7 ナイツ
はあい! わたしはトナー!
フルネームはトナー・リーだよ!
ん?
貴族家の者なら
家名の前に「フォン」とか付かないか? って?
いやあ……!
此処では聞かないなあ……?
というか。
庶民には名字が無いし!
名字が有ればもう庶民じゃない! って事だから!
と! 突然だけど!
残念なお知らせが有ります!
現代日本人が? 異世界行っちゃって?
異世界の人が美しいとか恋愛しちゃったとか。
創作物では有るかなあ? って思うんだけど。
えっとね。
現実的には先ず萎えるんじゃないかな……?
だって……!
文明度が低いって事は。
美容の技術だって低いって事だよ……?
鏡すら不自由するんだよ?
ふふふふふ……! 恐ろしいね……?
現代日本では男だってムダ毛其のままだと
「不潔!」って言われる様に成ってきたんじゃない?
事実、毛髪はバイ菌の巣! なんだけど。
寧ろワキガ、詰まりワキ毛に付く菌のニオイはね?
オトナだと感じるニオイだとか言うんだけど!
ワキ毛は最後に生える体毛!
詰まり体の成長が完成! って事だから!
……ヤダぁあぁあぁあぁあ……!!
現代日本人が異世界で耐えられるかナー?
ふふふ?
長年暮らしていれば慣れるだろうけど。
其れは救いかねえ? 諦めかねえ?
わたしはもう四十年は暮らしているだろうけどね!
はっきりしない?
だって。
個人で四十年って。
数えるの辛いと思わないっ?!
一年が何日か数えるのも辛いよね?!
うん……!
大体、なんだよー……!
周り中いい加減だし!
さてわたし達は野盗集団を連行している訳だけど!
とうとう町の人が見えてきたよ!
いや畑弄りしている人以外がね?
畑弄りは本当に邪魔しちゃいけないんだよ!
食料と言えば畑! だからね!
豊作をお祈りします!
入り口前で見張り……って程でもない人達が……
大慌てだなあ……!
野盗集団、拘束はしてあるけど二十人位居るから!
悪質なのだと
拘束されているフリ~とかいうのも居そうだし。
其れでチャンス! とか思ったら
拘束されているフリを止めて獲物に襲い掛かる訳ね!!
当然其の場合は
捕まえた様な顔しているヤツも一味だからね?
恐いよね!
況してや捕まえた側であるわたし達は七人だものね!
疑わしいだろうね!
……七人ミサキって、妖怪が居たねー……
かなり強力らしい……どうでも良いけどっ!
其う!
わたしの仲間達は
三倍強の相手に勝っちゃったんだよ!
強いでしょう!
疑わしさの原因でもあるけどね! ははっ!
戦力差三倍だと
普通は勝てないって言われているんだよ!
ランチェスターの法則って有名だよね!
細かく言えば一次法則かな?
ランチェスターの法則は
経営学にも応用出来るとか何とか?
七人なのに三倍強なのか? って?
わたしが数に入っている訳無いじゃない!
仲間の内ショウニンは弱い方だけど!
わたしはもっと弱いぞ! ……自慢にも成らないよっ!
でも事実…… しくしく!
で! そろそろ連行完了なんだよ!
町の人達に声を掛けなきゃあね!
「町の警備の人を呼んで下さい!
成るべく大勢!」
「わっ……分かった!」
「一寸待ってえ?!」
見張りっぽい人達全員が駆けて行こうとしているよっ!
幾ら素人さんだってチャチ過ぎるでしょおっ?!
「「「「「え?」」」」」
「え? じゃなくて!!
呼びに行くのは一人で良いでしょう?!
後はみんなで見張っていてよっ!」
此方にとっても切実なんだよっ!
人数少ないんだから!
「良~い?
味方を呼ぶにはね?
確実性が無いなら何人か連絡係が必要に成るけど!
町の中でしょう? 一人で良いじゃない!
其れより!!
悪党が大勢居るのは恐いでしょう!
拘束はしているけど!
見張りの方が急務なんだよ!!
言いたくはないけど
わたし達だって見知らぬ人!! でしょう?
あっさり信じちゃあいけないよ?!」
あっさり信じる、というか
言いなりに成る人は犯罪者に狙われる人だ!
悲しいけれど其れが現実なんだ!
