表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪の中、ただ君を待つ  作者: 夏蜜ねここ
知っている少年
6/14

2

 先週の金曜日に会った時と変わらず、少年はダッフルコートにマフラーを厚く巻いた格好だった。黒い髪はしっとりと濡れてはいるものの、頬は上気しており、全体的に乾いた印象だ。つい先程まで雪の中にいた遠夜とは違い、しばらくバスに乗っていたのだろうと感じさせるふうだった。

 遠夜は少年の傍らで、コートに纏わり付いた雪を遠慮なく払い落とす。この間とは立場が逆転したらしい。一頻り雪を手で払った後、少年のほうを振り向くと、やや不服そうな顔つきになっていた。結晶が跳ねて少年に付着している。遠夜はさすがに決まりが悪く、素直に謝罪した。

「……ごめん、いつもの癖でつい」

「いいんだ、外は寒かったろう? 早く温まらなきゃ」

 少年は遠夜の手を握って頬に当てる。少年の指先は凍てついていて、頬もまた氷に触れているのかと錯覚する冷たさだ。とてもではないが温まりそうにない。遠夜は思わず身震いした。

「君の手はとても冷たいな。頬だってこんなに」

「遠夜こそ、手袋くらいしたらどうだい。定期入れを取り出すのに邪魔だからって、そんなやつ、まあいないよ」

 少年はやや乱暴に遠夜を離し、怒った様子でそっぽを向いた。手を戻された遠夜は、彼の突き放した態度より、いきなり名前を呼ばれたことに驚いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