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ニポン34歩目 なでなでされた! 代わりに!

「なでなで……なでなで……」


今、私はなでなでされている!

ノリオ様の母上様に!


あのあと、オーク部長は、社長と、恐らく社長の直属の部下の方に連れていかれた。


『あば! 彼の処分はこちらで任せてもらおう。なあに、君達にとって出来る限り、あば!いい形にしてみせるあば』


さぶ賢者様のあばが多めだった。

そして、解散となったのだが、そのあと、何故か祝杯が始まり、母上様が皆から感謝と平手打ちを讃える声が続いて、母上様も断り切れず、だが、姉さんたちが心配でどんどんと飲み干していった。

そして、最終的に酔いつぶれてしまい、たくしーに。


とろんとした目の母上様は、私の隣で。


「ねえ、ノリオ……なでなでしていい?」


と、聞いてきて、今に至っている。とてもなでなでされている!

たくしーの女性の御者も。


「若い彼氏さんですねー、羨ましー!」


などと言ってきた。


「いえ、息子なんです」

「あらー、素敵な息子さん」

「うふふ、そうですよ。ウチのノリオは、素敵なんです」


母上様は手を頬に当てて嬉しそうに微笑んでいる。

ノリオ様ぁああ! レオンハルトはやりましたよ! ノリオ様の母上様に……。

だが、なんだろうか。

このちりと胸を焦がす気持ちは。

いや、きっと気のせいだ! 何を考えている愚かなレオンハルト!


「え!? じゃあ、お母さん!? 凄い若くて綺麗なお母さんですねー」

「はい! 母はすごく若くて綺麗で素敵なんです!」

「!!!!!!!!」


母上様が手を頬に当て微笑のまま固まってしまった。

最近、多い。

まさか! この辺りに、メデューサ先生が!?

辺りを見回しても、いない……!

く! 未熟で、愚かなレオンハルトォオオ!

まさか、メデューサ先生が、たくしーと同じ速度で走り、なおかつ気配を消せるとは!


だが、今は母の心配を!


「母さん! 大丈夫、母さん!?」

「うふふ、だ、だいじょうぶよ。だいじょうぶ……お母さんはいつだって、だいじょーぶよ。おかあさんだもの。ほ、ほら、なでなでなでなで!」


母のなでなでの速度が上がった!


「あは、あははは……仲良い親子さんですねー」


たくしーの御者殿! これがニポンの仲良い親子の形なんですか!?

ならよかったです!


そして、こんびにに寄りたいという母の提案で、近くのこんびにで降り、たくしーの御者殿にお金を払い、こんびにでぽかりを買い、家へと向かう。


その間ずっと。


「なでなで……なでなで……」


なでなでされていた。

ニポンの親子は不思議だ!


だが、なんだろうか……。

とても、幸せな気分だ。


ヴェルゲルガルドで孤児として、生まれ、必死に食べる為に生き、魔物を殺し続けた私がこんな風に誰かに頭を撫でてもらえるなんて……。


「……!」


いかん、涙が、零れてきた。


「……どうしたの?」

「いや、なんでも、ないよ。おふくろ……!」

「…………」


この涙は、なんの涙なんだろう。

うれし涙は間違いない。

だが、それと同時に。


ああ、


そうだ。


そうなんだ。


悔し涙だ。


悔しいのだ。


私には、ないから。

家族も、恵まれた環境も、穏やかな日々も。

なかったから、羨ましいのだ。


ノリオ様が。


そして、嫉妬しているのだ。

ノリオ様に。


英雄としての賞賛も、愛していた姫からの熱い想いも、恵まれた才能も。

私には、なかった。

代わりに、ニポンに来ても、私はノリオ様の代わり。

穏やかな国ニポンも、楽しい学校も、素晴らしい家族も。

私にあってくれるものではない。


分かっている。


彼女達と本物の家族になりたいと願ってしまっていた。

なれるんじゃないかと思ってしまっていた。

なれるわけがない。異世界の、血のつながらない、何も持たない、嘘吐きが。

こんな素晴らしい人たちの家族になんて。


「う……く……!」


私には、何も、ない。

涙が、こぼれてくる。

涙が


「…………なでなで」


ふと、気付くと、母さんが、頭をやさしく撫でてくれていた。

そして、優しい目で私を見て、言った。


「ねえ、『あなた』のことを、教えて」


そう、言った。『私』を見て。


「あなたは……だれなの?」

次回、第一部最終話!

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