様から教えてもらっているようで、向上心がすごい。
それにしても。
「はっ!」
『音が置き去りにぃいいいいい!』
姉さんが元気でなにより。うんうん。
「お、おはよう、おにいちゃん!」
リオナの部屋の前を通ると、慌ててリオナが飛び出してくる。
今日も薄くではあるがもうお化粧をすませているようだ。
「おはよう、リオナ。今日もかわいいね」
「ばばばばばばばばっかじゃないの! とうぜんよ!」
リオナが叫ぶ。口角を思い切りあげて口元ゆるゆるで叫んでいる。
嬉しそうでなによりだ。
だが、心配もある。
「リオナはちゃんと寝れた?」
「え!?」
リオナは最近、随分と遅くまで勉強を頑張っているようで心配だ。
私が教えようかというと頑なに拒否された。反抗期だろうか。
リオナは私に聞かれ、髪をいじりながらそっぽを向いて呟いた。
「も、もちろんよ! ちゃんと寝てるに決まってるじゃない!」
リオナがびしっとこちらに指さしそう叫ぶ。
なら、よかった。
『嘘である。この女、ユイの聖域を破る為に、『ワタシと契約して魔法少女にしてよ』とさぶ賢者である私に迫り、無理矢理魔法を教えさせているのである。人間の価値観、わけがわからないよ』
「ねえ、さぶ賢者ちゃん、ちょおっと来てほしいんだけど~」
『レオの妹がこんなに怖いわけがぎゃああああああああああああ!』
部屋に戻ったリオナとリオナのさぶ賢者様、さぶ賢者様Cだったが中から何か聞こえる。
賑やかな音だ。うん、今日もリオナが元気で良かった。
「おはよう、かあさん」
「きゅん! はあはあ……おはよう、レオ」
リノおかあさんが胸を抑えながら苦しそうに挨拶を返してくれる。
「だ、大丈夫? かあさん」
「きゅうん! 大丈夫、内なる強大な母性が目覚めるのを抑えるのに必死なだけだから」
ちょっと何言ってるか分からなかったが、大丈夫ならよかった。
「ところで、かあさんは昨日はよく寝れた?」
かあさんも最近は寝不足気味のようだったから心配していた。
かあさんは自らの胸をぎゅっと掴み、うっと声を漏らした。
ん?
「も、もちろんよ。おかあさんは、ミオリやリオナと違ってレオとの約束を守って静かに寝てましたよ」
よかった。かあさんはしっかり寝てくれているようだ。
『嘘である。この女、通常攻撃が全体攻撃で二回攻げ……』
「さぶ賢者ちゃん、滅っ(めっ)」
『ぎゃああああああああああああ!』
すさまじい攻撃がお母さんのさぶ賢者、さぶ賢者様Dに襲い掛かる。
リノおかあさんとさぶ賢者様Dも仲が良い。
今日も我が家はにぎやかだ。
たのしくみんなで朝食を終え、出かける準備をし、迎えに来てくださったユイさまと一緒に学校へと向かう。
「じゃあ、おかあさんはお掃除してから会社に行くからみんな気を付けて行ってらっしゃい」
リノお母さんが玄関まで来て見送ってくれる。
ひらひらと手を振る姿も美しい。毎日掃除をして下さるのもありがたい。
だが、伝えなければならないことが!
「あ、あの! おかあさん!」
「きゅん! なに? レオ?」
リノお母さんが玄関から飛び出して私の手を掴んでくる。
ちかい。
「あの、母さん……私の部屋の掃除はしなくても大丈夫だからね」
「……わかったわ」
リノおかあさんが微笑みながら頷いてくる。よかった。
『嘘である。この女、レオの部屋を掃除すると称して徹底的に家探しし、レオの趣味嗜好を……』
「滅っ」
『ぎゃああああああああ!』
「大丈夫だから、おかあさんはレオの性癖をまも……げふんげふん! とにかく、安心していってらっしゃい」
リノおかあさんの微笑の圧に気おされながら、私達は家を後にした。
リノおかあさんの黒龍並みの迫力はなんなのだろうか。
ヴェルゲルガルドでもあれほどの圧は……。
ぶるぶると首を振り、気持ちを切り替え、ユイさま達と学校に向かうため、4人で電車に乗り込む。
「よし……!」
この前の岸先輩のようにティンティンカンカン伯爵にこっそり身体を触られるようなことがあってはならないと私は気合を入れる。
すると、
「陣形、鉄壁の構え」
「「了解」」
ミオリ姉さんの指示で、素早くリオナとユイさまが守るべく囲む。
私を。
そして、誰にも入りこむ隙を与えないように詰めてくる。
説明しよう。
私の身体は女性であるユイさまや姉妹に比べ大きい。
なので、壁を含めて三人で囲むには大きすぎる。
となると、どうなるのか。
「あ、あの……三人とも、む、胸が……」
「「「当ててんのよ」」」
当ててるらしい。何故?
