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ニポン29歩目 姉をお姫様抱っこした! 代わりに!

じかんがががががが。

「ちょっと! なんで? なんで、お姫様抱っこなのよお!」


腕の上に乗っているミオリ様が暴れている。正直、この体勢は難しいのであまり暴れないで欲しいのだが……。というか、お姫様抱っこというより、拉致して寝床へ連れて行こうとする抱っこに私には見えて恥ずかしいのですが!


「ちょっと! 暴れないで、ね、ミオリさん!」

「ふぎゅう! ミ、ミオリって呼ぶな……!」


まだ酒が残っているのか赤くなった顔をぷいと背けるミオリ様。

だが、私の胸が臭かったのか、慌てて逆方向にぐるんと180度回転する。

すみません! そして、暴れないでください!


「でも、姉さんって呼ぶなって」

「今、誰もいないだろ。今は、その、下の名前は逆にやめろ」


逆とは?

だが、ミオリ様に逆らうつもりはない。


「姉さん、暴れないで。それに、この形がいいって言ったのは姉さんだよ」

「はあ!?」

「姉さんが……」


私は、こうなった経緯をミオリ様に説明し始める。

それは……全員を見送って、ミオリ様を連れて帰ろうとした時だった。





「起きませんね、さぶ賢者様」

『酒や薬は状態異常回復で治っているはずなので、寝ているだけですね』

「やはり……」

『やはり?』

「いえ、ミオリさん、ミオリさん?」


私が声を掛けると、ミオリ様は薄く目を開けて……。


「なにぃ?」


寝ぼけているようで、家で私に見せないような無防備な表情でこちらを見ている。


「ミ、ミオリさん、もう帰りましょう」

「わかったぁ~。ん」


ミオリさんが両手を私に差し出す。リオナと同じくミオリさんも背負って欲しいのだろうかと背を向けるとぼか、と背中を殴られた。痛くはない。


「ちがう」

「え?」

「お姫様抱っこがいい」

「ん?」

「お姫様抱っこしろ」

「み?」

「王子様みたいなかっこいいツラしやがって」

「お?」

「その筋肉なら出来るでしょ」

「き?」

「めちゃくちゃやさしいししてよ」

「や?」

「はい、お姫様抱っこ」


そう言ってミオリ様は頑として動かず、私はさぶ賢者様に調べて教えて頂いたお姫様抱っこで連れて帰ることになったのだ。

ミオリ様は抱えると満足して寝てしまうし、道行く人からは、囃し立てられたりするし、なかなかに恥ずかしいものがあった!



と、そこまでの経緯を話すと、ミオリ様はうっすらと覚えていた様で顔を真っ赤にして、


「いやああああああああああああああああああ……!」


いつも冷静で物静かなイメージのミオリ様が悶えている。


「あ、そ、そういえば……夢かと……ご、ごめん! まさか、私が……!」

「大丈夫、まだ、酔いが残っていたし寝ぼけてたんでしょ?」

「あ……そ、そう、その、酔ってたし、寝ぼけてたし」

「姉さん、最近寝られていなかったんでしょ?」

「え?」


ミオリ様が背けていた顔を私に向ける。


「俺のことがまだ怖いんだよね? それはそうだよね、1年も行方不明になっていた人間がふらっと帰ってきたなんて」


しかも、申し訳ない事に。代わりの未熟な人間が帰ってくるなんて。

ああ! 私がもっと優秀であれば! 愚かなレオンハルトオオオ!

