ニポン30歩目 勝気姉と弟をがんばる! 代わりに!
日間コメディランキングまた10位内に入れて、テンションあがってかいちゃったぜ……。
「ねえ、レオお兄ちゃんとミオリお姉ちゃんは何しているのかな?」
「え? 見て分かんないの、リオナ。レオにメイクしてもらってるの」
「そうなんだ! リオナ!」
リオナがじっと私とミオリ姉さんのやりとりを見ている。
「なんで、ミオリお姉ちゃんが?」
「だって、あたしさ……今までメイクとか誰にも教わってなかったからさ。そろそろいい大人だし、勉強しようかなーって」
「ミオリ姉さんはメイクしなくても美人だけどね」
「うっせ……」
ぽかりと殴られる。いたくはない。
「それよりメイク、お願い」
「分かった! 任せて!」
改めて、ミオリ姉さんの顔を見てメイクを再開させる。
メイク道具はユイさまが貸してくれた。
体調が良くなったようで良かった。
姉さんを助けたあの日。
帰り道でユイさまが家から飛び出してきた。
まるで、何か魔法で私が来ることが分かっているかのように。
だが、次の瞬間私の姿を見て驚く。
『レオ! オ、お、お姫様だっこぉおおおおおおおお!?』
『ちょっと、ユイちゃん。鼻血、大丈夫!?』
『だ、だ、だいじょうぶだあ……レオのお姫様抱っこ。だが、何故わたしは……わたしはぁああああ!』
ユイさまが血の涙と鼻血を流して倒れられた。
そして、きゅうきゅうしゃで病院に運ばれていった。
翌日、ユイさまは帰って来られた。レバーを口いっぱいに頬張りながら。
そして、
『レオ、あの、よければ、わたしもいっかいおひめさまだっこを……』
『はい!』
『はいぃいいいいいい! はぴぃいいいいいいい!』
そして、お姫様抱っこのまま私が病院に運んでいった。
超賢者様曰く、
『救急車は悪戯に呼ぶものではありません。然るべき人が乗るために呼ぶべきかどうか考えましょう』
と、言われた。
なので、私が運んだ。赤い線を引きながら。
そして、先日退院された。
そんなユイさまに借りたメイク道具でミオリ姉さんをメイクする。
ミオリ姉さんはじっと私の顔を見ている。
「な、なに? 姉さん? 俺の顔、じっと見て」
「は、はあ!? 見てねーし! じゃなくて、その、あたし、綺麗?」
「勿論、綺麗だよ!」
「えへへへ」
姉さんは本当に綺麗だと思う。顔も勿論だが、メイクをしている時の背筋の伸びとかメイクをしやすいように顔を調整してくれるところとか心が美しい!
「ミオリ姉ちゃん……口裂け女みたいだよ?」
リオナ様がじとーっとミオリ姉さんを見ながらそんな事を言う。
口裂け女!? なんだかとても恐ろしいモンスターのようですが!
「え? な、なんで?」
「その『わたし、きれい?』もう今日10回近く言ってるよ。メイク中ずっと言ってる」
なるほど、わたし、綺麗というのが口裂け女の呪文か何かなんだろう。
確かに、今日の姉さんは何回も聞いてくる。
最初は不安そうに聞いてきたのだが、それ以降はほぼ目が合う度に聞いている!
でも、その度に笑ってくれるので、言いたくなってしまう!
「でも、本当に姉さんは綺麗だから!」
「ば、ばか! そんな大きな声でいうな!」
ぽかりと殴られる。
「……仲良いね?」
「「いいや、全然」」
ほらな、やっぱりだ。
初めて会った時、ノリオ様とする強烈なパンチによるスキンシップはアレ以来やって下さらない。ということは、私はまだミオリ様に信用されていないのだ!
もっと頑張らねば!
「……これで、よし。出来たよ、姉さん。とっても美人だ」
「へ、へへ……じゃあ、行こっか」
「分かった!」
「え? どっか行くの?」
私とミオリ姉さんが立ち上がると、リオナが慌てて聞いてくる。
「ああ、メイクのお礼にミオリ姉さんが素敵なお店ですいーつを奢ってくれるらしいんだ」
「へ、へー、仲良いね」
「「いいや、まだまだ」」
私はミオリ姉さんからヘルメットを受け取り、ばいくの後ろにのせてもらう。
もっともっと仲良くならねば! がんばるぞ!
「……」
リオナが微笑のまま小さく首をかしげている。
なんだ!? 何かおかしいのか!?
