ニポン9歩目 アダナをつけられた! 代わりに!
「青城結です。一年間この学校にいませんでしたが、仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」
万雷の拍手に包まれながら隣にいるユイさまが笑っていらっしゃる。
トウコウは本当に大変だった。
校門をくぐったところで教師に呼び止められキュウキュウシャを呼ぶからと止められそうになった。結局、ユイさまの回復魔法と超賢者様のあばば魔法でなんとかなった。
よかった。
そして、コウコウ城の中に。普通だった。
コウコウ王らしき、コウチョウと話をした。普通だった。
私は勘違いをしていたのかもしれない。コウコウは普通なのかもしれない。
ノリオ様が私が油断せぬようあえて恐ろし気に話をされたのかもしれない。
そう思っていた時だった。
いくつかの視線を感じた。
獲物を狙うような目。
どうやら、ノリオ様の言葉もただの戒めなだけではないのかもしれないな。
その後、ようやく担任の教師と挨拶をし、自分とユイさまの教室に。
今は、ホームルームという時間で自己紹介をしている。
先にユイさまが自己紹介されたのだが、流石聖女ユイさまだ。皆が好意的な目で見ている。
ヴェルゲルガルドにも負けないほどの愛されっぷりに私も嬉しくなる。
「青城は一年間こっちにいなかったが、入学当初凄い美少女が入学してきたと噂になっていたからな。嬉しい男子は多いんじゃないのか?」
担任教師がそう言うと男子が頬を赤く染めそっぽを向いたり照れ笑いを浮かべたり……ああ、こういうところは騎士団と変わらないな。男は分かりやすい。
「は~い、青城さんは彼氏は今いるんですか?」
女性生徒がそう言ってくるとユイさまはあからさまに動揺される。
かれし?
何かの略称だろうか。
かれし。
カレシ。
カレシー。
ケットシーの仲間かなにかだろうか。
「じー……」
気付けば、ユイさまがこちらを見ている。
……は!
そうか、もしや! 犬猫のように主につきしたがう従者のことだろうか!?
ユイさまは、私に聖女様の従者に相応しい男になれと言っているのだな!
私は拳をぎゅっと握りうなづく。
「がんばります」
そして、小さな声でそう伝えると、
「はびゃあああああ」
ユイさまが顔を真っ赤にして倒れてしまった。
なんだ!? やはり、コウコウ城には何か恐ろしいものがいるのか?!
私達が気付かぬ速さで呪いをかけるとはコウコウ恐るべし!
「お、おい! 青城大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です。せっかくのクラスへの『二人』のアピールタイムですから、ここで落ちるわけには……!」
ユイさまが魔王と対峙した時くらいの強い意志の籠った眼で立ち上がる。
そんな覚悟でユイさまは自己紹介を……!
であれば、私も本気でせねばなるまい。
「そ、そうか……まあ、無理はしないよう。じゃ、じゃあ、鈴木、自己紹介を」
「はい!」
担任に呼ばれ一歩前に出ると、ざわつきがより一層大きくなる。
「え? 鈴木ってあんなだっけ?」
「なんか急成長しすぎじゃない?」
「なんかちがくね?」
やはり、ノリオ様に比べてあからさまに私は未熟に見えるのだろう。
努力せねば!
中には、
「おい、あの陰キャカス、ちょっと筋肉ついたら、カースト最下層から抜け出せると思ってんのかな?」
「そのために、隠れて一年間筋トレしてたとか? ウケるな」
侮蔑の目で私を見てくる者が。
私が未熟なのは百も承知だ。
だが、聞こえたぞ。私にも許せない言葉はある。
「鈴木ノリオ! 帰ってまいりました! 皆さんと仲良くなり、鈴木ノリオだと認めていただけるようがんばりますのでよろしくお願いいたします!」
騎士団でも最初の一声が大事だ。出来る限りの声で挨拶を。
生徒たちは皆驚いているようだ。だが、これでいい。
「え、えーと。鈴木、お前、そんな声出る奴だったんだな」
し、しまったぁああ! ノリオ様はガッコウでは寡黙なお方だったのか!
「偶然です!」
「偶然? ま、まあ、いいや。お前らの席は一番奥の後ろだ。早いうちに席替えはしようと思うが一先ずそこに頼む」
「はい」
「かしこまりました」
ユイさまに続いて、指定された席に向かう。
その時だった。
足元に先程侮蔑の目を向けてきた生徒の足が。
「すっころべ、陰キャカス野郎」
また、言ったな……!
私は、前へと進む。
騎士団の時もそうしてやった。
まっすぐに前に進む。
ひっかけようとする卑怯な足など見えないという顔で。
そして、
「あぐ! いってぇええええええ!」
足を飛ばす。折りはしない。当てるだけだ。
それ以上は必要ない。
だが、一言だけ。伝えねば気が済まない。
「てめえ……何しやがんだよ……陰キャカス野郎の癖に」
「誰が……」
まだこいつは言うのか……!
「誰が……!」
その言葉だけは許せない。
「誰が!」
それは女性に卑猥な行為をする悪魔の名!
「誰が、インキュバス野郎だぁああああ!」
そんな不名誉な二つ名をつけられてたまるか!
「……言ってねぇえええええええ!」
え? 言ってない、だと……?
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