犯罪者……というか
怪しいヤツが何か要求しても
断固として拒否!! 忘れちゃいけないよっ!!
心を強く持つって其ういう事だよっ!!
「「「「ええっ?!」」」」
「ええ? じゃないでしょう!」
何でだか。
わたしは見張りっぽい人達に
講釈垂れていた!
「あはははは!
お嬢、此処でも差配しておるな!」
笑っていないでよケンさん! もう!
「ワシの様な厳ついモンが言っても
角が立つからのう! 適材適所っちゅうだろう!」
「う~……!」
確かに! ……とか言わないからねっ!
「お嬢分かっておらんだろうがな?
立派に戦力に数えられておるのだぞ?」
「まっさかぁ……!」
何なの? ケンさん煽てようとしているの?
わたしは乗らないぞお?!
「所で。 町の名前は何ていうのかな?」
わたしは町の子達に訊いてみた!
……おっと! 子達って……!
わたしがオバハンみたいじゃない!
いや四十ですけどね……?
「チカバの町っていうんだ!」
ひっど!!
人名ばかりでなく町名もひっどい!
いや近場なのは良い事だけどねっ?
其してとうとう野盗達は町に引き渡された!
……いや。
投獄迄わたし達も動員されたんだけど?
部外者を動員するってどうなの……?
とまあ! 其れでも!
「終ぅわったよぉお~!
みんなお疲れ様ぁ~!」
と、みんなを抱擁してゆく!
順番も考えないと
ヤキモチ焼く子も居て大変なんだよー!
先ずは年下から!
其して一番目立てないアローからだね! ふふふ!
トウゾックはよく頭を撫でているから
一番我慢出来るよね?
ノウミンは……
防具でガチガチだから感触は其んなにないだろうけど!
「お嬢様?
男性に気軽に触れるのは……」
ナイツさんが苦言を呈してくるけど!
「ふっふっふー! 分かっているよー!」
男は興奮しちゃうっていうんでしょー?
わたしだって前世男だからねー!
加減出来るよー!
……いや前世だって
異性には縁が無い独身だったけどね?
漫画なんかでも
元男なTSキャラが無防備ーとか見て
バカだなー! って思ったよ!
いやキャラクタだけじゃなく作者も読者もね!
わたしは大丈夫! あっはっは!
何ならオバサンだし?
其れはね?
犯人が小学生だったー! っていう
性犯罪!! が有ったのは知っているけど!
小学生!! ……お分かりですね? 日本の話だよっ!!
行為に及んだ後
女性から巻き上げる金がセコいと思ったら!!
犯人小学生だったー!! ……ていう、ね……?
小学生なだけにソイツの個人情報が割れる様な事は
ニュースじゃあ言わなかっただろうけど……
男は小学生からエロを知ってしまうと碌な事が無い!! と。
其の弩バカ!! は証明してしまったのだけどねー……!
けど男は一般に! 幼い内から危険物扱いだから
肌の触れ合いに飢えているってのも事実でねー……!
痴漢は飢えが溢れてしまった人です!
女からしたら
不気味! 気持ち悪い! 恐い!! 死ね!! だけどね?
ウチの子達は成るべく飢えが溢れない様に!
此んなオバハンだけど触れ合っておかなきゃあ! と。
一寸使命感! ふふっ!
わたしは元々
思わず抱き付くとか有り得ない!
と思っていた! って言っているでしょう?
さて。
悪党集団は捕まえたら死ぬ迄拷問! って。
受け入れているって訳でもないけど
其う成るんだろうなあ位は何で思うかって。
昔の文学なんかでも
あっさりとやっているからねえ……
然もありなん! ってね?
創作物だけど作者さんは
其れが当たり前! として書いているからね!
先ず思い浮かんだのは
『ハックルベリ・フィンの冒険』なんだけど。
本を読む人ならピンとくるんじゃないかな?
トム・ソーヤーの友達のハックだよ!
で……ネタバレとか気にする人居るのかな?
割と出番有る人が処刑されちゃうんだけど!
村で! だよ?
勿論裁判所なんか無いでだよ?
其れから『三銃士』なんかでも!
形式に則った様なフリ~はするけど
悪役の首を刎ねちゃうね! 道端で!
詰まり!
文明度が低い所はやっぱり野蛮だなー? って事!
