ヴェルゲルガルド2歩目 ボロが出てきた! 代わって!
朝からちょっと汚い話ですみませんですっ!
「ね、ねえ……シノ。今晩どうかな……?」
「あー……ごめんね、ノリオ様。今、忙しくて……」
賢者であり、俺の中では夜の聖母、シノにやんわりと断られる。
くそう……今夜もシノが駄目だったか……シノがいいのに……でも、シノが一緒を嫌がる理由も分かる。
「ねえ、ノリオ……? マジでさ、ユウナばっかりで狡くない? ねえ?」
苛立ちながら拳をパンパンさせる【神速の拳士】イノリ。
「そうよね、わたしたちみんなノリオの妻なんだから、正室とはいえ、ユウナ姫ばかりはズルいわ」
手の中でバチバチと魔力を滾らせている【殲滅の魔導士】リエナ。
「うふふふ、側室は黙っていなさい。相手を選ぶのはノリオ様でしょ?」
笑顔でめっちゃ圧を掛けている【姫騎士】ユウナ。
この三人の女の戦いが怖すぎる。シノがそれに疲れて、俺が任せている政務に逃げてしまうので、俺は毎回夜は女達のじとっとした愚痴を聞かなきゃいけないのがしんどい。
昔はこうじゃなかったのになあ。
嫉妬もかわいいもんだったけど、こうずっとだとしんどい。
「あ、あれー? そういえば、キリは?」
【必中の狩人】キリ。ちょっとお馬鹿な感じだがこういうのにかかわって来ない分やりやすい。だから、そっちに逃げたい!
「ああー、キリなら、この前の戦闘で助けてくれた弓使いとお出かけしてるわよ」
「はぁああああ!? なんで?」
「さあ~、あ、でも『ノリオが構ってくれないし、すっごく良い人だしお出かけ位ならいいかな』って言ってたわね。あの子」
「マジかよ! 最悪だよ! なんなの、そんな風に簡単にほいほいとさあ! 俺だって助けてあげたじゃん! 尻軽がよお!」
大体、全員週一で一人ずつ相手してあげてるじゃんか!
ふと気づくと、三人がちょっとやな感じでこっちを見ている。
「な、なに……?」
「ノリオ、今の言い方は許せねえわ」
「そ、そうね、ちょっと、わたしたちも傷つく、かな」
「ノリオ様……最近のノリオ様はよろしくないですよ?」
いやいやいやいやいや!
俺、知ってるからね!
イノリがストレス発散で稽古とか言って兵をぼこぼこにしてるのとか、リエナが陰湿ないじわる魔法罠をしかけてストレス解消してるのとか、ユウナが部下たちにちょっとヒステリックに怒ってるのとか!
……んんんんん! 俺が原因かなあ!?
心当たりが……ありすぎる!
「ノ、ノリオ様!」
と、そこに新しく雇った大臣が飛び込んでくる。
大臣ナイス!
「どうしたぁああああ!? 大臣!?」
俺の大声で誤魔化す作戦!
大臣は俺の叫びを聞いてほっとしたような表情を浮かべる。
うんうん、俺もほっとしてるよ! 君が来てくれて!
「それが……ゴブリンとオーガの連合軍が王国に攻め入ろうとしています!」
「ほっ……はぁあああああああ!?」
そんな馬鹿な! 魔物どもは俺にビビッて手を出してくる事なんかなかったのに!
ユウナが前に出て大臣にといかける。
「軍は、どうなっているのです?」
「それが……軍が出たのですが、暫く風紀が乱れ、女に溺れていたことで規律を守れぬものが増え、その上女性のいない所で働きたくないと逃げ出したものもおり、使い物にならず」
「はぁあああああ!?」
何やってんだよ軍! ちゃんとやれよ軍! 軍のトップは何やってんだよ! 誰だよ!
……俺だぁあああああ!
ぶっちゃけ、俺一人いればチート能力で十分だと思ってたから【能力譲渡】でパワーアップさせた後は放置してた。
ま、まずい! ごまかさないと!
そうだ!
「はぁあああああ~、分かったよ。じゃあ、俺がパパっと終わらせてくるわ」
やれやれ風を出しながら一歩前に出る俺。
軍の奴らが勝手に堕落していったから、まあ、リーダーである俺に責任があるかもな……いっちょやってくるか……風振る舞い! どうよ!
「……」
「……」
「……」
「……」
うん、みんなちょっと冷めた目で見てた。
まあ、誤魔化せないか!
「よよよよよし! じゃあ、パパっとやってきまーす! 大臣、お前も来い!」
「え、ええぇえええ!? なんで私も!?」
一人じゃさみしいだろ! あと、俺の愚痴も聞け!
そして、やってきたのは、ゴブリンとオーガの連合軍。
向こうのリーダーっぽいゴブリンが何か言ってる。
「ゴブゴブゴブゴブ!」
超賢者が居ないから何言ってるかわかんない。
そういや、モブ騎士ゴブリン語必死で勉強してたな。なんか仲良くなったゴブリンがいたとかで。
あれ? あのゴブリン? それじゃね?
もー、マジでモブ騎士何やってんだよー、俺に迷惑かけんなよなー。
「ゴブゴブゴブ!」
うるせーな! 何言ってるか全然わかんねーんだよ!
まあ、いいや! どうせロクでもない事言ってるんでしょ!
ゴブリンだし!
