その21
のんびり不定期連載です。
「はぁ~良いですねぇ~」
昼食後、ベッドで夕食までゴロゴロし、夕食後にはお風呂を堪能。そしてまたベッドに転がった所だった。
「なんというか、この堕落した感じの生活、やはりこんな日は必要ですよね」
そうは思いつつも、収納にしまってある金貨の残りが30枚を切ってしまっています。この世界に来てからまだ2週間も経っていませんが、すでに金貨20枚ほど使ってしまっていたようですね。
「いつ帰れるか予想がつかないので、少しお金を稼いでおいた方が良いかもしれませんね。どうやって稼ぎましょうか…」
そういえば、この世界には冒険者ギルドとかあるのでしょうかね、明日町に出て調べてみましょうか。
やはり手っ取り早くお金を用立てるには、討伐系が一番ですからね。
「あっ、そういえば… 近くにある森ってハクが魔物を追い立てたからいなくなってるかもしれませんね…」
さすがにドラゴンが騒いだ森に、1日や2日で魔物が戻ってくるとはとても思えません。どうしましょう…
ゴロゴロしながら考えていたら、なんだかとても眠たくなってきました。そういえば今日はストロー様を相手に魔法を使いましたものね、休息は必要なのです。
転がっていたベッドに潜り込み、そっと目を閉じたのであった。 ちょうどその頃、ボジョレー殿下が同じ宿に到着しているなんて気づかないまま…
翌朝、いつもの通り夜明けとともに目を覚まし、小鳥のさえずりを聞きながら朝の支度を始める。
「昨日は早めに寝たせいか、ずいぶんとスッキリした感じですね。朝食をいただいたらギルドに行ってみましょう」
準備を済ませて食堂に顔を出すと、なにやら昨日の朝よりも忙しそうにしています。
「ずいぶんと慌しい雰囲気ですね、何かありましたか?」
「ああ、おはようございます。それが… 昨日からロゼ王国の王族の方が泊まられてまして、食事にはうるさい方だとの事で…」
「ロゼ王国の王族ですか? なんだか嫌な予感がしますね」
「お知合いですか?」
「いいえ!全然そんな事はありませんよ!」
なんという事でしょう。やっと… 今度こそゆっくりのんびりできると思っていたのに、これは脱走するに限りますね。 もう絶対面倒な事になるって決まっています!
朝食をいただくと、即座に部屋に戻って引き払う準備をします。 と言っても、荷物のほとんどを収納に入れているので、軽くお掃除をしてから出ていきます。立つ鳥跡を濁さず… 昔の日本人はカッコいい事をおっしゃっていました。
「さて、王族であれば朝はそれほど強くはないでしょうが、急いでこの町を出ましょう。ミルフィ様には伝言を残しておけばいいでしょう」
宿の方には、本日で引き払う旨を伝えて、辺境伯様と代官様、ミルフィ様宛てに手紙を代筆してもらい、それを渡してもらうように頼んで宿を後にした。 なにせこの世界の文字は知りませんからね、言葉は通じていますが。
「さてさて、急な事なのでどこに行こうか何も考えていませんね。しかし、どうせ行くのであれば食べ物のおいしい土地に行きたいものです」
この町は辺境伯領とはいえ、それはあくまでもショコラ王国にとっての辺境。少し移動すればガトー王国の土地になります。
とはいえ、北に向かうとガトー王国の隣はロゼ王国です… これでは逃げた意味はありませんので西回りで北上してみましょうかね。 東は火山帯だと言っていたので言っても温泉くらいしかないのでしょう。
とりあえず、町を出た事が知られて追ってこられても面倒なので、飛行の魔法を使って速攻で町から離れましょうそうしましょう。
門から出ると、すぐさま防壁の陰で姿を隠して飛び立ちます。
「城塞都市ビター… さらばっ!」
─ガナシュ代官邸─
「辺境伯様!ロシェ様! 使徒殿から書簡が届いております」
「なんだと? ここに来れば話が早いというのにわざわざ書簡を?」
「はい、宿の者が持ってまいりました」
「それを見せろ」
レクタングル辺境伯が書簡を受け取り、手紙を読んでいく… 読み進めていくにつれ、額に手を当ててあちゃーのポーズを取った。
「昨晩、ロゼ王国の王族がこの町に到着したらしいが、何か連絡は着ているか?」
手紙を受け取った執事に尋ねる。
「いいえ、そのような話は聞いておりません。昨晩の事であれば夜の内に連絡が来ているはずですが…」
「という事は、忍んで町に入ってきたか。それであれば、恐らく今日中にここに来るだろうが、間違いなく狙いは使徒殿だろうな」
「そういえば、王都に使者として現れたのは第3王子殿下だったという事でしたが、帰り道…にしては遠回りになりますよね」
「あわよくば連れて帰ろうと企んでいたか… あの使徒殿を御せるとでも思っているとは愚かだな」
「そうですね… タルト伯爵家嫡男に対しても辛辣でしたから、対応を間違えれば反撃されますよね」
レクタングル辺境伯はまたしても額に手をやって頭を振る。
「恐らくとっくにこの町を離れてしまったのだろうな、王都へ連れて行きたかったのだが…」
「あの方でしたら、それも厳しかったのではないでしょうか」
「うむ、なんとか王都まで引っ張って行けるような理由を考えていたのだが、全く思いつかなくてな。後れを取ってしまったようだ」
レクタングル辺境伯と執事が話し合っていると、朝食を取るためにミルフィが現れた。
「ああミルフィ、使徒殿から手紙が来ているぞ」
書簡の中に入っていたミルフィ宛ての手紙を渡してやる。
「はい? アリシア様がわざわざお手紙をですか?」
「どうやら朝の内に町を出たみたいだな」
「え?町を出るなんて一体どうして…」
「昨晩、ロゼ王国の王族がこの町に着いたらしくてな、面倒事を避けるため…と、こっちの手紙には書いてあった」
それを聞いたミルフィは、すぐに手紙を開いて読んでみる。
その内容は、訓練は毎日やるべし、地味な訓練で飽きてしまうかもしれないが、それを乗り越えなければ上達はしない。元の世界に帰る前に顔を出す。
このような事が簡潔に書かれていた。
「アリシア様…」
ひどく落ち込んでしまったミルフィを気にしながらも、恐らくこれから来るであろうロゼ王国の王族に応対する用意をしておかなければ…と、レクタングル辺境伯は顔を引き締めたのだった




