第0話
「この鍵の中から自分の足枷に合う物を探しなさい。見つけた者は自分で足枷を外しなさい。」
手の中でジャラジャラと音を立てていた鍵を地面に投げる。折れる可能性は無い、昨日夜通し硬化魔法を掛けたからだ。もし魔法が無かったら今頃全ての鍵は曲がって私に対し跪く奴隷達を開放する事は出来なかっただろう。
地面に金属のぶつかるキインという音が響き渡るが、誰一人として動こうとしない。周りの騎士達は何もしない筈だが、流石に今までの待遇のせいで疑っていても可笑しくは無い。
「さっさとしなさい、じゃないとこの剣で首を斬り落とすわよ。」
私が持つ剣をチラつかせれば、一人、男が鍵に手を伸ばした瞬間次々と我先にと鍵を探していく。ふう、と息を吐いてから全てが終わるまで見守り続けるため、足を組んだ。
「あ、合ったぞ!!!」
「わっ、私もッ!!」
「これじゃないか!?!」
「終わった鍵を貸して頂戴ッ!!!!」
「待ちなさい!!皆んなで回しましょう!!」
やっと良い案が出たと思ったが苦しい思いをしてきた人間に響く筈も無く、終わった鍵を後ろに投げ捨てては新しい鍵を探している。
(もう少し落ち着いて探せばいいものを…)
暫く見つめて居れば、どうやら全員の足枷が外れたらしく此方の様子を伺う様に見上げてくる。その視線を向けられるのが余りにも苦しく、悲しかったのでパチンと手を叩く。
ゾロゾロと出てくるのは私のメイドや執事達。私の事を軽蔑し、世話をするのも嫌がっているであろう人々だ。
「今から渡す金貨を持ってこの屋敷から出て行きなさい。」
子供連れには金貨を30枚分、そうでない者には15枚分を与えることにしている。ちなみにこの世界では金貨一枚で小屋が一つ買えるだろう。しかし、食費やら税金やらですぐに金を取られてしまうだろうし、金貨はお釣りを貰えなくなる可能性もあるので一般的に流通している銅貨にした。
(前の私の遊びで連れて来られ、ただひたすら地下牢に閉じ込められていた人々…貴方達はこんな所に居て良い人間じゃ無いわ)
「受け取っていない者は?」
困惑した顔をする奴隷達…いえ、一般人達は私を見上げては自分たちの手の中にある銅貨を見つめている。手を挙げる者は居ないので、扉の前で立っている執事に目線を向ければ扉が開かれる。
「今すぐ出て行きなさい。そして二度とこの屋敷には戻って来ないで頂戴。」
立ち上がり、コツコツと未だ慣れないハイヒールの音を響かせながら自室へと向かう。後ろから私の名前を叫ぶ人々の声が聞こえたけれど、今更話す事なんて何も無い、だから無視をして、静かに扉を閉めた。
読んで頂きありがとうございました。
改めまして、星河ハルです。
初めての作品投稿ですので、誤字脱字等があると思いますがご了承ください、申し訳ありません。
そして話の流れが変だなという所があると思います、これから書いていく上で学んでいこうと思います。
宜しくお願いします。
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一部訂正しました。
何故か15枚の銅貨と書いていて…いや何故そこで硬貨の差を作る?と思いどちらも金貨にしました。