ユイノコイ5151歩目 異世界から帰って来た! 本物と!
わたしがヴェルゲルガルドにやってきたのは一年前。
ノリオ君と一緒に。
ノリオ君はヴェルゲルガルドに来れて嬉しそうだった。
昔から異世界行きて~って言ってたから。
ノリオ君とは幼馴染。
と言っても、ただの幼馴染。本当にただの。
少女漫画のように甘酸っぱい恋愛の予感なんてない。
ただのただのただの幼馴染。
だけど、二人の共通点があった。
それが、ファンタジーが大好きってこと。
ノリオ君は女の子にいっぱい囲まれるチート主人公が好きだった。
だから、ヴェルゲルガルドでチート能力を得ることが出来て、かわいい女の子の奥さんがいっぱい出来て嬉しそうだった。
私もハーレムに誘われたけど断った。
私にはハーレムの良さは分からない。
それに、ノリオ君に興味がない。
本当に本当に本当に興味がない。悪いけど。
私が好きなファンタジーは、一途な恋人が私を一生懸命守ってくれて、わたしも彼を守って二人で色んな苦難を乗り越える物語。
だから、『彼』に出会えた時に本当に嬉しかった。
彼は、レオンハルトはとても素敵な人だった。
『ノリオさま、ユイさまですね! 姫の護衛騎士でレオンハルトと申します! 姫がノリオ様たちの旅に同行するということで私も微力ながらお手伝いさせていただきたいと思います!』
挨拶もすごく爽やかでどきっとした。
それにとっても一途だった。
『そうですね……ユウナ様の御心がノリオ様に向かっているのは気付いていますし、当然のことかと。私は貴族出身でもないですし、ノリオ様のような優れた力もないですし……ですが、せめて姫の思いが成就するようにお手伝いできればと思います!』
ユウナ姫が好きだったレオンハルト。
ノリオ君のことが好きになったユウナ姫の恋が成就するよう奮闘するレオンハルト。
その健気で一途な想いに。
はぁはぁしました。
『私は確かにノリオ様やユイさまに比べれば弱い! だが! だからといって、全てを委ねるわけにはいかないのです。異世界ニポンから来たお二人の力にならねば、少しでも自分たちの世界を変える力になりたいのです』
そう言って、最後までついて来てくれたレオンハルト。
確かに彼はわたし達に比べ強くはなかった。だけど、毎日まじめに鍛錬をして少しずつでもわたしたちに近づこうとしてくれたレオンハルト。
わたしは夜遅くまで素振りをする上半身裸のレオンハルトを見て。
はぁはぁしました。
『ユイさま! 貴女とノリオ様は希望の光! 私が囮になります! 早くお逃げを! どうかご無事で!』
そう言って、魔王四天王の急襲によって大ダメージを負ったわたしたちを必死で逃がそうとしてくれたレオンハルト。自分も鎧が壊れ服が裂け大きな傷を負ったにもかかわらず囮になろうとしてくれた。そんな姿に。
やっぱりはぁはぁしました。
そして、速攻助けました。
はぁはぁした瞬間、新しい能力に目覚めました。
『あ、ありがとう……ノリオ様ではなく私にそんなことを言ってくれるとは。だが、今はそんなこと考えられないんだ。まず、魔王を倒す。そして、ユウナ姫の恋を成就させる。自分のことはそれから考えたい』
レオンハルトのことが好きな女の子もいっぱいいた。同じ騎士のフラウさんやメルヒェン神聖国のお姫様、あげればキリがないくらい。だけど、レオンハルトさんは誰にも靡かなかった。主であるユウナ姫が幸せになるまで、そして、魔王を倒すまで恋人を作るつもりはないと。じゃあ、魔王を倒してユウナ姫が結ばれれば恋人を作るつもりがある……?
なので、はぁはぁしました。
そして、魔王を倒しました。
速攻倒しました。
はぁはぁした瞬間、新たな能力に目覚めました。
そして、異世界を救ったわたしは世界のバランスを保つために日本に戻らなければならなくなり、その日が近づいていました。
はぁはぁ、ためいきが出ました。
でも、レオンハルトが言いました。
『そう、ですね……やはり、お二人とお別れするのは寂しいです』
はぁはぁしました。
『ユイさまには何度も癒しの魔法で命を救っていただき、本当に感謝しております』
はぁはぁしました。
『好きか嫌いか、ですか? その二択であればもちろん好きです!』
はぁはぁしました。
『愛しているか愛していないか、ですか!? え、えー、その二択であれば、その、おこがましいかと思いますが……あ、愛しています』
とってもはぁはぁしました!
一途で努力家でみんなにやさしいレオンハルト。
とってもとってもはぁはぁするレオンハルト。
彼と一緒にいきたい。
そう思った時でした。
『えー、オレ、日本にかえりたくなーい。あ、そうだ。モブ騎士代わりに帰ってよ』
ノリオ君がそう言いました。
はぁはぁ……。
『か、かしこまりました! モブ騎士レオンハルト、ノリオ様の代わりにニポンに帰らせていただきます!』
は、はぁはぁ……!
『ユイさま! ノリオ様の代わりにしては頼りないかと思いますが一生懸命ノリオ様の代わりに貴女を守ります!』
はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁぁああああああああああああ!
そのあと、わたしは倒れて大騒ぎになったけど無事でした。
むしろ、そのあと、レオンハルトがお姫様抱っこでベッドに運んでくれたと聞いて血の海になりました。わたしの鼻血で。
そして、ノリオ君が帰らずに、レオンハルトが一緒に帰ることになった。
わたしはへんなこだ。
自覚はある。
だけど、へんなこでも好きな人はいる。
大好きなレオンハルト。
一途で努力家で一生懸命でやさしいレオンハルト。
日本ではずっと彼に笑っていて欲しい。
その為にわたしに出来る事ならなんでもする。
なんでもだ。
今もレオンハルトはわたしの隣で一生懸命ノートをとっている。
黒髪、黒い瞳。見た目は違っても関係ない。
レオンハルトの中身が本当にわたしの夢見てた理想の彼だから。
「あの……ユイ? 何してるんですか?」
はぁはぁしてます。レオンハルトの肩に顔を当てて。
『言ったでしょう? ユイはヴェルゲルガルドの空気を吸わないと死ぬんです』
超賢者ちゃんナイス。あと、認識疎外の魔法もナイス。これでクラスメイトにバレないね。
わたしは、レオンハルトの空気を吸わないと死んじゃう。
だから、
はぁはぁします。
そして、レオンハルト。
わたし、もっともっといろんなこと頑張るから、運動も勉強もお料理も掃除も何もかも頑張るから、いつかわたしに。
はぁはぁしてね。
『ユイは……手遅れかも知れません』
超賢者ちゃん、うるさい。
いや、その通りです。
わたしはもう手遅れだ。
この人に恋して恋して好きで好きでたまらなくなってしまっている。
お読みくださりありがとうございます。
折角のコメディーなので、新しい試みを。
使います! とは保証できませんが、学校や上京あるあるやネタ、シチュエーション募集します。もし、何かあれば。
使うとは保証できませんが。
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『英雄たちのアシナガおじさんが冴えない私なので言い出せない』
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