まあ。
現代日本なら文明度高いか? って。
首を傾げるけどね!
裁判なんか!
被害者遺族を苛つかせる為に
やっているんじゃないの? って感じだし!!
ああうん!
其んな訳無い! って反発する人居るだろうけどね!
現状其う成っている!! って見えていないよね!!
黙秘権なんかも!!
警察が容疑者に暴行して
自白を強要するのを防ぐ為であって!
明らかな犯人が
図に乗って黙る為のものじゃあないでしょう?!
現状其う成っているんだけどっ!!
うん!!
現代の裁判もおかしいんだよねっ!!
丸で直ぐ犯罪者を放って
再犯して下さいとでもいうみたい!!
でなければ取り敢えず犯人をでっち上げて
解決した~みたいな気になりたいだけ?
事件の真相を明らかにするのが裁判!! でしょう?!
裁判所って!
結局信用出来る施設じゃあないんだよねっ!!
屁理屈上手い弁護士が勝つ! って感じ?
明らかにロクデナシな!! 血縁関係だけの!!
親とは呼べないヤツでも親権を主張しちゃえば
其れが通っちゃう!! って話も有るし!!
恥ずかしながらわたしの前世の件なんだけど!!
もう裁判官頭おかしいんじゃないの?!
としか思えないよっ!!
……此処で熱く成ったって仕様がないんだけど!
兎角!
野盗達は野盗と言ってももっと極悪な罪を犯している!
もう明らかに死刑!! 其れも苦しめて!! という結末!!
だね!
さて。
野盗達は思いの外有名な賞金首だった様で。
賞金がかなり出た!
ああ……
西部劇なんかでも
「賞金稼ぎ」って職業有りそうだよねー……!
いや返り討ちだから連行したけど
積極的にはやりたくないなあ……!
「今日は良い宿に泊まろうね!」
おお~!!
みんな! ……実はナイツさんなんかも
子どもの様に無邪気に喜ぶ顔をした!
ふふふ……! わたしは分かったぞ?
女は感覚が鋭くて
細かい所にも気付く! とかいうけど!
……其んな感じするね!
ほらわたしは前世男だから? 比べられるというか!
此うして高価めの宿に泊まった訳だけど。
此処って王都に近い町だったんだ!
うん! 其う!!
わたしの旅は。
現場を色々見た上で
王様に意見する!! って目的!
勿論、言うだけ言ったら満足ー!
じゃないんだけど!!
世の中を良く変えなきゃいけないんだけどっ!
何れにしろ!
山場なのは間違いない!!
其して……!
偉い人に意見する! というのは!
命懸けを覚悟しなければ成らない!! という事!!
子爵家令嬢なんて……!
本来王様に意見出来る立場なんかじゃあないよお……!
……恐い!!
……けどっ!!
……
言わなければ成らない……!!
其れは。
夕食後……!
後は寝るだけ! という時の事!
ああ……!
「最後の晩餐」とか!
良く言ったものだねえ……!
七人となると。
宿は大概四人部屋を二つ取る、
という事に成る!
仲間達は誰がわたしと同部屋に成るかで揉める!
ふふふ!
みんな子どもだなあ……!
っていうのは良いんだけど!
みんな一部屋に集まって!
重大発表だよっ!
「……みんな。 心して聞いてね?」
……というか……!
わたしが言い出すのが恐いんだよっ……!!
「……此処は……!
王都に近い町です……!
……
だから……っっ!!」
ああ……
わたし……
ほんっとに……
……みんなに頼りっ切りだったんだなあ……
……
だから!
此れから言う事が恐いっ!!
恐くて仕様がないっっ……!!
「あのっ……
王様に意見するのはっっ……!!
命懸けに成りますっ……!!
……だからっっ……!!
……だから……!!
此処で離脱したい人は
遠慮無く言って……!!」
……
…… ああ……
……
言ってしまった……!
もう引き返せないね……!
もうみんながどうしようと
わたしは受け入れなきゃあね……!
わたし自身が普段から言っているのだ!
命が危うい事は仕事とは言わない! と!
「カルネアデスの板」って知っているかな?
要は。
命が懸かる時は
自分が助かる為に他者を蹴落としても
罪には問えない……って事なんだけど。
其ういう事。
みんなの返答は……!