ニポン3歩目 聖女様のお母さまにごアイサツした! 代わりに!
「結ちゃん? 結ちゃんなの?」
「え……?」
地獄河馬よりも強烈な殺気を放つユイ様が振り返ると、一人の女性がこちらを見て目を見開いている。
「おかあさん……」
ユイ様が震えている。
そうか、ユイ様の……一年ぶりの再会なのだな。
ユイ様はお母様の胸の中に飛び込みわんわんと泣いた。
お母様もユイ様を抱きしめながら泣いていた。
「ごめんなさいね、みっともないところを」
「いえ、ユイ様と長い間離れ離れにさせてしまい申し訳ありませんでした」
「ユイ、様……? あの、結? この、イケメンは」
『記憶抹消まほー』
「あばばばばばばば!」
ああ! ユイ様のお母様が超賢者様に何かされている!
「まあ、仕方ないね。レオンハルトさんの為には必要な犠牲だよ」
ユイ様がうんうん頷きながら何かをおっしゃっている。
いや、ユイ様のお母さま白目剥いてますが!?
「っていうか、レオンハルトさん! 私のことはユイって呼んで!」
いや、ユイ様のお母様白目剥いてますが!?
とはいえ、ユイ様はお母様なら大丈夫と言わんばかりに私を凝視。
にげられない!
「す、すみません! ユイ」
「はう!」
『おい、ばかっぷる~。もういいか~』
ばかっぷる? 新しい言葉だ。あとで超賢者様に教えてもらおう。
スライムのようにぷるぷるしているお母様を放置して超賢者様がこちらにやってくる。
『レオンハルト、今から貴方はノリオとしてこの日本で生きていきます。ただ、中身を変えるとユイが激おこなので、外見とあと、色々幻覚魔法とか催眠魔法でばれないように細工しておきま~す☆ と、これからは、愛称でレオと呼びます。ノリオのクソアホがかっこつけてそう呼べと方々に言っていたらしいのが逆に助かりましたね。では、レオいいですね。 え~い、へんし~ん☆』
超賢者様の電撃が私を包み込む!
「あばばばばばばば! ……って、いったい何が?」
「……はぅ……しゅき……じゃなくて! こほん、レオ、あっち見て」
ユイ様が、指さした先には建物がそして、そこにある高そうな透明なガラスに映った私は……黒髪で、黒い瞳の男になっていた。
『まあ、あんまり見た目変え過ぎちゃうと、ユイがしょんぼりしちゃうので、この程度で。あとは、幻覚魔法と催眠魔法でなんとかしま~す☆ じゃあ、ユイのお母様めざめま~す☆』
超賢者様の再びの電撃。それが収まると何事もなかったかのようにユイ様のお母様が立ち上がる。
何かこれ、見たことが……う! 頭が!
「ユイ、この人は……?」
「も~何言ってるのお母さん! ノリオ君だよ! ノリオ君!」
「え……? ノリオ君? ノリオ君じゃないの! 久しぶりね」
お母様の瞳が狂戦士ばりに真っ黒な瞳でこちらを見ているのだが大丈夫なのですか!?
「やっぱり一緒に行方不明になってたのね。……でも、なんか筋肉ついてない?」
「一年もあればねえ~」
ユイ様が、それがどうしたの? という顔でやりすごしていらっしゃる。
流石ユイ様!
「ん~?」
ユイ様のお母様がこちらに近づいて見つめてくる。
が、突然。
「あば! ……ノリオ君も、無事だったようでよかったわ」
急に、何事もなかったかのように理解を示す。
何だ今の? 魔法?
「ひとまず、これからいろいろと大変よ。一年もあなた達行方不明だったんだから」
それからは本当に大変だった。
ケーサツやら、ビョーインやらで色々と聞かれたり調べられたりした。
だが、大体、急に『あば!』と言って素直に受け入れてくれたのでよかった。
何故そうなるのかは深く考えないがよかった!
けれど、一番大変だったのは、
「ノリオ……! ノリオ!」
私に抱きついてくる女性。
長く艶やかな髪を一本に纏め、聖母を思わせるような包容力の塊のようなこの方が、ノリオ様のお母様だった。
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