「や、やあ! レオ! ぐ、偶然だねー!」
「マジ天文学的な数字の偶然―」
私達が、かふぇーですいーつをもぐもぐ食べていると、ユイさまがやってきた。
先程、メイク道具を返しに行って、
『レ、レオ? ミオリさんのバイクで二人乗りするの?』
『はい! 姉さんが乗せてくれると! 馬の様で楽しいです!』
『そ、そー。どこか行くの?』
『はい! すいーつをたべに!』
『ふ、ふーん』
と言ってお別れしたばかりだったのだが。
それより気になるのが、ユイさまのお腹がとても膨らんでいる。もぐもぐ。
「ユイちゃん、どうしたの? そのおなか……だいじょうぶ? あーん?」
「あはははは! あのなんだか二人のスイーツの話を聞いて、スイーツ巡りしたいねって、超賢者ちゃ……じゃなくて、超子ちゃんと話をして、巡ってたんだー」
ユイさまは笑っているが脂汗がすごいし、顔が青くてちょっと震えているように見える。
もぐもぐ。
「いや、あたしたらと別れてそんな時間たってないのに、もうそんななるまで巡ったの? あーん?」
「マジ8件目―。当分糖分十分~」
超賢者様のお腹は膨らんでいない。というか、食べたのだろうか? もぐもぐ。
「そ、それより、さっきから……」
「ん? どしたの? あーん?」
ユイさまが指さす先には、私の口に運ばれていくミオリ姉さんがもったパフェスプーンが。
もぐもぐ。
「なんで、『あーん』してるの?」
「え? 弟を甘やかしてるだけだけど? あーん?」
「もぐもぐ」
ミオリ姉さんはあの事件以来、やたら私にあーんをしてくるようになった。
ミオリ姉さん曰く『多分姉は弟にこういうことをする』らしい。もぐもぐ。
正直に話してくれたのだが、ミオリ姉さんは弟を甘やかすにはどう振舞っていいか分からないらしく、私は姉さんの好きなようにと話した結果、こうなった。もぐもぐ。
「おいしい? レオ?」
「おいしいよ、姉さん! ありがとう!」
「えへへ」
姉さんが笑ってくれている。ならば、私はいくらでも食べよう!
三杯目のパフェだが食べよう! あとで動けばぜろかろりーだ!
「へ、へー、仲良いね?」
「「いや、まだまだ」」
「……」
ユイさまが微笑のまま小さく首をかしげている。
なんだ!? 私のパフェの食べ方おかしいですか!?
「レオ! この動きどう!?」
「うん、大分いいよ! 姉さん!」
そのあと身体を動かそうという事で、姉さんに連れられて獅子王大学の空手部の稽古にお邪魔させていただいた。
一度、正拳突きを見せたら、
『お、音を置き去りに……』
と、コーチに言われ、参加を認めて下さった。
そして、姉さんの稽古に付き合ってる。
「あのー、ミオリ? この子、本当にノリオ君?」
「空手道場の胸見鳥のノリオ?」
「えろお?」
ミオリ姉さんと仲良しの友人三人が私を見て驚いている。
「そうだよ、コイツはね! あたしの弟、ノリオだよ」
姉さんがそう言ってくれる。それだけで嬉しい。
「そ、そうなんだ……」
「顔は、似てる……かも……」
「でも、ほりの深さも違うし、外国人っぽくない?」
ぎく。やはりミオリ姉さんのご友人。
私がヴェルゲルガルドの人間だと……!
「ちょっとやめてよ、あたしの弟いじめたらおこるよ」
「ご、ごめんごめん。そういうつもりじゃなくて、その、かっこよくなったなーって」
「でしょ! ウチの弟はかっこいい!」
そう言って笑うと姉さんは私に微笑みかけてくれる。
「しゃあ! レオ! 指導ヨロシク!」
「でも、姉さんもうほとんど直すところないよ」
「そんなことないでしょ! レオの正拳突きみたいなの、あたし出来ないんだけど」
「いや、あれは……」
「いーから、おしえろー!」
姉さんが私の頭を抱きかかえて締め付けてくる。
姉弟のようでうれしいが、胸が当たって困る!
「「「……」」」
「わかった! わかったから! 教えるから、姉さん!」
「わかればよろしい。じゃあ、どうやんの? ちょっと動かしてみて」
「えーとね」
私はいつも通り、姉さんの腕や腰を持ちながら体重移動や身体の動かし方を説明する。
これも以前家で稽古している時に、
『わからん。身体動かして』
と言われて、そうするようにしている。
「「「な、仲良いね」」」
「いいや、まだまだ」
ご友人たちが微笑のまま首を小さく傾げていた。
なんだ!? 何か、私の教えた身体の動かし方に問題が!?
分からぬ! くそう! 未熟だぞ! 愚かなレオンハルトォオオオ!
夜になりリオナとのらいんのやりとりを終える。
「終わった?」
「うん、終わったよ。姉さん」
「よし、じゃあ、姉さんが、レオが寝るまで、レオが撫でてくれた分以上に頭を撫でてやるからな」
「わかったよ。姉さん」
正直、眠りづらい。
だが、恐らく姉さんはノリオ様と比べて私が臆病であることをしっているのであろう。早く姉さんが安心して、そして、信頼できる弟になれるよう頑張らねば!
「おやすみ、レオ」
「おやすみ、姉さん」
「「「「「いや、まだまだってこれ以上仲良くなったらどうなってしまうんじゃぁあああああああああい!」」」」」
どこからか声が聞こえた気がする。
だが、今は無心にならねば……ちょっと撫ですぎて頭があったかくなってきたので、ミオリ姉さんに気付かれぬよう、温度を下げる魔法を行使する。
明日からももっともっと弟をがんばるぞ!
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