第2話
とても優しい温かさを感じる。
まるで太陽の光に包まれている様な、眠りから覚めるような感覚がしてゆっくりと目を開けた。
ぼやけた視界に映るのは、白く美しい天井。
(私は一体何をしていたっけ…)
思い出そうとして、ハッとした。
思い切り体を起こして当たりを見回すが、見覚えの無い景色が飛び込んでくる。頭の中の私の部屋と、今目の前に広がる昔の貴族が住んでいるであろう部屋と何も合致しない。
(…なっ、ど、どういう事!?私は、、、車に、、)
思い出すだけで体が痛くなる。
何が起こったのか理解出来ないし、私は死んだ筈だ。会社から出て車と衝突してそのまま……考えるだけでもゾッとする。
顔を押さえながら起き上がると、揺れる自分の髪が見えて固まった。
見たこともない白銀の美しい髪だったからだ。
(…え、、ど、どういうこと?)
混乱したまま立ち上がり、もう一度部屋を見回すが余りにも自室とかけ離れていて混乱してしまう。何がどうなった、と裸足のまま歩けば大きな鏡を見つけて思わず近づいた。
ふっと映り込んだ女性の姿に、脳が情報処理を拒否してくる。私も、自分自身の姿では無く、見た事もない美しい女性が見えている物だから状況が飲み込めない。
ゆっくり、でも確実に鏡に近づいて思うがまま手を動かして顔に触れてみる。温かい、人肌の温もりを感じるし、意のままに体は動かせる。鏡に触れてみて、私自身でありながら、私自身ではない事に嫌でも理解できてしまう。
「……誰、」
呟いてみた声は、ハッキリとした声で私の声では無かった。私の声は高くも無く低くもない、一般的な声で人の耳には聞こえにくい声だった筈。
しかし、今発した声は、私の声よりもよく通る感覚がするし、尚且つ滑舌も良い。口が動かしやすいし、少しだけ、ほんの少しだけ低い気がする。
(私は、誰?)
曖昧な質問に答えてくれる人は、誰も居ない。
読んで頂きありがとうございました。
お久しぶりです、星河ハルです。
投稿期間が大幅に空いてしまった事と共に、誤字脱字等あると思います、申し訳ありません。
これからもよろしくお願いします。