2話
のんびり不定期連載です
「アリシア・フォン・フェブリー お前との婚約をここに破棄する事を宣言する!」
きましたわー。王様と王妃様が視察に出たのが2日前、本日は学園の主催するパーティ これ以上ない舞台でしたから、何かあるなら今日ここで!と感じておりました
「殿下、いかような理由でそのような事を申されるのですか? それと、両陛下も同様の判断を下されたのですか?」
「理由だと?よくもぬけぬけと! おいっ 説明してやれ」
王太子殿下に言われて出てきたのは、この国の宰相を務める侯爵閣下の家の三男、そして騎士団長を務める伯爵家の次男… 王太子殿下の取り巻きにもテンプレは存在するのですね
後は噂の男爵令嬢マリー様が、王太子殿下の後ろにいますね
「アリシア嬢がマリー嬢に対しドレスを破る、私物を隠すなどの行為を行なっていたとの証言が多数あります」
「先日起こったマリー嬢の転落事件もそうだ!目撃者がいる上に被害にあったマリー嬢もお前を見たと言っている。 どこまでも汚らわしい女だな!」
あらあらまぁまぁ、しかし 大体は思い通りの展開になってきてますね。では、私も返事をすると致しましょう
「婚約破棄の件 承りました。しかしながら殿下、ただいまお二方がおっしゃったような事、私には覚えがございませんわ」
「覚えがないだと?どこまでも惚ける気だな?こちらは多数の証言を確保してある、お前に逃げ道など存在しないのだ! 大体お前の可愛げのない所が昔から嫌いだったのだ。 もういっそ貴族籍を取り上げ、国外追放にしてやる!」
ああ、まずいですわ 顔が…顔がニヤけてしまいますわ! 面白いように予定通りに進んでいくのでむしろ怖くなってしまいます
「貴族籍の剥奪、国外追放 確かに承りました。 しかしながら殿下、冤罪はいけませんよ? 知っていると思いますが、私には常時 王妃殿下から監視がついております。 どこで何をしていたのか、その所作は王太子妃にふさわしい物であるかどうか。 王家が保証する確固たる記録が私にはあります、 多数の証言でしたか? 多数の目撃者でしたか? これから大変でございますね」
「なんだと?そんな事は聞いたことが無い。 それに一体何が大変だというのだ」
「今はもう違いますが、公爵家の令嬢に対し 更には王太子殿下の婚約者に対して虚偽の証言をした…となれば、どれほどの処罰をお受けするのか…大変な事になると思いますよ? ついでに言うのなら、確かな物証も無くこのような事を起こした殿下にも… 先ほど言いましたが、私には王家が保証する確固たる証拠がございますので。宰相様も騎士団長様にもなんらかの処罰が予想されますね」
「「なっ」」
なにやらこの茶番を見学している人の中で、顔色の悪い方が数名いますね この方達が証言者なのですかね
「良かったですね?第二王子殿下が優秀な方で。 それでは追放との事なので、これで失礼いたしますわ」
令嬢教育、王妃教育の賜物である完璧なカーテシーを決めてやった
「言い忘れてましたが、もちろん 今この場で起きたことも記録されておりますので、虚偽の報告は通用しないとだけ言っておきましょう。 それでは皆様、ごきげんよう」
やったやったやりましたわ! 気持ちが表情に出ないよう引き締めながらパーティ会場を退出する。 人目のない所でささっと転移魔法で帰りましょうか
しかしながら、両陛下の企みは 脆くも崩れ去りましたね。 第1王子が跡を継ぐ…なんて法を改正していればこのような事は起きなかったというのに、 あまり優秀ではない王太子殿下が国を治めた時に その参謀役として私が選ばれ王命で婚約したというのに、そして第2王子殿下が優秀である事実。 恐らく両陛下は王太子殿下をこの機に廃嫡とするでしょう、抜け目のない方ですからね
後は王家が考える事でしょう。 さぁ旅の支度を済ませて国外追放されちゃいましょう!
「お嬢様?今頃はパーティなのでは?」
公爵家の王都邸を取りまとめている老執事が驚いた顔で声をかけてきた
「色々ありまして、それでお父様は?」
「はっ、公務のため 今日は戻られないそうです」
「わかりました、それでは伝言をお願いします。 『王太子殿下の命により本日をもって婚約破棄、貴族籍剥奪、国外追放となりました。今日までお世話になりました』 これを伝えてください。 王妃様がお帰りになったら私の行動を確認し、宰相様と騎士団長様の令息、王太子殿下、男爵令嬢と証言者の方々に対し訴えを起こす事を薦めておきます。 これで公爵家の名に傷はつかないでしょう。 では支度をしてすぐに出ますので」
「お嬢様…」
「幸いにして私が消えたとあっても この家は大丈夫です、貴方にもたくさんお世話になりました 健康には十分気を付けてくださいませ」
それだけ言うと部屋に戻った。 さぁ急がなければ! 手持ちの金貨は300枚ほど、普通に持つとなると非常に重く、持ち運びが大変であるが 私には定番ともいえる空間収納が使えるので重量を気にすることはありません。 なにせ魔力とイメージで あらゆる現象を実現させるのがこの世界の魔法。 イメージなら任せてください!
あいにくと家柄のせいか、ドレスやワンピースくらいしか着るものが無く 平民を装う事の出来そうな服がありません。 とりあえずメイドの1人を捕まえ、公爵家の跡取りであるお兄様のお古を出してもらいましょう それでも高貴な印象は残りますが、まぁいいでしょう 3着ほど出してもらい 部屋に戻って着替えてみる。 うん、まぁそれなりに見えますね
衣装良し!お金良し!フード付きマント良し!水は魔法でいくらでも出せるので、食料を買い付けて、追放に付随する要件を済ませたら王都を出てしまいましょう!
男性だった前世の記憶が戻り、男性と婚約して結婚だなんて悍ましくて本当に嫌だったけれど 兼ねてより思い描いていた自由を手に入れる事が出来ました。 本日より私は自由な冒険者アリシアとして生きていきます! 名前は変えた方が良いですかね… ならば 今日から私はシアで!