ニポン26歩目 姉が飲みに行くのを見送った! 代わりに!
「モテたい!」
「そうか! がんばれ!」
私はごぶりんに精いっぱいの激励を送る。
ユイさまはお父上がタンシンフニンから帰って来たとかで今日は早めに帰られたし、リオナはお友達と遊ぶ約束があるらしく二人で帰っていた。
ごぶりんがずっと女性を見ていた。分け隔てなく誰もを見る点だけは好感がもてる。
「お、おい! ノリオ! あのお姉さま四人組めっちゃいけてね? 特にちょっと赤みがかった髪のお姉さま。めっちゃ背が高くてスレンダーなモデル体型だし、凛々しくて、ちょっときつそうな感じがたまらん!」
姉だった。
ノリオ様のお姉さまであるミオリ様が女性3人と一緒に歩いてらっしゃる。
だが、やはり、流石、ノリオ様のお姉さま、道行く男性が皆振り返っている。
本当にお美しい。リオナはかわいらしいが、ミオリ様は美しいという表現がよく似合う。
そう思っていると、ミオリ様もこちらの視線に気づいたようであっという顔をすると、こちらに早歩きでやってくる。
「やべええ! こっちくるんですけど! 逆ナンの準備なんてしてねえよお!」
ギャクナン? ナンの民の逆か? 逆は、コウ一族?
そう思ってるとミオリ様が私の傍まで来てしまっていた。
「ノリオ」
「やあ、ね……!」
ミオリ様に思いきり口をふさがれる。
「外で姉弟だって話はしないでくれるかなあ……!」
「(こくこく)」
「ったく……」
ミオリ様はいまだに外で姉と呼ばれるのを嫌がる。
やはり、私が未熟だからであろう!
色々と家事やお手伝い、日々の挨拶など頑張ってはいるつもりだが、まだまだなんだろう!
「ねえ、ミオリ。その子だれ~?」
「もしかして、親戚の子?」
「あ、弟のノリオだったりして」
ぎく! す、鋭い!
ミオリ様の友人らしき方たちがついてこられたが、流石ノリオ様のお姉さまのご友人様!
「あははははは! そんなわけないじゃん! あの空手道場に胸を借りにじゃなくてただ胸を見にきていたノリオなわけないでしょ! ねえ、ミオリ」
「あははは……あー、うん、そーかも。うんうん」
ミオリ様が曖昧な笑顔を浮かべたのを気にせずに、ご友人がみな一斉に笑っている。だが、とても仲が良さそうだ。しかも、ノリオ様とも面識がありそうだが……。
「ミオリさん」
「ふぎゅ!? な、なに!?」
姉とバレてはいけないので、名前を呼んだのだがまずかったのだろうか? ものすごく驚かれた。
「この方たちは……?」
「あ、あ、この子たちはね……」
「はいはーい、ミオリとは小学校からの付き合いで、同じ空手道場に通ってて、そのまま大学まで同じな腐れ縁四人組でーす。よろしくね、かっこいいお兄さん」
ショートカットの女性がそう言うと、皆さんどっと笑う。
なるほど、小学生からのご友人だったのですね。
それで、大学まで同じとは本当に仲が良いのだろう。それぞれの纏う空気も優しくて素敵だ。
「ところで、ミオリ。この人は誰?」
「あー、えーと、親戚、かな? うん、だいぶ遠いところにいたからみんな会ったことないだろうけど」
「そうです! 親戚です! よろしくお願いします! 年下です!」
私がミオリ様に恥をかかせぬよう出来る限りの誠意をもって挨拶をさせていただくと、お友達は目を丸くされる。
「え、すっごいいい声だし、姿勢いいし、体つきも……ねえ、ミオリ、この子、今フリー?」
ふりー?
