ニポン15歩目 ヤンキーに絡まれた! 代わりに!
「ほう……なるほど……これは、ほう……!」
「ふふ、レオかわいい……それにしても……五分一君遅いね……」
小さなお弁当を食べ終えたユイさまがぼそりと呟く。
確かに、もう随分と時間が経つが今だにゴブリンは帰って来ない。
「お昼の購買部は地獄のパン争奪戦だって聞いたことあったけど、そんなに大変なのかな……?」
地獄!? コウコウの購買部は地獄なのか!?
ケルベロスや悪魔どもが徘徊するあの地獄!?
ヴェルゲルガルドでもかの魔導王様を救うための一回だけしか行かなかったあの地獄!?
ノリオ様が魔導王様が男だとしって膝をついたあの地獄なのか!?
あれは大変だったな……ノリオ様が後は任せたと魔導王様を救出する任務を任せて下さった時は大変と同時にとても誇りに思ったが。
だが、もしその地獄と同じ地獄であれば大変だ。
私もユイさまによる三日三晩の回復魔法によってなんとか一命をとりとめたレベルだった。
あんな小さな五分一ではひとたまりもないぞ!
「ユイ、私、地獄からゴブリンを助けに行って来ます!」
「え? 地獄? ゴブリン? え? ねえ、レオ!?」
私は止めようとするユイさまから逃げるように去っていく。
あの時も、もう戦わないでと泣いてお願いをされたしな……。
「レオ~、あちしもいく~、なんか映える予感~、賢地谷超たのしみ~」
超賢者様が追いかけてきている。
ありがたい。正直、既にどっちがどっちだか分らなかった。マッピングしておくべきだった! 愚かなレオンハルト! 反省しろ!
超賢者様に指示されながら向かう。だが、そこまで行く必要はなかったようだ。
途中の廊下で、ゴブリンは数人の男に囲まれていた。
「おい、ダメゴブ、お前なに俺のユイに手を出そうとしてんだよ」
「い、いや、別に……手を出そうとなんてしてないけど」
「じゃあ、なんでお前とあの二人が一緒に飯食ってんだよ!」
「おまけに、もう一人の美人。あれも誰だ?」
「いや、知らねえよ!」
なるほど。ユイさまを狙う輩が、近づいていたゴブリンにくぎを刺そうとしているわけか。
であれば、黙っているわけにはいかないな。
「おい、貴様ら何をしている?」
「ああん?」
一番最初に振り返ったのは、ゴブリンの胸倉を掴んでいる大柄な男。
だが、その身体の大きさよりも気になるものがある。
それは……頭だ! なんか大きなツノのようなものが生えているぞ!
「おい、テメエ……俺の、この大賀様のリーゼントをじっと見てんじゃねえぞ!」
ほほう、リーゼントという名の角なのか、しかも、名前を聞く限り、ニポンのオーガのようだ。確かに中々に眉間に皺が寄っている。ヴェルゲルガルドでもニポンでもツノと眉間の皺は共通のようだ。
そして、その横の男子を見て驚いた。
「おい、大賀君を舐めない方がいいよ。大賀君は、強いよ……」
五分一にそっくりな眼鏡の男子だった。
「おい、燐太朗……」
「うるせえ! クソ弟は黙ってろ。てめえと双子の兄弟ってだけでも最悪なのに命令すんな」
なるほど、双子か。本当にそっくりだ。眼鏡がないと判別できないほどに。
あとは、今は……。
「おい、ごぶり……五分一燐二の頬を殴ったのは誰だ?」
頬の殴られた後で判別できてしまうな。
「ああん? 俺だよ、なんか文句あんのか? ああん?!」
オーガがリーゼント角を出しながら威嚇してくる。
流石、オーガ。ああやって角を振って睨んでくるのはニポンもヴェルゲルガルドも一緒か。
「や、やめろ! お前らの相手は俺だろうが!」
「粋がってんじゃねえぞ! リンジの癖に!」
「ゴブリ……リンジ殿」
「へ、へへ……いいか、ノリオ。手を出すんじゃねえぞ……!」
ゴブリンがそう言う。だから、私は……。
「分かった!」
「へ?」
了解した。なるほど、リンジ殿は己を磨きたいようだ。素晴らしい!
