ニポン2歩目 ニポンの少女を助けた! 代わりに!
……ニポンはすごいところだった!
ジドウシャという馬車とは違う乗り物が、鉄の車が走っている!
物凄い早さだ! 私でも追いつけるかどうか……。
ふと横を見るとユイさまが顔を扇いでいらっしゃる。
私がジドウシャから庇おうとしてしまったせいだ。
筋肉が暑苦しかったのだろう。
「ふう……顔があっついよ」
『堪能しましたか、ユイ』
「超賢者ちゃん、ナイスタイミングでした。あれより遅かったら、血を見ることになったよ。私の鼻から」
『ぎりぎりせーふ』
超賢者様とユイ様が本当に仲がいい!
それにしても、ニポンは本当にヴェルゲルガルドとは全く違っていた。
夜も明るく、星が見えない。
こんなに遅くても、人が多く行きかっている。
「ここが、ニポンなのですね……」
「……おっほん。レオンハルトさん、ようこそ、日本へ」
「……はい!」
『……ワタシのことはユイはアウトオブ眼中ですか。そーですかそーですか』
「そ、そんなことないよ! っていうか、アウトオブ眼中とかよく知ってるね!」
『魔法を使って、この世界の情報とリンクさせました。まだ、途中ではありますが、その内うぃきぺであ並になります』
うぃきぺであになるのか超賢者様は、では、私は……ノリオ様に、なれるよう努力しよう。
ヴェルゲルガルドを救ってくださったノリオ様がいなくて、ニポンの民はさぞかし不安なはず。
微力ながら、私が……。
「ユイさ、ユイ。私がこの世界を必ず守りますから」
『あー……この真っ直ぐ脳筋騎士もやべーなー。ユイ、しっかり手綱を……』
「ひゃ、ひゃい……この(私と貴方の幸せな)世界を守って……」
『ワタシがしっかり手綱を握っておきましょう』
超賢者様が有難い事を言って下さる。超賢者様の知恵とユイさまの聖魔法があれば、私もそれなりには戦えるだろう。
「や、やめてください!」
困っている女性の声が聞こえた。声の先を見ると、帽子を被った小柄な女性が二人の男に絡まれている。
『ふむ、女性が絡まれていますね。どこの世界でもああいった輩はいるのですね』
「そうだね……とりあえず警さ……」
「お二人、ここは私にお任せを。立派にノリオ様の代わりを務めてみせます」
『出たー』
「レ、レオンハルトさん! 日本にはね、警察って言う……」
ユイさまが何かを仰い掛けていたにも関わらず飛び出してしまった。
だが、女性はとても困っている様子。ノリオ様なら……!
「うぇ~い、ねえねえ、これからあっちでウェイウェイしようよ~」
「キミみたいなウェイな身体見てると僕らのウェイがウェイウェイしてきちゃってさ」
ウェイウェイ言っている!
なんだ? 何語だ? そういえば、冒険者達も時折流行り言葉などがあって、みんなでバカ騒ぎしていることがあったな。
そうか、彼らはガラの悪い冒険者か。道理で、汚いマナーで女性を口説き落とそうと思っているわけだ! あんな思い遣り無き態度で女性がついていくわけないのに!
勇敢な冒険者だ! どれだけ冒険するつもりなのだ! 高難易度クエストにもほどがあるぞ!
「ねえ、顔見せてウェイ~」
冒険者の一人が、女性の帽子をとると、
「げ! なんだよ、外れかウェイ~」
「ノーウェイだウェイ~萎える~」
女性の顔を見た途端、宝箱に何も入っていなかったみたいな顔をする冒険者達。
だが、自分たちの厭らしさ満開の気持ち悪い顔を脇に置いといてその発言。
「随分と冒険が好きなようだな」
涙を浮かべる少女の前に立った私の声に驚く冒険者達。
「え……?」
「い、いつの間に!?」
「お前、どこのウェイだよ!?」
「わけわからないことを言うな!」
こっちはニポンに来て間もないのだ。ニポン独特の言葉を使われても困る。
それに、
「女性を傷つけてもいいというのがニポンのマナーな訳ではないだろう?」
私が睨みつけると、冒険者達は一瞬怯むが、彼らのプライドが許さないのか踏みとどまり私に詰め寄ってくる。
「こっちは二人だウェイ! 馬鹿が草生えるウェイ!」
「見せ筋野郎がウェイウェイしてんじゃねえぞ! 草超えて大草原ウェイ!」
なんと……この冒険者達は植物魔法の使い手なのか……!
