虚偽物語から始まる恋愛喜劇
なろうラジオ大賞2第十一弾。審査される方への嫌がらせとかではないんです。信じてください。
今回のテーマは「偽物」。タイトルは『虚偽物語から始まる恋愛喜劇』と読んでもらえたら有り難いです。
それでは甘々をお楽しみください。
「おい、透瑠」
「何よ礼」
帰り道、いつも通りに歩く透瑠に、俺は不満を口にする。
「何で俺の告白受けたんだよ。罰ゲームだって分かってただろ」
「分かってたからよ」
「何?」
夕陽に照らされた透瑠の顔は、明らかに怒っていた。
「あれって、フラれるの見て笑うやつでしょ? あたしそういうの嫌いでさ。受けて驚かしてやろうと思ったの」
「そういう事か」
そうだよな。幼小中と一緒のきょうだいみたいな透瑠が、今更俺と付き合うはずもないか。
「でもお前、良いのか? 好きな奴とか……」
「大丈夫。礼は?」
「い、いねぇよ」
「それはいる反応でしょ」
「うるせぇなぁ」
けらけら笑った透瑠は、一息ついて微笑んだ。
「しばらく付き合ったフリして、適当な所で別れた事にすれば良いでしょ」
「あぁ、悪いな」
「なら土曜日買い物付き合ってよ」
「えっ」
「迷惑料だと思ってさ」
「……分かったよ」
「よろしい」
俺の降伏宣言に、透瑠は満足そうに頷いた。
「じゃあまた明日」
「じゃあな」
透瑠が家に入るのを見送る。幼馴染の有り難さを噛み締めて、俺は隣にある我が家へと帰った。
「今日も楽しかったぁ。礼はどうだった?」
「あぁ、楽しかったよ」
こうして透瑠と休みに出かけるのも何回目だろう。改めて透瑠と居るのが心地良い事を実感する。だからこそ罰ゲーム潰しの偽物という事に胸が苦しくなる。
「……なぁ透瑠」
「何? 次の予定?」
「いや、そろそろかなって」
「……そう、ね」
透瑠の顔から表情が消える。
「礼も本命のコに行きたいよね。ま、練習には丁度良かったかな?」
「そうじゃなくて、お前をこんなのに付き合わせてるのが悪くてさ……」
「ふーん」
「だから、こう、一発ビンタかなんかもらってさ。俺がフラれたって話に」
「じゃあ目、つぶって」
え、冗談だったんだけど、本気でビンタ?
「ちょっと膝曲げて」
「あ、あぁ」
これガチなやつだろ! 恐っ!
「行くよ」
痛みに耐えるべく身を強張らせているが、頬への衝撃はなかなか来ない。あれ? どうなって……。
「!」
薄目を開けた俺の前には透瑠の顔があった。そして……。
「罰ゲーム潰しじゃなかったのかよ」
「ん〜、半々」
唇を離した透瑠の顔は、夕焼けの中でも真っ赤なのが分かる。俺もそうだろう。
「半々って何だよ」
「罰ゲームに腹立ったのは本当。でも礼じゃなかったら断ってた」
「お前、それって……」
「……言わせないでよ、ばか」
本物の彼女になった幼馴染は、顔を隠すように俺の胸に顔を埋めた。
読了ありがとうございました。
こんな幼馴染、どんな徳を積んだら隣に生まれてくれるんだろう。善行に励んで来世に期待しようかな。
ちなみにキャラの名前は、
礼→lie=嘘
透瑠→ture=本当
って感じで付けました。
キャラの名前を付ける時には意味を持たせたいと言う拘りがあるのですが、それのせいで筆が重くなる事もしばしば。これまでに書いた短編があんまり固有の名前がないのもそのせいです。
それではまた次回作でお会いしましょう。