ニポン20歩目 敗北してしまった! 代わりに!
「えー……というわけで見学者の人です。獅子王学園の生徒ですが興味があるということで特例で迎えております。よろしくお願いします」
「星城ノリオです! よろしくお願いします!」
皆の視線が痛い。
リオナ様が、『絶対に兄妹なのはバレたくない』ということで、偽名を名乗ることになった。
特に思いつかなかったので、さぶ賢者様が提案されたユイさまの家名をお借りすることになった。
ユイさまに許可を取るためらいんをしたのだが、既読がついたものの返事がなかった。
超賢者様とさぶ賢者様がやりとりをしてくださったので大丈夫らしいがユイさまは今、いっぱいレバーを食べているらしい。大丈夫だろうか。
っと、今は自分の心配をせねば。
ノリオ様に近づくためと勉強会に参加したいといったが完全に部外者だ。
しっかりと謝っておくべきだろう。
「本日は、急な参加申し訳ありません! ですが、勉学に励みたい気持ちは誰にも負けません! また、皆様の邪魔にはならぬよう隅で見学しておりますのでお許しください!」
気持ちが伝わるように一生懸命頭を下げる。
「まあ、邪魔しないならいいんじゃない?」
「なんか本気っぽいし」
「っていうか、ちょっとかっこよくない? 背も高くて筋肉あるし」
「ね? すっごい誠実そうだし。ね、リオナ?」
「え? う~ん、どうかな~?」
よかった。おおむね好意的にとらえて下さっているようだ。
何人かはまだ納得できていない顔だが。その一人が手を挙げる。
ん? どこかで見たことがあるような……。
「海部さん」
「何かね、古江君?」
古江!? そうか! エルフ古江の兄弟か!?
似ている!
「彼が参加することに反対はしませんが、彼がこの勉強会についていけるのかが心配です。もし、彼がついていけなくて泣き出したりしたらかわいそうじゃないですか?」
エルフ古江兄弟がそんなことを言ってくる。
試すような目。なるほど、そういうことか……。
「ねえ、えーと、星城君」
エルフ古江兄弟が笑い、教室の前に出てきてボードに問題を書いていく。
数学の問題だ。楽しそうにつらつらと書いているが……。
「じゃあ、これを解いてみようか。これが解ければ、この勉強会に参加してもいいよ」
その言葉に教室がざわつく。
リオナ様も眉をひそめている。
「え? 難しすぎじゃない? 一年はまだ習ってないとこだよね?」
「うん……獅子王学園ではやるような問題じゃないと思う」
「さあ! どうかな……?」
なるほど。
エルフ古江兄だったか……。
「何止まってるんだい? 僕たちの時間を無駄にしないで欲しいんだよね。獅子王学園の生徒が」
私は再びボードを見る。だが……私は歯を食いしばる。
「すまない。分からない」
「あはあ!」
「おのれ! なんと私は無力なんだ!」
何度やっても分からない。答えが出てこない!
エルフ古江兄は私をじっと見て笑っている。
情けない、リオナ様の兄失格だ!
「……」
「やっぱりあの弟が行くような獅子王がくえ……」
「くそう! ここの数字が2であれば……解けたのに!」
「へ?」
何度も確かめ考えてみたのだが分からない!
ここが2であれば解けるのに!
それ以外の解答が見つからないとはなんと愚かなレオンハルトォオオオ!
「……ちょま」
ちょま? 知らない単語だ。妖魔や夢魔の仲間だろうか?
「…………!」
エルフ古江兄がだらだらと汗を流し始める。なんだ!? ちょまにやられているのか?!
「あ、あれ~?」
顔も赤いし、汗がどんどん流れてくる! なんだ!? どこだどこにいる!? ちょま!
いかん! このままでは!
ユイさまがいればなんとかなるのだが……私では……簡単な解呪しか……!
「エルフ古江兄……」
「あ、あ、違うんだ。これは……その、そんな目をするな……」
私が解呪しようとにじり寄るとエルフ古江が後ろに下がる。
なるほど。
どうやら、ちょまは体内に潜る悪魔のようなもののようだ。解呪に怯えているのか。
私は聖の魔力を指先に込めて十字を切る!
これが私にできる最大限の技、聖十字切! 本来は悪魔に対して直接当てて指で切り裂くのだが、エルフ古江兄を傷つけるわけにはいかないので脅し程度にしかならないが。
出来るだけ至近距離で指を振る! 悪魔が恐れるように!
「ちょまーーーーーーーーー!」
またちょまか!? エルフ古江兄が叫んだ! おのれ、ちょま!
だが、叫んだ瞬間、エルフ古江兄は白目をむいて倒れた。
ちょまめ! 逃げ出したのか! おのれ!
「ちょま……ちょまーーーーーーーーー!」
私は己の無力さをかみしめ絶叫した。
ちょまめ……私に気づかれずに逃げ出すとは……かなりのやりて。
ちょまの仕業か、エルフ古江兄もちょっと口が臭かった! ちょまめ!
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