もっと頑張って、認められねば、という気持ちもある。だが、それと同時に、


「もし、本当に姉さんがこわいなら、俺、出ていくよ」

「え?」


これはノリオ様を裏切る行為かもしれない。

だけど、


「姉さんが辛いなら、私はいやなんです」


私は、この家族が好きだ。

リオナは、家族に心配かけまいと気配りが良く出来るし、一生懸命勉強している。

お母様は、いつもお仕事を頑張って下さっているし、子どもたちの事を気に掛けてくれている。

ミオリ様もさりげなく、リオナやお母様をフォローして、支えていらっしゃる。


本当に素晴らしい家族。

だからこそ、彼女達の顔が曇るようなことはしたくない。

それが、ノリオ様の命に逆らう事になったとしても。


「だから、遠慮なく言ってください」


私があの家から離れることになったとしても。

寂しいが、それでも、私は彼女達の幸せが一番なのだ。

すると、


「いや、じゃない」


ぼそりとそうミオリ様は呟いて。


「寝れなかったのは、本当。正直、戸惑っているのも本当。あんたが、変わっちゃって。頭が混乱してる。あたしは、リオナや母さんと違って馬鹿だから。いろんなことをいっぱい考えられない。だから……でもね、あんたが良いヤツだってことは分かってる」


私の目を見てそう言って下さった。


「だから、少しずつ仲良くなっていこう? 少しずつ」

「……はい!」

「ふふ、仲良くなったら大変かもよ。あたし、こ、こんなことさせるくらいだからね」


ミオリ様が少し恥ずかしそうに、でも、からかうようにそう言う。

なので、私は精一杯の笑顔で。


「なんでも言ってみてください。弟ですから」


それを見てミオリ様は優しく微笑んで頷く。


「ふふふ……う」

「恥ずかしいですが、頭も撫でますし、抱擁も必要であればしてみせます」

「んにゃ?」


ミオリ様が失礼ながらちょっと間抜けな声で目と口を開く。


「ま、ま、ま、待って。え? あたし、お姫様だっこを要求しただけじゃないの?」

「え? はい」

「えええええええええええええええ」

「定期的に、『頭を撫でろ』と」

「いやあああああああああああああああ」


腕を首に回してしがみつくと『頭を撫でないとダメだ』と動かなくなってしまった。

その、ミオリ様の胸が身体に当たって集中できないので、頭を撫でさせていただいた。

それが十数回。


「あ、あとは……?」

「『おろして』と言われ、下ろしたら『ぎゅーっとして』と両手を広げて」

「いやあああああああああああああ」


じたばたと駄々っ子のように暴れておろしてというのでおろして差し上げるとそのまま私の目の前に立ち両手を広げ待ち構えていた。

本当に寝ぼけているのか疑うほどに。


「も、もうないよね……?」

「えー……」

「あるの!?」

「『いっぱい褒めて、甘やかして』と」

「いぎゃあああああああああああああああああ」


とにかく『何か褒めて』と言われ、褒め続けた。褒めるべきところは多いので言うのには困らなかったが、褒める度に嬉しそうに頬ずりをしてくるので、その、照れた。

そもそもこの身体に密着しないとうまく抱きかかえられない『お姫様だっこ』が難しすぎた。

身体を離し過ぎないようくっつくないように絶妙なバランスで運ぼうとしていたのに、ミオリ様が甘えるように抱きついてくるのがとても照れた!


「え? え? あんた、褒めたの?」

「ええ、多分、20回ほど」

「いにゃああああああああ。そんなに?」

「ええ、『おふくろやリオナが困っているとすぐに気づいてあげられるやさしさ』『苦手だけど料理も頑張っている一生懸命な所』『掃除のときの鼻歌がかわいい』『てれびのどらまを見ている時の表情が豊かなのが素敵』『毎朝鍛錬を欠かさない姿や姿勢が美しい』『荒々しい雰囲気はあれど、靴をちゃんと揃えたりしてるし、リオナの靴も直してあげたりするところ』『ぬいぐるみを大切にしている所』『食前食後にしっかりと感謝を伝えている所』……」

「もおおおおおおおおおおおおおおおいいぃいいいいいいいいいいいいいい。ばかあああああああああああああああああ」


ミオリ様が顔を真っ赤にして目を回して眠られてしまった!

馬鹿でしたか!? レオンハルトは馬鹿でしたか!

ああ、愚かなレオンハルトォオオオオオ!

姉さん、おやすみなさぃいいいいいい!


お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


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― 新着の感想 ―
[一言] ざまぁだけど、ざまぁじゃない、どうにもヌルくて、カタルシスに欠ける…だが、それがいい、なんかホコホコします。ノリオ回はいらないくらいだけど、故にノリオはもっとゲスに書いてもいいです。それが醍…
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