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雪の中、ただ君を待つ  作者: 夏蜜ねここ
消えた少年
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 ここ半月余り、遠夜は一本遅い時間帯のバスをあえて利用していた。同じ学校の生徒がちらほら乗っているため、始業時間五分前に到着することを焦る必要がないからだ。何より車内が空いている。いつも乗車しているバスで座席を獲得できるのは極稀であり、すんなり座れるのはありがたいことだった。だが、これは本心ではない。

 遠夜は傍らの寝顔を一瞥し、また書籍に視線を落とした。少年は肩に寄りかかって、気持ち良さそうに寝ている。最近は会話を交わすより、ただ一緒にいるだけのほうが多くなった。定期入れを見て満足したのか、あれ以来しつこく訊いてくることもない。

 少年とは平日の朝、毎日顔を合わせるのが日課となっていた。大抵遠夜が先に乗り込み、時たま少年のほうがより早く着席していた。実のところ、遠夜は少年の名前すらまだ知らない。はぐらかされるか、覚えていないことを拗ねられるか、いずれにしろ真っ当な答えを期待するのはやめてしまった。

 バスが十字路を左折する。肩に置かれていた少年の頭が、弾みで遠夜の胸部に当たった。幸いにも書籍を枕にされる前に少年は目覚め、遠夜の脚や腕を頼りにして彼は起き上がった。うんと大きく背伸びをして、やっと自分の席に落ち着く。

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