「はいはい、じゃあ、俺も忙しいから死んで。【超次元斬】!」
「いや、ノリオ様! 私もいるんですけどわああ!」
大臣が何か言ってるが気にしない。
俺の最強奥義で一気に終わらせる。
「はーい。じゃあ、おつかれっした~☆ って、あ、あれ?」
ゴブリン・オーガのかなりの数をぶっころした。
だけど、全部じゃなかった。
おかしいな……魔王四天王も一瞬で倒した技なのに。
「くそ! 【超次元斬】! 【超次元斬】! 【超次元斬】! はあはあ……」
超次元斬の連発でなんとか倒す。だけど、ゴブリンのリーダーらしき人物はきっとこちらを睨み、血の涙を流しながら逃げていく。
「ち。なんかおかしいぞ……。前ならあんな奴ら一撃だったのに」
まさかゴブリンが何か罠を!?
「あ、あの……ノリオ様? ノリオ様の力が落ちているのはもしかして……」
「そうか! やはりゴブリンの罠か!?」
「いえ、普通にトレーニング不足かと」
「はあ? え? なんで? チート能力でしょ?」
俺がそう言うと大臣は頭を掻きながら説明してくる。
「いや、鍛錬をしていなければ、能力が落ちるのは当然かと……」
「え? そうなの?」
「え? え、ええ……勿論、だって、能力ですから。身に着けた能力や、例えば知識や筋肉などもトレーニングを怠れば失っていきます。普通はそうですが……」
そんなことも知らないのかとちょっと呆れ笑いを浮かべる大臣。
腹立つなあ。
と、その時だった。
腕に強烈な痛みが走る!
「いったぁああ!」
やられた! いてえ! マジいてえ! 何!? いたいんだけど!
「ノ、ノリオ様! 落ち着いてください。矢が一本かすっただけです!」
「はあ!? 痛すぎるんだけど!?」
「お、恐らく、能力が低下した事でダメージを受けるようになったのかと……そして、ノ、ノリオ様は、こちらの世界に来てから一度も痛みを感じず敵を撃破してきたのですよね? なので……」
大臣の言っている事の意味に気付き、俺の身体中から汗が噴き出てくる。
「痛みに慣れてないから、めっちゃ痛いってこと……?」
「おそらく……」
身体が震える、ちらりと見ると、ゴブリンが弓矢を構えている。
「うわああああああ! やめろやめろやめろ! 超バリア! 超バリア! 超バリア!」
「ノリオ様! そんなに魔力を無駄遣いされると! 無駄です! 無駄!」
うるせえな! 知らねえよ! チート能力火力ごり押しでやってきたから戦い方なんて分かんねえんだよ!
「バリアバリアバリアバリア! バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリア!」
「むだむだむだむだむだむだむだむだむだむだむだづかいぃいいい!」
「うるせぇえええ! ……って、あれ?」
魔法のバリアが弱まったのが分かる。やばい! 魔力切れが近い!
その瞬間を逃さなかったゴブリンが再び矢を飛ばしてくる!
「うぎゃあああああああ!」
腰が抜けてしりもちをつく。それで幸運なことに偶然矢を避けることが出来た。
やっぱ俺は神に愛されているんだ!
だが、その時に俺は気づく。気付いてしまう。
こううんと一緒にでちゃったものが、お尻に……。
「?? ノ、ノリオ様、この匂いは……?」
「撤退ぃいいいい! 撤退だ! 今日は調子が悪い! っていうか、もう敵も残り一匹だし、十分でしょ! 撤退! 空間魔法!」
俺がそう叫ぶが何も起きない。
「ノリオ様、魔力が……」
「く、くそ!」
「くそ?」
「はぁああああ!? 意味わかんないんだけどはぁあああ!? 何、その単語に反応してんの? 小学生かよ! ええい! こうなりゃ走る! 撤収だ!」
能力が落ちているとはいえまだまだステータスは高いんだよ!
逃げ切ってやる! ばーか!
「そ、そんな! ノリオ様はそれでいいかもしれませんが、私は!」
「うっさい! 低いすばやさで生まれた自分がわるい! じゃあね!」
そう言って大臣を置き去りにしてダッシュで逃げる!
なのに。
「なんで、俺を追ってくるんだよぉおおお!」
ゴブリンは執拗に俺を追ってくる!
意味わかんない、はあ!? はあ!? 意味わかんないんですけど!
マジやだ! マジやだ! こえぇええええええ!
「来ないでぇえええ! ごめん! ごめんなさい! マジでごめーーーーん!」
そうして、なんとか逃げ切った俺はその時知らなかった。
『おんなたらしおもらし勇者ノリオ、めっちゃダッシュでよわすぎてごめん』
そんな噂が王国中に広まっていることに。
そして、数か月後に。
『おう! くそノリオォオ! よくもあの時は置いていったな! あの時の恨み……いや、今は感謝しているよ! ゴブリンキング様の元でやりがいを感じて働いているからな! だが! ゴブリンキング様はお前の愚王っぷりにお怒りだ! 滅ぶがいい!』
元になった大臣があのゴブリンと共に王国に反旗を翻すなんて、その時はマジで知らんかった。
お読みくださりありがとうございます。朝から汚い話ですみませんでしたっ!!
折角のコメディーなので、新しい試みを。
使います! とは保証できませんが、学校や上京あるあるやネタ、シチュエーション募集します。もし、何かあれば。
使うとは保証できませんが。
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完結ほやほやがこちらに!
『英雄たちのアシナガおじさんが冴えない私なので言い出せない』
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笑い多めならこちら!
『俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。』
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