第二長 是非もないな
うう~ん、つまりこれはあれか?
私がプレステ5の上にぶながっちを置いてたから、二つの世界が混ざっちゃったってこと?
……それにしたって攻略対象が二人も信長になっちゃうってのはどうなのよ?
いや、信長は大好きだから、それはそれでアリよりのアリだけどさッ!
「じゃあ信長の席はノウコの隣な」
――!!
これまたきらメモの展開と同じく、先生は転校生の信長を私の右隣の席にあてがった。
う、うわぁ。
「オウ、今日からよろしくな女。何なら俺様の側室にしてやらんこともないぞ」
「は、はぁ」
私の右隣にドッカと腰を下ろした転校生信長は、早速俺様ムーブを醸している。
「……オイ転校生、いきなり失礼だろう、女の子にそんなことを言うのは」
幼馴染信長!?
「ハァ? 何だ貴様は? 焼き討たれたいのか? 『鳴かぬなら焼失させるぞホトトギス』って言葉知ってるか?」
転校生信長大分物騒な性格してんなッ!?
う、ううん、いちいち『転校生信長』とか『幼馴染信長』とかって呼ぶのはメンドいな。
よし、便宜上『転校生信長』は俺様キャラだから『俺長』、『幼馴染信長』は『幼長』と心の中では呼ぼう。
「俺の名前は織田信長だ」
「ハッ、それは是非もないな。貴様も信長と言うのか」
何その「へえ、あんたもナナって言うんだ」みたいな遣り取り!?
左も信長!!
右も信長!!
何という信長サンドイッチ!!
「なあ女、貴様は俺様の側室になりたいよな?」
「え!? ええと……」
「そんなやつの戯言は聞くなよノウコ! ノウコのことは俺が守るから」
「あ、うん、ありがと」
トゥンク!
流石幼長!
この「お前のことを子供の頃から守ってきたのは俺だ」感、堪らん。
「ハッ、ノウコと言うのか貴様は。何故か魂に響く名だ」
それは信長の正室が濃姫って名前だったからじゃないですかね!?
……こんな感じでホームルームから授業中に至るまで、幼長と俺長はずっと私を巡って言い争いをしていたのだった。
私のために内乱はやめてッ!(迫真)
「つ、疲れた……」
そしてやっと訪れた昼休み。
せめて昼休みの間だけでもこの二人の内乱からは逃れたいなと渇望していた私だが――。
「ハローエブリワン! 今日も敦盛を舞うのに絶好の敦盛日和だネ、マイエンジェル!」
「げっ」
フィギュアスケート選手の衣装を着たイケメンが、クルクル回転しながら教室に入ってきた。
この展開もきらメモと一緒か……。
きらメモだとこの人は、二年生のファビアン北澤っていうハーフの先輩キャラなんだけど。
「……信長先輩、昼休みのたびうちのクラスに来てノウコにちょっかいを出すのはやめてもらえませんか」
信長先輩!?
……てことは、この人も。
「オーウ、そんな冷たいことを言わないでくだサーイよ。同じ信長じゃないデースか」
「……まあ、そうですけど」
「ホホウ? 貴様も信長なのか。是非もないな」
いや信長が大渋滞してんなッ!?!?
さてはこれはあれだな!?
攻略対象が全員信長になっちゃってるパターンのやつだな!?!?
そんな乙女ゲーある!? いや、ない!!(反語)
『ドキッ☆信長だらけの乙女ゲーム』ってか!?
なーんつって!!
なーんつってッ!!!(ヤケクソ)
……まあ、信長の子孫もフィギュアスケート選手になってるし、信長が敦盛を踊るのが大好きなのは史実通りだから、これはこれでアリなのかもしんないけど。
「お館様! またこんなところにいらっしゃったのですか!」
――!?
その時だった。
女子用のフィギュアスケート選手の衣装を着た美少年が教室に入ってきた。
こ、この子は……!
攻略対象じゃないけど、一部のプレイヤーからは絶大な人気を誇っている、桂薫くんッ!
ファビアン北澤先輩のことを、同じフィギュアスケート部の後輩として敬愛している、ファビアン大好きっ子!
……でも、例によって顔が若干ゲームと違うような?
「何でいつもこんな女に構うんですか! さあ部活の昼練に行きますよ!」
「オーウ、まあそう焦らなくともよいではないデスか、お蘭」
お蘭!?!?
も、もしかして、この子は織田信長の小姓として有名なあの森蘭丸!?!?
「そんなに怒ったら、可愛いフェイスが台無しデスよ?」
「はっ、はわわわ! お館様……」
フィギュ長先輩(※フィギュアスケート信長先輩の略)は、蘭丸きゅんに顎クイをした……!
た……尊い……!!
若干腐も入っている私には、この光景は尊過ぎる……!!
感謝……!!
圧倒的、感謝……!!(カ○ジ)
――その時だった。
『――ピンポンパンポーン。一年二組のノウコさん、至急生徒会役員室までお越しください。繰り返します。至急生徒会役員室までお越しください。――ピンポンパンポーン。』
「「「――!!!」」」
こ、この呼び出しは!!