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第3話




バタン、いきなり開いた扉に思わず肩が跳ねる。

とても丁寧とは呼べないその動作を行った人物へと視線を向ければ、何故か私よりも驚いたような顔をするいかにもメイド、という女性が一人。


「…起きていらしたんですか。」


淡々とした、多少の驚きを含んだ声にこちらも驚いてしまうが相も変わらず表情が動かないらしい。


「朝食はどうされますか?」

「…あ、えっと、」


何か情報を知りたい。

しかし、私の持っている手札に目の前の女性の情報は皆無である。どうすれば、なんて思っていれば静かに溜息を溢して見つめてくる。


「この部屋で、食べることは可能、、なの?」


思わず敬語が出そうになるけれど、変に思われないようにわざとタメ口で聞いてみた。すると小さく頷く。


「なら、持ってきてほしいわ。」

「かしこまりました。」


さも当たり前のように頭を下げ、部屋から出て行く姿に何も言えなくなってしまった。


「何か、情報を探さないと。」


改めて見回した部屋はやはり御伽噺のようで。前の私とは比べ物にならないほど豪華で華やかな家具、見たこともないほど煌めく乱雑に置かれた宝石たち。


(…ここは、いや、それよりも、、私は死んだ、はず。あの場で車に轢かれて、)


酷い血や肉が焼けた匂いがした気がして咄嗟に口を押さえる。目の前に広がる鮮やかすぎた紅を忘れようと首を振り、気を逸らすために唯一無難な本棚に近づいた。


並べられていたのは、日付が背表紙に描かれている本。つまりは日記帳、過去の私を知るために最も望んだ情報の塊である。


すぐさま一冊目の本へと手を伸ばしたが、コンコンコンというノックに遮られてしまった。どうやら用意してもらった朝食が届いたらしい。


「お嬢様、朝食をお持ちしました。」


淡々とした作業のように告げられた言葉に返事をするべく口を開く。


「入って。」


こんなにもタメ口がスルスルと出てくるのはきっと本来この体を所有していた人が言っていたからだろう。〝私〟にはとてもじゃないが扱える気がしない。


(でも、いきなりメイドの人に敬語を使えば怪しまれる可能性がある。出来るだけ今後の不安になるような要素は作りたくない。)


何故こんなに冷静なのか、何度目かの自分への問いに答えなど出せるはずもなく、今度は丁寧な動作で入ってきたメイドは変わらない温度のない視線を向けてくる。


「本日の朝食はパンとスープ、そしてサラダとベーコンです。」


ほかほかと広がる湯気の先にはお洒落で美味しそうな食べ物が並んでいる。ゴクリ、口に広がる唾液を飲み込んで持ってきては並べてくれた机に向かい合う椅子に腰掛けた。


置いてもらったナイフとフォークを呼吸をするのと同じように手に取る。


(殆ど使ったことがないはずなのに、こんなにも手に馴染むのはきっと、、)


その先はもう、考えなくてもわかっている答えだったからこそ、ゆっくり手を合わせた。


「いただきます。」


ぐるぐるとした感情はサラダと一緒に飲み込んだ。シャキシャキとした新鮮な野菜。サッパリとした私好みの舌に合うドレッシングによく合う。


ベーコンもしっかりと焦げ目がついていて、じゅわりと広がる肉汁は塩分と共にパンが欲しくなったので、すぐにナイフとフォークを置き、パンを千切って食べる。


ふわふわで、ほんのり香るバターの優しい後味はベーコンの塩味とよく合う。こんなにも美味しい食事は久しぶりで、最も美味しそうに見えるスープを啜ってみる。


ミルクの甘さ、そしてゆっくりと食道を通っていく温かさにじぃんと心に染みる。メイドさんが隣に居るからこそ慎んだ方がいいのかもしれないけれど、それでもご飯は美味しい。


(こんなに温かい食事を摂ったのなんていつぶりだろう…いつも適当に済ませていたけど、、これからは楽しみにしても良いかもしれない。)


あっという間に食べ終わったことが少し名残り惜しいけれども、手を合わせる。


「ごちそうさまでした。」

「…お下げ、します。」

「ありがとう。」


お礼を伝えたその瞬間、メイドはこの世に存在しない物を見たかのような視線を向けて、体を硬直させた。


(…やってしまったのかもしれない。)


なんて答えるのが正解だったのか、そう思わず口にしそうになったが静かに心の中で呟くだけにしておいた。

お久しぶりです。星河ハルです。

大変お待たせしてしまい、申し訳ありません。

書きたい内容を上手くまとめれず、長い時間空けてしまいました。


これからは定期的に更新していこうと思います。


誤字脱字等あると思います、申し訳ありません。


読んで頂きありがとうございました。

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