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脳出血後のリハビリ習作・400字詰め原稿用紙1枚で何が書けるか(45)

作者: 樹カナタ

脳出血後の失語症状リハビリとして、400字詰め原稿用紙(+α)に手書きしていたものです。

恥ずかしいミスがあってもそのままテキスト化しているので、誤字脱字やオチ不明等はご容赦を。

なお、リハビリは現在も継続中です。 


一月十五日

※三題:成人式、成就、ふわふわ


 ——一月十五日の深夜に、山裾の廃学校に行ってはいけない。帰ってこない人々がいるらしい。

 こんなオカルトなど信じていなかった友人Aが、廃校に行ったと聞かされた。

『Aの奴が、廃校の体育館跡から帰ってこねえ! 誰かが騒いでる! 俺らは逃げるからな!』

 悪友Bは大声でがなりまくると、電話を切ってしまった。

 それにしても、友人Aが肝試しにあの廃校に行く理由が分からない。オレを怖がらせるためのウソかもしれないが、万が一もある。Aのおじさんに連絡すると、車を出してくれた。

「ここは、若い頃に行っていた小学校なんだ」

 オレは山裾の廃校としか知らなかったのに、車はすぐに廃校についていた。

「ここは、無念がのこった場所なんだよ」

 オレは何も言えなかった。飲み潰れたAのそばに、ふわふわと光る人魂がいた。振り袖やスーツを着た幽霊たちと楽しそうに笑っていた。

 すると、ぼやけた姿の青年たちが、Aの父親に向かって手を挙げた。

『ああ。おそいぞA公〜、やっと成人式についたのか』

 紋付き袴を着た成年の霊が、Aの父親を見つめてニヤリと笑う。

「さあ、お前が毎年供えてくれたビールで乾杯しようぜ! 約束だったもんな!」

 幽霊が叔父さんに向かって缶ビールを投げる。やっと思いが成就したのだろう。廃校の全てが輝いていた。

「いや、私は呑まない。車で来たからな」

 だが、おじさんは、飛んでくる缶ビールを蹴り飛ばし落とした。

「そんなっ! ビールがああっ!」

 幽霊たちは、転がっていく缶ビールを追いかけ、崖へと落ちていった。

「今年の成人式は終わったな。これで一年ぐらい、行方不明者は増えないだろう」

 おじさんが、崖から落ちた車の残骸を眺める。色と大きさをみる限り、悪友Bの車に見えた。

「おいつらは、飲酒運転を許さない。念人式の日に、そんなバスに乗り合わせたんだ」

 おじさんは、静かに目を伏せたあと、スマホを取り出した。

 おじさんがビールを呑んだらどうなっていたのか、聞く事は出来なかった。

 

(終わり)

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