ミオリ姉さんの爽やかなミントのような香りと、リオナの柑橘系の匂い、そして、ユイさまの花のような匂いが混ざり、そして、柔らかい三面の壁により私もこんらん状態に陥る。
そして、周りの男性たちは目から血の涙を流しながら私達から離れていく。
な、なるほど! こうすることでティンティンカンカン伯爵が近寄らないわけですね!
そういう作戦ですよね?!
私は同意を得るために三人の方を見ようとして……慌てて顔を上げる!
説明しよう!
私は三人よりも背が高い。
なので、三人がもし仮に、上着のボタンを……。
やまがたにまが!
「あ、の……見えて……」
「「「((み、))見せてんのよ」」」
リオナとユイさまには恥じらいがあったのでよかったなあ!
レオンハルトはそうおもいました!
「じゃあ、アタシ、大学行ってくるから」
ミオリ姉さんはそう言ってバイクにまたがり去っていった。
最近駅近くにバイクを駐輪して通っている。わざわざ。
「じゃあ、わたしも学校行ってくる。また連絡するね、お兄ちゃん」
リオナはそう言って私達とは別の学校に向かって駆け出して行った。
距離が遠くなるのに電車に乗っている。わざわざ。
「あ、そういえば、レオは昨日送ったの見てくれたかな?」
ユイさまがリオナを見送ったあと、すごい勢いで後ろを振り返ってきた。
「え、ええ、ですが……本当なんですか? そのニポンの男の人っていつもそうなんですか?」
「そうなのよ、男の人っていつもそうですよ! ね?」
ユイさまに送られてきたまんがの一部を見て驚いた。
前後でどうなっているかは知らないが。
男性が女性に抱かせろと言っていた。
ニポンの男の人っていつもそうらしい。
だが、ヴェルゲルガルドの生まれである私にはあのような欲望を曝け出す姿は……!
「も、もし、レオが抵抗あるなら、私が言いやすいだろうから、私に言ってくれれば、私はいつでも……な、なーんてね、どきどきした?」
そう言ってユイさまは悪戯っぽく笑う。
そして、私の近くまでやってきて。
「レオを一番どきどきさせるのは私だから。絶対に、おぼえておい、きゃああああ!」
ぎこちない動きで私に触れようとしたユイさまが転びそうになる。
ユイさまに怪我は絶対にさせない!
私は、ユイさまを抱きかかえつつ、鞄から飛び出した物達を全て回収し、鞄に戻す。
「ユイさま、大丈夫ですか?」
私の腕の中で真っ赤になったユイさまを見つめると、ユイさまは私を見上げ、
「なーんちゃって、作戦作戦。えへへ、どきどきしたかな?」
ユイさまがそう言って照れ笑いを浮かべると、
『嘘である。この女、ドキドキさせるラブコメ大作戦は大量に考えていたが、こういうハプニングにはめっぽう弱いのである』
「こら! 超賢者ちゃん! もお~」
『いっけね、おこらせちった。にっげろ~』
慌てて私の腕から離れたユイさまが超賢者様を追っていく。
私は手の中に残るあたたかさを感じながら自分の胸に手を当てる。
鼓動が早い。
「なぜだ……」
原因なんてもう分かり切っている。
なぜか、ユイさまの鞄の中に私の大量の写真があったからだ。
中には私の上半身裸の写真があったような気がするし、血塗れだったような気がするし、一番色あせていた様な気がするし、でも、スペアもあったような気がする。
いや、きっと全部気のせいだ。
私は笑ってユイさま達を追って学校に向かった。
「という朝だったよ。あっはっはっは」
「……」
おや、ごぶりんがサカバンバスピスみたいなかおをしている。最近おぼえた。
かわいいよな、サカバンバスピス。
さかばんばすぴすごぶりんが無言で席を立った。
そして、教室を出て駆け出して行った!
どうした、ごぶりん!
そう思っていると、
「今日も朝からとらぶってんじゃねえよおおおおお!」
チャイムと同時にごぶりんのいつもの叫びが聞こえた。
うん、今日も平和だ。学校は!
さあ、頑張ろう!
「出番だやったぁあああああああああああ!」
おめでとう!
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