「いや、ばかか! 『へ、こういう時はお前だけに任せておけるかよ! 相棒!』だろうがぁああああ!」
知らない。
ニポンにはそんなシステムがあるのか? ニポン、難しい。
だが、助けに入って良いというのなら……。
「助けさせてくれ、リンジ殿」
私はそう言いながらリンジ殿の前に出る。
「お、おう……! 助かる!」
「お前、リンジのなんなんだよ! 鈴木ぃいい!」
ゴブリン兄がオーガの威を借り迫ってくる。
リンジ殿の何か……。
「私は」
リンジ殿はこんな未熟な私を面白いと言ってくれた。
皆がひそひそと遠巻きに見つめて噂をしている中、勇気をもって近づいてくれた。
遠慮なく教えてくれた。
だから、きっと、彼は私の。
「仲間だ!」
多少の願望は入っているかもしれない。
不安だった。ニポンで知り合いが出来るのか。だけど、なんというか彼と話すのは心地が良い。彼は決して特別な人間ではない。だけど、私とユイさまの関係を気にしての位置取りや歩く速度、話題の振り方など凄く丁寧な奴だった。
「だから、私は彼を助ける。傷つけるお前達を許さない!」
「ノ、ノリオ……! 仲間はちょっと恥ずかしいから、友達からでいいかな?」
ちょっと面倒な奴だが!
「ほ~ん? 仲間ねえ? じゃあ、お仲間で仲良くやってやる、よっ……!」
そう言ってオーガが私の腹に一撃殴りこんでくる
「おい! ノリオ! だ、大丈夫か!?」
「へっへっへ! どうせテメエはやっちまうつもりだったから。手間が省けたぜ。星城の周りでチョロチョロしてたからな。アイツは俺が喰ってやるんだ。お前は、ウザいからどっか行け。今ので力の差が分かっただろう」
「あ、ああ、そうだな……」
力の差が分かってしまった。
「君が物凄く弱い事が分かったので、手が出せない。頼む帰ってくれないか?」
「はぁあああああああああん!?」
オーガが目をひん剥いて驚いているが事実だ。
弱すぎた。びっくりするくらい。
あんなに黒くて大きなツノがあるのに。凄く黒くて光ってるのにな。
だが、丁度良かった。
先程手に入れたモノならば、全力で戦っても大丈夫だ。
「貴様が全力を出したというのなら私も全力で応えよう……!」
「は、はあ!? お前、エモノなんて、ひ、卑怯だぞ!」
先程手に入れたこれでお前を倒す。
この緑のギザギザで!
「って、ノリオォオオオ! それ、バランンンンンンンンンンン!」
そう、お弁当に入っていたコレ。ユイさまから頂いたバランで!
「貴様を倒す!」
オーガが顔を真っ赤にして怒っているようだ。ふむ、レッドオーガ。
「て、テメエ……! 人を舐めるのも大概にし、ろぼっぼっぼぼぼぼぼぼぼ!」
「バランバランバランバランバランバランバランバランバラン!」
持っているバランで思い切りオーガの顔を殴りつける。
それなりの威力ではあるが、それでも殴り返せる程度の元気はあるらしい。
必死に抵抗して殴ってくるが全く効かない!
あとは、根競べだ!
「バランバランバランバランバランバランバランバランバラン!」
「べべべべべべべべべえべべべべべべべべべ!」
なかなか粘るな!
「なんだ、このシュールな戦い……パンチ対バラン。圧倒的バラン有利」
ゴブリンが何か言っている! 任せろ! お前の仇は必ず取る!
「バランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバラン!」
「べべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべ!」
屈辱だろう屈辱だろう! こんなペラペラ一枚に負けるのは!
お前の心を折る!
「バランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバランバラン!」
「べべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべ!」
お前は私の仲間に手を出した! そして、ユイさまに手を掛けようとした!
「バランバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラァアアアアアッ!!!!」
「べべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべべェエエエエエ!」
お前を折る! 心と! ツノを!
「バランよ! 悪を切り裂け!」
私はバランに魔力を込め、振りぬく!
ばきん!
そんな音を立てて、オーガのツノが折れた。
ふわさという音とともに中から黒い……髪の毛が。
そうか……髪の毛でツノを……オーガは大きいツノであればあるほど男として立派だと聞いたことがある。……見栄を張りたかったのだな……。
だが、完全に今、お前の全てを折ってやった。
この、バランで!
「バランよ……人を殺さず、悪を倒したお前をエクスカリバランと名付けよう……」
「いや、ネーミングセンスゥウウウ!」
こうして、私は、最高の武器と私を正してくれる仲間に出会ったのだった。
お読みくださりありがとうございます。
書いてて楽しかったです! それだけです! ありがとうございました!
折角のコメディーなので、新しい試みを。
使います! とは保証できませんが、学校や上京あるあるやネタ、シチュエーション募集します。もし、何かあれば。
使うとは保証できませんが。
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『英雄たちのアシナガおじさんが冴えない私なので言い出せない』
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『俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。』
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