ヴェルゲルガルド3歩目 ツンデレがツンツンに闇堕ちした! 代わって!
「あーっはっはっはっは! 全部! 全部ぶっこわしてあげるわ!」
俺、ノリオは目の前で起きている惨状に震えていた。
【殲滅の魔導士】リエナが魔法で城をぶっ壊している。
「ど、どうしてこうなった……」
俺は少し前の事を思い出していた。
「ノリオ様ぁん! 今日もお仕事おつかれさまです!」
「ああー、プリンちゃん! ありがとう!」
俺は王として働いたあと、新しく雇った大臣のプリンちゃんに全肯定癒しを受けていた。
最近はもうマジで大変だ。
まず、ゴブリン・オーガの連合国が立ち上がった。戦争を仕掛けてくるのは諦めたみたいだけど、そこが出来たせいで一時集まっていた強力な魔族達がいなくなった。
そのせいで、大勢の魔族に怯えて近寄ってくることのなかったモンスターたちが俺の国に来るようになってモンスター退治の日々。
みんなにも手伝って欲しいのに、誰も手伝ってくれない。
いや、みんな俺の嫁だよね!?
でも、いいんだ。俺には新大臣のプリンちゃんがいる。
仕事は頑張ってくれてるし、俺を褒めてくれる。その上、プリンプリンのナイスバディーだ!
それだけでがんばれます! はい!
「ノリオ様、よろしいでしょうか?」
ノックもせずに、ユウナ姫が疲れた顔でやってくる。
こっちも疲れているんだからそういう顔はマジで辞めて欲しい。
「なに? 俺も忙しいから手短にね」
「……はい。では。モンスターの被害が止まりません。軍の指導はどうなっていますか?」
「えー、ちゃんと強化してあげてるのになあ」
前は力を上げ過ぎて失敗したからセーブして強化した。それで大丈夫なはずだけど。
「ある程度の力で強化されているので確かに問題は減りましたが、圧倒的な力で倒せないという事は傷つくという事です。精神的な訓練もせずに放り出された兵士がそれを恐れるものは当然です」
マジかー。なさけねー。
とか、思ってたらユウナ姫がにっこりとこちらを見て。
「ノリオ様も怖がっていたという話を聞きましたが?」
やばい……バレてる。俺のおもらし事件が……。
必死に作った金を流して口封じに回ったのに!
「ま、まあ……そうだね。じゃあ、ちょっと魔法でちょちょいっと精神的なアレを強化する魔法でも考えるよ」
「……分かりました。お願いしますね」
「お、おう! それより、ユウナ。そんな疲れた顔すんなって。笑ってる君の方がかわいいぜ☆」
「……!」
こわあああああああああ!
メッチャ睨まれたんですけど! 前まではこれで『あはぁあん、ノリオしゃまぁ!』ってなってたじゃん!
「ああ、そうそう。軍の代わりに傭兵団を呼べばいいじゃん。とノリオ様が簡単に言ってた件ですが」
うわあ、チクチク攻撃~。
「断られました」
「はあ!? なんで!?」
「ノリオ様が指名した女戦士傭兵団のレイと連絡をとりましたが、今の王国には魅力的な男がいないからいやだ、だそうです」
はぁあああああ!? マジで何言ってんの!?
傭兵団だろ! 働けよ!
「どうせ金をせびってるんでしょ! じゃあ、金作ればいいんでしょ! はいはい! 錬金術! 【金創造】!」
「!!! ノリオ様! 金というのは!」
「いいからさ! これで買って来てよ! その傭兵団! 今のところは俺が全部ぶっとばすからさあ!」
「……分かりました」
ユウナが何か言いたそうにして去っていく。マジで意味分からん~。
めんどくせえ~。
「ノリオ様ぁん♪ プリンも金欲しいな」
「おっけーい! 【金創造】!」
プリンちゃんがおねだりしてくる。かわいい~。
いくらでも出しちゃうよ! 金! 金! 金!
プリンちゃんがご機嫌で俺もご機嫌!
ルンルン気分で出かけた俺はイノリと出会う。
イノリも疲れた顔だ。
「イノリ!」
「あ! ノリオ、見てくれよ。この怪我~」
「大変だね! はい! 回復魔法! じゃ!」
「あ、ノリオ……」
いやあ、回復魔法をかけて颯爽と去っていく俺かっこいい~!
「そうだ!」
俺は、城のてっぺんに上がって拡声魔法で王国全体に呼びかける。
『王国のみんな、ノリオ王だよ! 今日は君達の為に俺がみんなを癒してあげよう! 金もあげるし、植物も成長させてあげるね!』
そう言って、俺は国全体に回復魔法をかけ、錬金術で生み出した金を降らせ、植物成長魔法で畑を緑でいっぱいにしてあげた。
これで俺の悪いおもらしの噂なんてなくなるでしょ!
『じゃあね! 勇者ノリオでした☆』
よし! 好感度もあげたし、次は……。
と、思っていたら背後で爆音が。
裏庭でリエナが氷魔法をぶっぱなしていた。
なんだなんだ!?
俺が慌ててリエナの元へ向かうとリエナは不機嫌そうにこっちを見る。
「や、やあ、リエナ」
「ノリオ、なんかよう?」
「どしたの? そんなツンツンして。可愛い顔がだいなしだぞ☆」
「……別に」
「も、も~そんなツンデレしなくても、デレデレのリエナのほうが俺は」
「誰がデレデレするかあ!」
リエナがそう叫んで、氷の柱を何本も生み出していく。
「えええええ!? なになに!?」
「ノリオ……【魔の者】って知ってる?」
「【魔の者】? なにそれ?」
「あはははは! やっぱりねえ……じゃあ、そんな馬鹿ノリオに教えてあげる。【魔の者】ってのはね、子どもを攫って生贄にして悪魔を呼ぶやつらだったの」
あ、なんか聞いたことあるなあ。
「ノリオがわたしを助けてくれたのも、その【魔の者】のアジトだったんだけどさ」
へー。あれそういう場所だったんだ。リエナがかわいかったから助けただけだったしな。
「あんた、あたしが他のみんなを助けてって言った時『わかってる。俺にまかせとけ』って言ってたよね……でも、あんた何も気にせず魔法でアジトをぶっとばしたって聞いたんだけど」
え?
それ、マ?
「そのせいでけがをした人もいたらしいんだけど」
それマ?
「助けてくれたのは別の、騎士団の人間だったらしいんだけど」
それマ?
「ノリオは何も気にしなくていい、大丈夫だからとか言ってわたしを連れて行ってたけど何も大丈夫じゃなかったみたいなんだけど」
それマ……?
「騎士団にも恩義を感じてたから助けられた人たちも何も言えなかったけど、最近あまりにも目に余るからって、怒ってたよ」
それもマ……?
「ちなみに、その人達、魔の者によってめっちゃ魔力改造されてめっちゃ強いからね」
それマァア!?
「ちなみにちなみに、わたしも今めっちゃ怒ってるからね」
それマァアアアアアアアアアア!?
リエナから黒い魔力噴き出してんですけど!
「リ、リエナ……俺の事、好きだよね……?」
「あんたのことなんてもう! 別に好きでも何でもないんだからァアアアア!」
それマァアアアアアアアアアアアアアア!?
こうして、ツンツン氷結魔女リエナが生まれ、俺は異世界二度目のおもらしをしてしまった。
そして、目覚めた時に聞かされたのは、王城が半壊、しかも、王国がヤバい事になり始めたという話だった。
それ、マ!?
お読みくださりありがとうございます。
また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。
少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。
よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。
今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!
また、作者お気に入り登録も是非!