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 早朝の通学路に雪がちらつく。バス停へ行くまでのわずかな距離を、遠夜はわざと時間をかけて歩いていた。街路灯は未だ消えず、ぼやけた光を道端に放つ。その下をくぐる人々は、冷気から一様に顔を背け、肩をすくめて足早に通り過ぎてゆく。

 遠夜は裏路地を抜け、表通りに出た。一台のバスが目の前を過る。座りきれずに立つ乗客を揺らしながら、バスは道路の曲線に沿って見えなくなる。本来なら、乗っているはずのバスだ。書籍を片手に吊り革を握る青年が、つい秋頃までの自分と重なる。

「隣、いいですか」

 うっかり寝過ごしたその朝、たまたま声を掛けてきた学生と隣り合った。仕方なくいつも利用する車両ではなく、一本ずれた時間帯のバスに乗り込んだ日だった。伏し目がちな目もとが印象的な少年は、腰を下ろすなり真っ白に覆われたマフラーをはずす。彼が遠慮がちに雪を振り落とすと、バスは一瞬震えを起こして動きだした。

 車内は、いつもに比べて空いている。二十分ほど時間が遅いせいだろうか。二人掛けのシートに余裕があるのは珍しい。最後列の前の席を少年が選ばなければ、一人で余裕を持って座れたのにと遠夜は思う。景色を眺める振りをしながら、窓にうっすら反射した横顔を疎む。

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