ニポン31歩目 カイシャに行った! 代わりに!
拝啓、ノリオ様、お元気でしょうか。私は今、戦場に来ております。
「ノリオくん! これを十部コピーしてくれる!?」
「かしこまりました! この命に代えても!」
「ノリオくん! ごめん! お茶入れてもらってもいい!?」
「かしこまりました! この命に代えても!」
「ノリオくん! お得意様が来られるから一緒にお迎えしてもらっていい?」
「かしこまりました! この命に代えても!」
スーツという名の鎧を着こみ、今、私は戦い抜いております!
さらりーまんなるジョブで!
「いや、なんでぇえ!?」
ノリオ様の母上様が珍しくつっこみをされた。
それは今朝の事だった。
「レオお兄ちゃん、ちゃんとシャワー浴びた。はい、匂いチェックするから、こっち来て」
「おい、レオ、姉ちゃんが頭拭いてやるから。頭だしな」
最近では恒例となったリオナの抱きつきと、ミオリ姉さんの頭拭きを受けながら私は無の境地を目指す。残念ながら、私も男だ。お二人の柔らかい感触に悪魔の囁きが。
ぬわああああああああああああ!
瞑想! 瞑想! 瞑想ぅううううううう!
なんとか、己の心を落ち着かせていると、母上様がやってくる。
「おはよう、うふふ、今日も三人とも仲良くて何よりだわ」
お化粧もばっちりすませ、スーツ姿に着替えた母上様が。
「あら、今日もノリオが朝ごはん作ってくれたの? 無理しなくていいのに」
「いや、大丈夫だよ。俺にはおふくろの為にはこんな事しか出来ないからね」
母上様は、三人の子どもを育てるために、毎日お仕事を頑張って下さっている立派な方だ。それでいて、しっかりとしてらっしゃって、笑顔を絶やさず、尊敬している。なので、私に出来る事はやっておきたい。
そう思っていると、
「そうよ、わたしがレオお兄ちゃんの朝ごはん作ってあげるって言うのに、レオお兄ちゃんったら『リオナが美味しそうに食べてくれるのを見るのが好きなんだって』……まったくもう、まったくもぉおおおおお!」
リオナが私の胸をぽかぽか殴ってくる。
そう、私はリオナに作らなくていいと言った。
リオナが食べている時の表情が可愛らしいから。それは勿論ある。それと、
リオナは超絶料理がヘタなのだ。
驚いた。
魔の者の妖しい儀式で使っていた紫のナニカが鍋で煮込まれていた。
さぶ賢者様による状態回復魔法多重掛けでなんとか耐えきれるほどの強烈な状態異常魔法だった。
徐々にうまくなっていけばいい。
「あたしも、言われたなあ。『今は、姉さんの料理を僕が独り占めしたい』って、レオ、あんたもう、ほんとにもう、ほんとにもぉおおおおお!」
ミオリ姉さんもヘタだった。
驚いた。
初めて食べた時、気絶した。
騎士団の男達が作った無茶苦茶な料理も耐え、毒見役なども経験した私が気絶したのだ。
それは、真っ黒な深い闇だった。
それ以上は何も分からない。
だが、実は乙女の心を持つ姉さんにはそれは言えない。
なので、私が食べて練習台になっている。最近は味がしてきた。
「あらあら、レオは二人のこと大好きなのね」
「はい!」
「「だっ……!」」
勿論だ。お二人はノリオ様のご姉妹であるのは当然だが、最近では本当にお二人の素晴らしさや優しさを実感している!
おや、私の両側から凄い熱が!
「お、お二人大丈夫ですか!?」
「大丈夫だからあ! 顔見たら怒るから!」
「あ、あたしも大丈夫! らいじょーぶ!」
大丈夫であるならば信じるしかない! 私は二人を信じる!
母上様が頬に手を添えて穏やかに笑っていらっしゃる。
「うふふ、これからも二人のこと大好きでいてね!」
「はい! 勿論、おふくろのことも大好きだからね!」
「……ん?」
母上様が頬に手を添え微笑んでいた顔が止まる。
「俺、おふくろのことも尊敬してるから」
「う、うふふ……ありがとね。こんなダメ母のことを」
「おふくろは駄目じゃないよ! 仕事も出来て優しくて自慢のお母さんだよ!」
「そ、そんなことないわ」
「そんなことあるよ! 凄く美人で一緒に週末買い出し行ってる時は、みんな振り返るほどで本当に一輪の美しい百合を思わせるような美しさだし、部屋にこーひーを持っていた時にぱそこんに向かって何かをしている時の姿は出来る女って感じで物凄くかっこよくて見惚れたし、どんなに疲れていてもにこにこしてくれていて、それだけで元気が出るしお母さんの為に何かしてあげたいと思う位なんだよ!」
私は出来るだけ私の心を内をお伝えする! まだ十分の一もないが!
「~~~~~~!」
「あれ? おふくろ?」
動きが止まってしまっていた母上様は頬に手を添えたまま顔を真っ赤にして倒れてしまった。
「おふくろ! おふくろーーーー!」
「出た、レオお兄ちゃんの【必殺、褒め殺し】」
「お母さんまで嬉死にしちゃった」
リオナとミオリ姉さんが何か言っているがそれどころではない!
母上様はお仕事に出ようとしていたのに私のせいで!
そうだ!
「リオナ、ミオリ姉さん! 俺、会社に行って来ます!」
「「え? ええええええええええ!?」」
というわけで、急遽だが超賢者様の御力でなんとかすーつを準備した私は母上様を連れて出社した。
「えー、あば! 今日だけ我が社に入社した鈴木さんの息子さんの」
「ノリオです! 一生懸命母の分も働きますのでよろしくお願いします!」
「「「「「「あばばばばばばばば!」」」」」」
超賢者様にあばしてもらい皆にあばられて頂きながら拍手で迎え入れて頂いた!
母上様に無理ない程度にお仕事していただき、私がその分をフォローする!
完璧な作戦だ!
ようし、がんばるぞ!
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