油断は出来ないな……! ならば、全力だ!
「いくぞ」
「はあ!? ちょま! ウェイウェイ!」
私は拳を引き絞り、全力で踏み込む!
「草を生やせるなら……生やしてみるがいい!」
全力の一撃!
だが、冒険者達は私の踏み込みの振動を敢えて利用して体勢を崩し一撃を躱す!
その動きは、武術の達人。全身を脱力し紙のようにひらりと躱すとは……!
しかも、お前など座っていても余裕ということか地面に座り込んで動かない。
ノリオ様ではないお前などこの状態で十分と言う訳か!
「ならば、このレオンハルトの全魔力を使った奥義をぉおおお!」
『落ち着けまほー』
「あばばばばばば!」
超賢者様!?
超賢者様から電撃を喰らってしまった! 確かに、熱くなり過ぎた。
『ワタシにお任せをさいみ……改心まほー』
「「あばばばばばば!」」
冒険者達が超賢者様の電撃を喰らっている。
私がかすりも出来なかった奴らに流石超賢者様。
『反省しましたか』
「「はい!」」
「これからは草を生やしてCO2削減を目指します」
「これからは緑化運動を頑張って大草原を作ります」
「「失礼します!」」
目が草色になった冒険者達が去っていく。
流石、超賢者様。
「おっと、大丈夫でしたか」
「は、はい……助けてくれてありがとうございました」
少女が帽子を抱えながらこっちを見てお礼を言って下さった。
「いえ、私など奴らに一撃も与えることも出来ず……」
「いえ! その、とっても、かっこよかったです……!」
少女が、頬を赤らめ俯きがちに言って下さるのだが、やはり、私は熱か何かを発しているのだろうか。ユイ様もそうだったが、皆様熱そうだ。
それにしても……あの冒険者達は色メガネをしていたせいかちゃんと見えていなかったのだろうか。素朴な顔立ちではあるが……
「こんなに可愛らしいのに。あの男共は節穴ですね」
「かばっ……!?」
カバ? まさか、ヴェルゲルガルドでも歩く災害と呼ばれた『地獄河馬』が!?
あたりを見回すが、どうやらいないようだ。この少女の気のせいであればよいが……。
「あの! お名前、聞いてもいいですか?」
少女に聞かれた。名前を。
ならば、答えるしかない!
「ノリオです! 私はノリオです!」
そう! ノリオ様の代わりにやってきたのだ、私は! ニポンに!
そういえば、この少女、誰かに似ていると思ったら……。
私がノリオ様に初めて頼まれごとをした時の……。
『ノ、ノリオ様! あそこで少女が冒険者に!』
『う~ん、ヒロインっぽくないからパス。モブ騎士、君が僕の代わりに助けるんだ(キリリ)』
『は! お任せを!』
懐かしいな……そういえば、あの少女はヴェルゲルガルドで元気にやっているんだろうか。
あの時も名を聞かれ名乗ったな。あの時は本名だったが、ノリオ様と名乗る日がくるとはな。
運命とは分からない。
「ノリオさんですね」
「ええ! 覚えておいてください! 私はノリオなのです! かわいらしいお嬢さん!」
「かばっ……!」
地獄河馬どこだぁああああああ!?
いない……? まさか、彼女は探索魔法の使い手……?
と、思ったら少女はいなかった。見れば向こうに駆け出していた。
ということは、
「向こうから地獄河馬が!?」
少女の逃げた反対方向に目を向けると、そこには地獄河馬はいなかった。
が、
「レオンハルト。あまり女の子に簡単にかわいいとか言っちゃダメだと思うなあ、わたしはそう思うなあ」
身体が勝手に震えるほどの迫力でユイ様が笑っていた。
その頃のヴェルゲルガルド。
「ノリオ様、メイヒェル神聖国の女王様がお越しになられました」
「マジ!? いやっほう!」
「ノリオ様……メイヒェル神聖国は、今後のヴェルゲルガルドにおいて最も重要な国です。神という存在は人を纏める力がありますから。そして、慎み深さを美とします。決して下手なことはしないよう」
「も~、そんな嫉妬するなって……お、来られたみたいだ……って、んん?」
「はじめまして。いえ、二度目ですね。あの時はお忍びでしたが。派手な顔がお好きな勇者様。元の世界ニポンに帰られたのではなかったのですね。……ところで、わたくしが敬愛する心優しきレオンハルト様はどこにいらっしゃるのかしら?」
「「え?」」
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