「はあ!? だ、ダメだって! コイツは!」
「あー、なんだ。ミオリ狙ってんのかー。じゃあ、諦めるか」
「そうね、流石にミオリに勝てる気はしないわ。一年からミスキャンとってる女王だもんね」
「しあわせになれよお!」
「ち、ちが! そういうんじゃなくて!」
ミオリ様がご友人に囲まれて顔を赤くしてらっしゃる。
私と目が合うと更に真赤にして。
「こっち見んな!」
おこられた。
「し、失礼しました! それより、ミオリさん」
「ふぎゅ! な、なによ!」
「今日はお出かけですか?」
「あー、そうなのよー。今日はね、他の大学の格闘技サークルのバンバンバンディッツってとこと合同飲み会でねー。でも、安心して。ミオリは格闘技にしか興味ないから。今回も、格闘技のアドバイスが聞けるかもって話できてるだけだから、ね?」
「そ、そうだけど! そうじゃないっていうか! も、もう行こう! あいつがいたらめんどくさいから! じゃ、じゃあね!」
真赤なミオリ様がお友達を連れて去っていく。仲が良いな。
私もああいう友を得たいものだ。
「うへへへ、あー、お姉さんたち、大丈夫ですよー。ごぶりんちゃんは逃げませんからー。ハーレムでもなんでもどんとこいですからー、えへへへへ」
こういう友はもういらない。
一人で十分だ。
「しかし、格闘技のサークル、バンバンバンディッツか……興味はあったが、流石に……」
「バンバンバンディッツ!? 今、ノリオ、バンバンバンバンディッツって言ったか!?」
急に、ごぶりんが覚醒して私の肩を掴んでくる。
バンが一個多かった。
「おい、バンバンバンディッツって言ったら結構危ないヤリサ●かもしれねーぞ」
「……なに?」
「いや、俺、死ぬほどネットのエッチな噂を集めてるからな知ってるんだよ!」
真剣な目でごぶりんが私に語り掛けてくる。熱意は伝わって来た。色んな熱意が。
「いや、マジでやばいって。格闘技やってるごつい奴らばっかなんだけど、なんかスケベなにおいがすんだよ。表立ってはないけど、絶対ヤリサ●だぞ、ヤリサ●」
ごぶりんの言うことが本当ならば……こうしている場合ではないな。
私はあわてて駆けだす。
「おい! ノリオ! どうするつもりだよ!」
「私に考えがある!」
ごぶりんの声を背中で答えながら私は駆けだした。
目的の場所は……ユイさまのおうちだ!
チャイムをならすと、ほぼ瞬間で、ユイさまが現れた。早い。まるで気配を察知していたような。奥でお父様らしき方が倒れているが大丈夫なのだろうか?
「どどどうしたの!? レオ!」
「ユイさま、お願いがあります!」
「なに!? まずはもっと恋人編を楽しんでから家庭編に突入したいよわたし!」
ちょっと何言ってるかよくわからなかった。
「そうではなく、化粧品を貸していただけませんか!?」
「……なんで!?」
「じゃあ、格闘技サークルバンバンバンディッツと、獅子王大学空手部の合同飲み会をはじめまーす!」
うおおおおおという男らしい歓声に、女性が苦笑いを浮かべながらも楽しそうにグラスを掲げ、会は始まった。
みんな、店の雰囲気もよいせいか初めから楽しそうに話を始めている。
私は……。
「ねえ、君なんて名前なの?」
「ハルコですー。よろしくお願いしますー」
化粧をして忍び込んでいた。いわゆる潜入捜査だ。
どうしてもヤリサーと聞いてこうやってやってきた。
しかし、なぜだろうか。ユイさまと賢地谷超子様が別のテーブルでこちらを見ている。
「ねえ、超賢者ちゃん。あれって、バレてないの?」
「認識疎外の魔法をレオンハルトにかけてっからー、バレない系~」
「そ、そうなんだ……あわわわ! お、お母さんから電話だ! お父さんが泣いてるって。も、もう帰らなきゃ。でも、認識阻害がかかってるなら、大丈夫かな?」
「説明乙~」
賢地谷さんと、ユイさまが去っていく。
本当に何をしにきたんだろうか。だが、何かは分かりませんがありがとうございました!
ミオリ様は、あまりこういう場が得意ではないようで苦笑いを浮かべながら囲まれた男性の話を聞いている。この場でもやはりミオリ様は一番注目されているように見える。
だが、あまり会話が弾まないせいか、お酒を頻繁に飲んでいらっしゃるようだ。家では呑んでいるところをあまり見たことないが、見たところそこまで酔っているようには見えない。
そして、そのまま何事もないまま、会は終わりに近づいていくように見えた。
だが、
「なんか、眠い……」
「あたしも、なんかだるいかも……」
女性陣が一人、また、一人と眠気を訴え瞼が重そうにしている。ミオリ様もだいぶ眠そうだ。これは……。
「よーし、じゃあ! 最後にクイズでもしようか! 今からクイズを出します! 正解したら豪華景品。不正解したら、出題者の言うことをひとつ聞くことー」
あんな状態で何か聞かれて答えることが出来るのだろうか。
ミオリ様の元にもリーダー格らしい男が近づいていく。
「ミオリちゃ~ん。問題です。日本の県庁所在地を全部答えて~」
「んにゃあ……そんなのぉ、わかんない」
「わかんないの? じゃあ、罰ゲームだね。ミオリちゃんの身体を……」
「おい」
私は、ミオリ様に手を伸ばそうとする男の腕をつかみにらみつける。
「な、なんだ!? この筋肉女! 顔美人で体ゴツ!」
リーダー格が叫んでいる。
認識魔法がとけているようだが、そんなことはどうでもいい。
「お前たち……話が違うぞ」
「あ、あああん? お前だけ酒飲んでなかったのか? 運がいいなあ。だけど、話が違うってなんのことかなあ?」
「全然ヤリサ●じゃないじゃないか……」
「え?」
「お前たちは槍を扱うサークル、槍サーじゃないのかぁあああ!?」
「……ちげえけどぉおおおおおお!?」
……なん、だと!?
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