31話
のんびり不定期連載です
おはようございます。現在朝の4時半、夜明けまでまだ時間がありますが、私はすでに門の前で開門するのを待っています。当然一番前にいます。
昨日はゆっくりと休んだため気力は充分ですよ、今日の目標は魔牛さん1頭、コカトリスさんの卵は時間の許す限り探したいと思ってます。コカトリス本体は1頭でも構いませんよね、コカトリスは文献でしか知りませんが、とても大きな鳥型の魔物らしいので、その卵は一体どれくらいのサイズなんでしょうかね、楽しみです。
気が付くと、私の後ろにはそこそこ人が並び始めています。ああっ、身体強化を使えばこの防壁くらいなら乗り越える事はできましたね。いや、今からでも遅くないかも、まだ暗くて見通しが悪いですし。
そう思いついたら即実行しましょう。列から離れ、人目が無い事を確認して身体強化を全開!そしてジャーンプ!
やればできるんです、では森に向かって急ぎましょう。
防壁を飛び越え走る事2時間半、お目当ての森が見えてきました。今日の獲物は魔牛とコカトリス、どちらも見た事はありませんが、牛に鳥ならきっとすぐに分かるでしょう。
森に入る前に一時停止して一息入れましょう、果物でエネルギー補充です。それにしても、食料でこんなにもやる気が出てしまうとは、やはり公爵家での食事に慣れてしまっているから、知らないうちに道中での食事に不満があったのでしょうか。果物は好きなんですがね
しかし、食べる事は生きる事。美味しい食事の前ではどのような人でも黙って食べてしまいます、記憶に残っているアニメでも言っていました、【食は宝だ!】と。
さて…ちょっとだけ真剣に働きますか、ドラゴンが魔力探知に反応したことを受け、少々出力を落として発振します。自分を中心に半径50メートルというところでしょうか、狩場であればこれで十分でしょう。それでは進軍開始です!
「とやー!」
気が抜けるような気合いと共に繰り出した斬撃は、コカトリスの首を切り裂き頭部を落とす事に成功していた。
「ふぅ、これでコカトリスが3羽目ですね、もう十分でしょう。次は巣の中を確認…」
森に入ってから6時間が経過していて、最初に魔牛を討伐し、その後奥地に入り込んでコカトリスを捜索。サーチ&デストロイ作戦でたった今3羽目を仕留めたところだった。
そして討伐した場所の近くには巣があり、すでに卵も1個手に入れているのだけど、今日は孤児院の皆に振舞うつもりなので、ぜひとももう1個欲しくて探していたのだ。
「ありますね!これで2個目ゲットです!」
コカトリスは見たところ、体高が2メートル以上もありとても大きいのですが、卵に至っては…楕円形の長い方で50センチ以上もあるので、1個で孤児院の子供たち全員に食べさせても余りそうな感じです。前世の知識では、卵の殻にお腹が痛くなる菌が付着していたはずだから、外殻からクリーンの魔法で洗浄しましょう。
次はどうやって殻を割るかですが、これはもう魔法を頼りにスパっといきましょう。
今の時間は午後2時を少し回ったくらい、今から走れば夕刻前に町に帰れますね。さぁ牛スキです!
森の中は木の間を縫うように走り、森から飛び出せばこちらのものです。加速装置! うそです。ただの全力疾走です。
来る時より少し早い2時間ちょっとで帰ってこれました、現在午後4時40分です。早速商業ギルドに行って巨大な卵を調理できるような巨大な鍋を探さなくてはいけません、最悪は桶のような物にクリーンをかけ、それに開けて混ぜ合わせてから小分けして調理、こうなります。
桶で卵をかき混ぜるというのは、見た目は問題しかありませんが、自分のクリーンの魔法は信用できるので大丈夫です。
「商業ギルドへようこそ、どのようなご用件ですか?」
「コカトリスの卵を調理できるくらいの大きさのお鍋を探しています、どこで売っているか分かりますか?」
「コカトリスの卵…ですか。その卵はあるんですか?」
「卵の有無ではなくお鍋の話をしてるんですけど」
「あ、そうですね。コカトリスの卵は希少品でなかなかの高額商品だったので、持っているなら売ってほしいと思いまして」
「売る気があれば鍋を探したりしないと思いますが、無いんですか?」
「む、確かにそうですが…鍋ですけど、残念ながら現在在庫はありません」
「そうですか、それなら仕方ないですね。別な手段を考えますので失礼しますね」
「あ、ちょっと待ってください。卵は常温であれば4日もすれば腐ってしまいます、これを機に売ってもらえませんか?」
「売りません、それでは」
残念です、鍋は手に入りませんでしたね。卵欲しさに嘘をついてる感じがもりもりしていましたが、無駄な時間はかけたくありませんので却下しましょう。そうなれば桶ですね、これなら先日浴槽をお願いした業者さんのお店に行けばありそうです。
急ぎ足でお店に行きましょう、早くしないとお店が閉まってしまいます。卵のサイズから考えて、直径1メートルくらいで、深さが30センチもあれば収まりますよね。かき混ぜるのは魔法でできますから大丈夫。
なんとか閉店前に駆け込む事が出来、洗濯用と思われる大きな桶を買う事が出来ました。さぁ今度は急いで孤児院に戻って調理しないといけません、私も正直言ってお腹が空いています。今の私を邪魔する者がいれば、迷いなく飛び蹴りで黙らせるでしょう。
…と、フラグを立ててしまったのでしょうか、私の後をつけてきている者がいますね。商業ギルドでコカトリスの卵の話をしたからでしょうか、しかし甘いですね。
尾行されていることに気づいてからは、ささっと路地に入り込みそのまま屋根の上まで大ジャンプ。屋根伝いに尾行者を簡単に振り切る事が出来ました。
孤児院に着いてからは、職員さんに魔牛の解体をお願いし、自分は先ほどの桶を出して卵割りに取り組みます。
クリーンの魔法で清潔になっているので、桶の中に卵を置き、風魔法のウィンドカッター改で卵の殻を斬ります。普通にウィンドカッターを使うと桶まで切れてしまうので、改良版のウィンドカッターを使用しました。
スッパリ切れた殻から中身を出し、魔法でかき混ぜていきます。量が量なので牛スキ以外にも玉子焼きを作りましょう。私は卵焼きに砂糖を入れる派なので、甘くします。
子供達も帰ってきていて、厨房から漂ういい匂いに吸い寄せられ、今か今かと待ち構えていますね。もう少し待っていてください。




